最新記事

台湾問題

アメリカの「台湾代表処」設置に中国は「衝突も辞さず」

Chinese State Media Warns of Military Action if Taiwan Office Changes Name

2021年9月13日(月)18時03分
ナタリー・コラロッシ
台湾総統府

2020年5月、台湾総統府の警備に当たる警官 Ann Wang-REUTERS

<アメリカで外交窓口の「台北経済文化代表処」の名称変更の動きが伝えられ、中国メディアは「実力行使」を求める社説>

台湾がアメリカに置いている外交窓口機関「台北経済文化代表処」を「台湾代表処」に名称変更することをアメリカ政府が認めれば、経済的にも軍事的にも「深刻な」結果を招く――中国の政府系報道機関がそう警告した。外交機関の正式名称に「台湾」が入ることは中国にとって容認できることではない。

名称変更については、英紙フィナンシャル・タイムズが10日、バイデン政権が認めるかどうか検討中だと報じた。中国共産党機関紙人民日報系のタブロイド紙の環球時報は12日、もし名称変更を認めるなら中国政府の怒りを招き、軍事的にも経済的にも厳しい対応が待っているだろうと指摘した。

「もしアメリカと台湾が名称変更を行うなら、中国の反国家分裂法に抵触する恐れがあり、中国はアメリカと台湾の傲慢と戦うために厳しい経済的・軍事的措置を取らざるを得なくなるだろう。そうなれば、中国は厳しい経済制裁を台湾に科すべきだし、状況によっては経済封鎖も行うべきだ」

中国は、台湾は領土の一部であるとする「1つの中国」原則を掲げており、アメリカ政府に対しこの原則に抵触するような形で台湾を支援しないよう、以前から警告を繰り返してきた。

フィナンシャル・タイムズによれば、バイデン政権内で名称変更を支持する動きがあったとしても――例えば国家安全保障委員会(NSC)インド太平洋調整官のカート・キャンベルは支持派だと伝えられる――最終的な決定は行われておらず、変更にはジョー・バイデン大統領が大統領令に署名する必要がある。

リトアニアではすでに名称変更が決定

名称変更が行われるとすれば、その背景には米中の緊張の高まりがあるはずだ。

名称変更が現実のものとなった場合には、人民解放軍の戦闘機を台湾上空に飛ばし、台湾空域を人民解放軍のパトロールエリアに入れるべきだと環球時報は主張した。

「名称変更は中国にとって、台湾に対する主権をさらに強く主張する十分な理由となる。人民解放軍の戦闘機が台湾の上空を飛んでも、台湾軍はあえて止めないだろうと予想される。台湾側が攻撃に踏み切る場合には、中国はためらうことなく『台湾独立』勢力に決定的かつ壊滅的な打撃を与えることだろう」

今年夏、台湾はリトアニアと台湾代表処の開設で合意。中国が駐リトアニア大使を召還する騒ぎとなった。

名称変更の可能性については、アメリカ政府も台湾政府も公式にはコメントしていない。だがフィナンシャル・タイムズによれば、駐ワシントンの中国大使館の報道官は、米台がどんな形であれ公式な関係を結ぶことに「強く反対する」と述べたという。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

パラマウント、ワーナーに敵対的買収提案 1株当たり

ビジネス

インフレ上振れにECBは留意を、金利変更は不要=ス

ワールド

中国、米安保戦略に反発 台湾問題「レッドライン」と

ビジネス

インドネシア、輸出代金の外貨保有規則を改定へ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...かつて偶然、撮影されていた「緊張の瞬間」
  • 4
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 5
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 6
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 7
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 8
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 9
    死刑は「やむを得ない」と言う人は、おそらく本当の…
  • 10
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」が追いつかなくなっている状態とは?
  • 4
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 7
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 8
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 9
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 10
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中