スーパーヒーローが乗り出した「政治改革」、若者層の動きが大きなうねりに

A SUPERHERO’S NEW MISSION

2021年8月19日(木)18時48分
デービッド・H・フリードマン(ジャーナリスト)

210824P40GERON_CES_02.jpg

Z世代の代表的存在グレタ・トゥーンベリ(2020年3月、ブリュッセル) JOHANNA GERON-REUTERS

先行する世代と違って、Z世代は最も多感な時期に、ひどく異常な出来事を経験してきた。学校などで銃乱射事件が起きるのは、彼らにとって日常的なことだった。無実の黒人が射殺され、警官に窒息死させられる様子をフェイスブックの動画で見た。度し難いほどに破壊的だったトランプ政権の4年間も生き抜いた。

大量の死者を出す新型コロナウイルスの大流行も経験した。極端な異常気象に見舞われ、アメリカ人の3分の1が大統領選の結果を拒否し、暴徒化した群衆が議事堂に押し寄せる現場も見た。しかもこの不景気では、経済的に自立する道が見えない。

こうした出来事に若い世代は敏感だ。ここ数年の悲惨な経験がZ世代にどう影響したかは、まだ精査が必要だろう。ただ確かなのは、彼らが指をくわえて見ているだけの世代ではないということだ。

フロリダ州の高校で18年に起きた銃乱射で17人が殺されたとき、「生徒たちはただ抗議デモを組織するだけでなく、銃規制に対する議員たちの意見を調べ上げ、若い世代の有権者登録を呼び掛けていた」とラトガース大学のマットは指摘する。Z世代でスウェーデン人の環境活動家グレタ・トゥーンベリが、15歳でも声を上げれば世界的注目を集められると証明したのもこの頃だ。

行動で政治を変えられると知った若者たち

行動すれば選挙結果を変え、政策に影響を及ぼせると知ったZ世代はますます政治に目を向けている。若年層の声を政治に反映させようと活動する団体「ジェネレーション・プログレス」のブレント・コーエンは言う。Z世代は「政治家が何を言っても満足しないし、理屈や理想で勝つだけでも満足しない。彼らが知りたいのは、どの政治家が本当の結果を出せるかだ」。

時には選挙結果さえも変え得るZ世代に、激戦州の候補たちはかつてないほど注目している、とコーエンは言う。19歳のタリア・ジョセフも、そうした影響力を行使しようと勢い込む1人だ。彼女は今秋からウィスコンシン大学に入学する予定だが、ウィスコンシン州はそうした激戦州の1つだ。

「私たちの年代は昨年、自分たちの票が持つ威力に気付いた」と彼女は言う。「ジョー・バイデンは好きだけど、完璧じゃない。支持できない政策があれば、彼にもプレッシャーを与えなくては」。グレタより1歳年上のタリアは、現政権に気候変動対策を促す運動に参加している。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

ドイツ鉱工業生産、9月は前月比+1.3% 予想を大

ビジネス

日産、通期純損益予想を再び見送り 4━9月期は22

ビジネス

ECB、量的緩和再開は「まだ遠い」=シュナーベル専

ビジネス

スズキ、4ー9月期純利益11%減 半導体問題で通期
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 2
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 3
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイロットが撮影した「幻想的な光景」がSNSで話題に
  • 4
    NY市長に「社会主義」候補当選、マムダニ・ショック…
  • 5
    「なんだコイツ!」網戸の工事中に「まさかの巨大生…
  • 6
    カナダ、インドからの留学申請74%を却下...大幅上昇…
  • 7
    もはや大卒に何の意味が? 借金して大学を出ても「商…
  • 8
    約500年続く和菓子屋の虎屋がハーバード大でも注目..…
  • 9
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 10
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 6
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 7
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 8
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 9
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 10
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中