最新記事

アフガン情勢

これ以上の空港退避は絶望的? 米軍がビザを拒否、市内の暴力、空港テロの勧告

Some Afghan Refugees Told to Leave Country Get Turned Away by U.S. Troops

2021年8月26日(木)17時39分
メアリー・エレン・カグナソラ
カブール空港に殺到した人々

国外脱出のためカブール空港の外に集まったアフガニスタン人(8月25日) Twitter/DAVID_MARTINON/REUTERS

<米軍撤退の期限があと数日に迫るなか、アフガニスタン人協力者の国外退避の道は狭まるばかり>

アフガニスタンからの米軍撤退期限が8月31日に迫るなか、首都カブールの国際空港には、国外脱出を求める大勢のアフガニスタン人が押し寄せている。だがAP通信の報道によれば、出国書類を持っている協力者でさえ、空港ゲートを管理する米軍に追い返されることがあるという。その上、米英政府は25日夜、カブール空港に対するテロの具体的な脅威があるとして、空港に近づかないよう警告した。

アメリカの複数の当局者は8月25日、31日の米軍撤退期限後も出国希望者の国外退避支援を継続していくと述べたが、難民支援を行う複数の団体はAP通信に対し、退避作戦は混乱に満ちており、規模も最小限だと語った。

国際難民支援プロジェクトの政策担当ディレクター、スニル・バーギースは、「失敗のリスクを冒して国外脱出を試みるかどうかの判断は、アフガニスタン人たちに完全に委ねられている」と語る。「幼い子どもや妊娠中の女性を連れた者たちは、脱出するために進んでリスクを取っている」

支援団体は米政府と協力しながら、タリバンによる報復の標的になるリスクが最も高いアフガニスタン人の国外退避を支援している。米軍の手伝いをした通訳やジャーナリスト、女性の権利擁護を提唱する人々などだ。

以下にAP通信の報道を引用する。

アメリカ人の国外退避を優先

米軍の撤退期限まではあと数日しかないが、情報は錯綜している。ホワイトハウスによれば、アメリカや諸外国の輸送機、および民間航空機で国外に退避したアフガニスタン人とアメリカ人を含む外国人の数は8万2300人にのぼる。だが、混乱のなかでまだ空港にさえたどり着けない退避希望者も多い。

8月半ばにアフガニスタンを制圧したイスラム原理主義組織タリバンの指導部は、8月31日の撤退期限の延長は受け入れないと言っている。一方で、タリバンのスハイル・シャヒーン報道官はツイッターへの投稿で、「法的に有効な書類を持っている者たち」は31日以降も民間航空機で国外に出ることができると述べた。

ジョー・バイデン米大統領はアメリカ人の国外退避を優先すると言明しており、米国防総省のジョン・カービー報道官は25日、これまでに4400人を超えるアメリカ人がアフガニスタン国外に脱出したと発表した。

多くのアメリカ人が今もアフガニスタンに残されているが、バイデン政権は推定される人数については公表しないとしている。アメリカに拠点を置く複数の組織は、現地の複数の目撃者の証言として、米国市民やグリーンカードを持つアフガニスタン人の家族でも、カブールの空港構内になかなか入れないケースがあると指摘している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イラン、IAEAの核施設視察を拒否の可能性 アラグ

ワールド

「トランプ氏の希望に応じる」、FRB議長後任報道巡

ビジネス

NY外為市場=ドル上昇、トランプ氏の強硬姿勢で安全

ビジネス

米大手22行、深刻な景気後退下でも十分な資本を維持
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本のCEO
特集:世界が尊敬する日本のCEO
2025年7月 1日号(6/24発売)

不屈のIT投資家、観光ニッポンの牽引役、アパレルの覇者......その哲学と発想と行動力で輝く日本の経営者たち

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門家が語る戦略爆撃機の「内側」と「実力」
  • 2
    突然ワニに襲われ、水中へ...男性が突いた「ワニの急所」とは
  • 3
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で大爆発「沈みゆく姿」を捉えた映像が話題に
  • 4
    富裕層が「流出する国」、中国を抜いた1位は...「金…
  • 5
    韓国が「養子輸出大国だった」という不都合すぎる事…
  • 6
    夜道を「ニワトリが歩いている?」近付いて撮影して…
  • 7
    ロシア人にとっての「最大の敵国」、意外な1位は? …
  • 8
    伊藤博文を暗殺した安重根が主人公の『ハルビン』は…
  • 9
    定年後に「やらなくていいこと」5選──お金・人間関係…
  • 10
    【クイズ】北大で国内初確認か...世界で最も危険な植…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の「緊迫映像」
  • 3
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々と撤退へ
  • 4
    定年後に「やらなくていいこと」5選──お金・人間関係…
  • 5
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 6
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測…
  • 7
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 8
    飛行機内で「最悪の行為」をしている女性客...「あり…
  • 9
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 10
    サブリナ・カーペンター、扇情的な衣装で「男性に奉…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊の瞬間を捉えた「恐怖の映像」に広がる波紋
  • 4
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測…
  • 5
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の…
  • 6
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 7
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 8
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 9
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 10
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中