最新記事

日本

政治と五輪を振り返る──学校や医療の現場から

A MULTIFACETED LEGACY

2021年9月22日(水)16時50分
石戸 諭(ノンフィクションライター)
パラリンピックの聖火集火式に参加する菅首相

パラリンピックの聖火集火式に参加する菅首相(東京・赤坂離宮迎賓館、8月20日) THOMAS PETER-REUTERS

<五輪を利用しようとした政治をよそに、冷静に、実務的にリスクと向き合った学校や医療の現場。教訓は「災害下の日常」にある>

いつからか東京オリンピックはあまりにも特別な政治イシューとなってしまった。開催に向けて突き動いてきた菅義偉政権も、批判的人々も、特別なナショナルイベントとしてのオリンピックという視点は共有していた。

税金を投入するイベントは数多くあるにもかかわらず、オリンピックは議論の量も熱量も「特別」だ。

新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)下において、オリンピックの成功とは何か。

それを日本選手団の金メダルの数で定義するのならば、東京オリンピックはかつてない大成功に終わっている、はずだった。

菅政権は「なんとしても、東京オリンピックを開催したい」という一点だけは貫き通した。いつの間にか開催の大義は東日本大震災と福島第一原子力発電所の事故からの「復興」から、パンデミックの克服になった。緊急事態宣言まで出した上で、無観客開催が望ましいという専門家の提言を踏まえる形での開催にこぎ着けた。

政権からすれば、全面的に有観客ならばなお望ましかっただろうが、政治的に妥協できる範囲内での開催という果実だけは手に入れた。

日本は史上最多となる27個の金メダルを獲得した。それでも、菅政権が狙っていたとされる政権支持率の浮上という意味での好影響は全くなかった。

たった1年前に60%以上の高支持率でスタートした政権は、各社世論調査でも支持率が20%台後半~30%前後まで下がり、8月に入っても長期的な下落傾向への歯止めはかからないまま、退陣にまで追い込まれた。

新型コロナウイルスの感染者数と支持率は連動している。8月に入ってから緊急事態宣言の対象エリアが最終的に21都道府県にまで広がってしまった以上、支持率低下は自明の理だ。

それは同時に、政権に批判的な人々が思い描いていた最悪のシナリオ、すなわち「国民がオリンピックに熱狂し、コロナを忘れ、菅政権が再浮上する」もまた杞憂に終わったことを意味する。

振り返れば、東京オリンピックは当初からトラブル続きだった。

国立競技場の設計、ロゴの盗用問題から始まり、大会組織委員長の森喜朗は女性蔑視発言で去った。開会式の演出チームの責任者は紆余曲折の末、電通出身の佐々木宏に交代したが、出演予定者の容姿を侮蔑する発言で辞めた。さらに開催直前で開会式の音楽を担当していた小山田圭吾は過去のいじめ発言が問題視されてこちらも辞任し、過去にホロコーストを揶揄したディレクターの小林賢太郎は解任された。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

FRB金利据え置き、中東情勢の不確実性指摘 年内利

ワールド

原油先物5%上昇、IRGCが複数のエネルギー施設攻

ワールド

中国、27年までの台湾侵攻計画せず 米情報機関が分

ワールド

イラン新指導者「犯罪者は代償支払う」、政権幹部ラリ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:イラン革命防衛隊
特集:イラン革命防衛隊
2026年3月24日号(3/17発売)

イスラム神権国家を裏からコントロールする謎の軍隊の歴史と知られざる実力

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が発生し既に死者も、感染源は「ナイトクラブ」
  • 2
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期スペイン女王は空軍で訓練中、問われる「軍を知る君主」
  • 3
    【衛星画像】イラン情勢緊迫、米強襲揚陸艦「トリポリ」が中東へ
  • 4
    第6回大会を終えて曲がり角に来たWBC
  • 5
    モジタバの最高指導者就任は国民への「最大の侮辱」.…
  • 6
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する…
  • 7
    ガソリン価格はどこまで上がるのか? 専門家が語る…
  • 8
    観客が撮影...ティモシー・シャラメが「アカデミー賞…
  • 9
    「ネタニヤフの指が6本」はなぜ死亡説につながったの…
  • 10
    韓国製ミサイル天弓-II、イラン戦争で96%迎撃の衝撃 …
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製をモデルにした米国製ドローンを投入
  • 3
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が発生し既に死者も、感染源は「ナイトクラブ」
  • 4
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 5
    職業別の収入に大変動......タクシー運転手・自動車…
  • 6
    ズボンを穿き忘れてる! 米セレブ、下を穿かず「目の…
  • 7
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 8
    世界の視線は中東から日本へ...企業主導で築くインド…
  • 9
    住宅建設予定地に眠っていた「大量の埋蔵金」...現在…
  • 10
    【衛星画像】イラン情勢緊迫、米強襲揚陸艦「トリポ…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 5
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 6
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 7
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 8
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 9
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
  • 10
    「水道水」が筋トレの成果を左右する...私たちの体に…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中