最新記事

中国

中国共産党100周年、習近平の「今後」を予測する

XI’S TOP AGENDA

2021年7月1日(木)07時00分
ミンシン・ペイ(本誌コラムニスト、クレアモント・マッケンナ大学教授)

中国政府の弾圧に耐えている香港や新疆ウイグル自治区の人たちには悲しい知らせだが、彼らの状況が短期的に改善される可能性は低い。

香港に対する締め付けは、徐々にだが確実に強まる。民主派の活動家に対する逮捕・起訴・投獄攻勢は続く。報道の自由は奪われ、子供たちは学校で洗脳教育を受ける。

一方、ウイグル人の強制収容が今以上に増えることはなさそうだが、インターネットを通じた海外からの情報流入を遮断し、現地住民の監視を強化する動きは続く。

米中関係はいかに?

外国から何を言われても、習近平の中国は引き下がらない。彼は強気だ。そうであれば、アメリカとその同盟諸国は一段と結束を固めて対抗するしかない。

だからトランプ前米政権の始めた貿易戦争も、当分は終わらないだろう。

一連の政策レビュー(見直し)が終われば、バイデン政権は半導体や人工知能などの先端技術に的を絞った追加的な経済制裁を発動する。しかし急速な関係悪化はないだろう。

今年11月にイギリスで開かれるCOP26(国連気候変動枠組条約第26回締約国会議)で、アメリカは中国政府の協力を是非とも必要としているからだ。

報復関税の応酬を一時的に停止した「第1段階の合意」は年末に期限切れとなるが、両国とも少なくともあと1年間は延長で合意するだろう。時間を稼ぎ、新たな貿易交渉を始めたいからだ。

ただし交渉の早期合意を期待するのは間違いだ。バイデン政権は来年11月に中間選挙を控えている。その前に安易な妥協はできない。

アメリカとの関係で最も危険かつ予測不能なのは軍事面での競争だ。

米国防総省は間もなく、中国の進出を抑止するための戦略をまとめる。これをバイデン政権が承認すれば、すぐに具体的な動きが出てくる。

日本や韓国に配備する軍事力の強化、台湾の防衛に向けた一段の軍事的関与、南シナ海における中国海軍の行動に対する軍事的圧力の強化などだ。

もちろん中国はこうした動きに対抗する。だが、この先の1年以内に中国軍と米軍が交戦する可能性は極めて低い。中国は自軍の能力がアメリカより劣っていることを自覚しているし、アメリカにも中国と戦争する気はない。

つまり、少なくとも短期的には、台湾は安心していい。

中国は今後も台湾に対する軍事的な威嚇を続けるだろう。それが偶発的な衝突を招く可能性はあるが、全面的な戦争にはなるまい。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

住友商、マダガスカルのニッケル事業で減損約890億

ビジネス

住友商、発行済み株式の1.6%・500億円上限に自

ビジネス

英スタンチャート、第1四半期は5.5%増益 金利上

ビジネス

クレディ・スイス、韓国での空売りで3600万ドル制
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロシア空軍基地の被害規模

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉起動

  • 4

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 5

    ポーランド政府の呼び出しをロシア大使が無視、ミサ…

  • 6

    米中逆転は遠のいた?──2021年にアメリカの76%に達し…

  • 7

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 8

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 9

    パレスチナ支持の学生運動を激化させた2つの要因

  • 10

    大卒でない人にはチャンスも与えられない...そんなア…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 8

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」…

  • 9

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 10

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中