最新記事

バイデン政権

アフガニスタン撤退は、バイデンの「英断」だった

Ending the Forever War

2021年8月26日(木)11時01分
グレン・カール(本誌コラムニスト、元CIA工作員)

210831P32_CAL_02.jpg

バイデンは米軍撤収の計画は変わらないと断言した ELIZABETH FRANTZーREUTERS

アフガニスタンには欧米寄りの新政権が誕生したが、米政府は米軍撤収後にタリバンとアルカイダの残党が再び勢力を拡大することを警戒した。

実際、敗走したタリバンは、国境のパキスタン側の山岳地帯に逃れて態勢を立て直した。パキスタン政府から資金や武器の援助も受けていた。

80年代にソ連がアフガニスタンに侵攻していたとき、パキスタンはCIAから資金を得て、アフガニスタンの武装勢力であるムジャヒディン(イスラム戦士)たちを支援していた。

パキスタンは、当初はムジャヒディン、94年以降はタリバンを利用してアフガニスタンに影響を及ぼそうとした。米軍のアフガニスタン侵攻後も、米側の抗議を無視してタリバン支援を続けた。

グローバルな対テロ戦争が想定していたのは、イスラム過激派のテロ組織は全て共通のイデオロギーと世界戦略で結ばれたネットワークを形成していて、その頂点にビンラディンとアルカイダが君臨している、という構図だ。米情報機関は世界の80以上の国と地域にアルカイダの支部があると警告していた。

これは誤りだった。アルカイダの永続的な組織が存在するのは6カ国のみ。ジハーディスト(聖戦主義者)は共通のイデオロギーはあるが、多くは世界戦略ではなく、地域の勢力争いに没頭している。

「文明の衝突」という考えの誤り

対テロ戦争にはまた、ジハーディストが自由主義の国々を攻撃するのは「私たち(自由主義の国々)の在り方が気に食わないからだ」という前提があった。そこから、これは「文明の衝突」だという考え方が生まれた。

だがジハーディストを突き動かすのは「私たちの在り方」ではなく「私たちがやること」だ。

彼らの多くは、米軍のアフガニスタン占領など特定の行為や状況に抵抗している。つまり、彼らは「反乱分子」であってテロリストではない。タリバンは反乱軍だが、米政府はテロ組織と見なしてきた。

アメリカは、9.11テロの首謀者であり、アルカイダの指導者であるビンラディンが潜伏するアフガニスタンに侵攻した。ところが、ビンラディンをかくまっているタリバン政権のことはすぐに倒せたが、ビンラディン自身がなかなか見つからない。

このためアメリカのミッションは、タリバンの権力奪回を防ぐことへとシフトした。そのために、新生アフガニスタンの政府や警察を強化する「国家建設」が欠かせないと考えるようになった。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

アングル:自動運転車の開発競争、老舗メーカーとエヌ

ワールド

米、ガザ統治「平和評議会」のメンバー発表 ルビオ氏

ビジネス

米国株式市場=横ばい、週間では3指数とも下落 金融

ビジネス

NY外為市場=ドル上昇、ハセット氏のFRB議長起用
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:総力特集 ベネズエラ攻撃
特集:総力特集 ベネズエラ攻撃
2026年1月20日号(1/14発売)

深夜の精密攻撃でマドゥロ大統領拘束に成功したトランプ米大統領の本当の狙いは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    上野公園「トイレ騒動」に見る、日本のトイレが「世界一危険」な理由
  • 2
    世界最大の埋蔵量でも「儲からない」? 米石油大手がベネズエラ投資に慎重な理由
  • 3
    ピラミッドよりも昔なのに...湖底で見つかった古代の船が明かす、古代の人々の「超技術」
  • 4
    正気を失った?──トランプ、エプスタイン疑惑につい…
  • 5
    世界初で日本独自、南鳥島沖で始まるレアアース泥試…
  • 6
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率…
  • 7
    韓国『日本人無料』の光と影 ── 日韓首脳が「未来志向…
  • 8
    イランの大規模デモ弾圧を可能にした中国の監視技術─…
  • 9
    日中関係悪化は日本の経済、企業にどれほどの影響を…
  • 10
    122兆円の予算案の行方...なぜ高市首相は「積極財政…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 3
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率が低い」のはどこ?
  • 4
    中国が投稿したアメリカをラップで風刺するAI動画を…
  • 5
    上野公園「トイレ騒動」に見る、日本のトイレが「世…
  • 6
    Netflix『ストレンジャー・シングス』最終シーズンへ…
  • 7
    世界初で日本独自、南鳥島沖で始まるレアアース泥試…
  • 8
    正気を失った?──トランプ、エプスタイン疑惑につい…
  • 9
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 10
    母親が発見した「指先の謎の痣」が、1歳児の命を救っ…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 6
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 7
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 8
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 9
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 10
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中