最新記事

インタビュー

山口香JOC理事「今回の五輪は危険でアンフェア(不公平)なものになる」

2021年6月8日(火)06時40分
西村カリン(仏リベラシオン紙東京特派員)

magSR20210608invu-2.jpg

写真はイメージです Pavel1964-iStock.

「来日しても練習相手がいない。ものすごいハンデです」

――IOCは来日する関係者や選手の感染防止には力を入れている。一方で、日本国内の関係者のことはあまり気にしていないようだ。例えばボランティアにPCR検査はするのかと政府に聞くと、選手と接触する人だけ、という回答が来る。

五輪に参加する選手の80%がワクチンを接種してくるので大丈夫、と言われている。でも、例えばワクチンを打った選手が目印にワッペンを付けてくれれば分かるが、実際には分からないし、聞くわけにもいかない。

(未接種者)20%というのは少なくない数字で、関係者や記者の接種率はさらに低くなると思う。となると、やはり危険はある。

五輪はきっと開催されると思う。でも開催にあたっては、「今回のオリンピッは安全じゃなくて、危険です」から入ったほうがいい。

危険だからこういう点に気を付けてください、安全を確認しながら少しずつ進んで今回は乗り切りましょう、と。

政府やJOCが「安心・安全」と言い続けられるのは、日本人がおとなしいからですよね。

――6月1日、オーストラリアの女子ソフトボール選手団が群馬県太田市に到着したところを取材する現場では、報道陣の中でのソーシャルディスタンス(対人距離)がゼロだった。五輪が本格的に始まり記者の数も増えたら、どうなるのかと心配になった。

きっと、そういった問題がいろんなところで出てくるんですよ。先ほど話した20%の未接種者との接触の問題もあるだろうし、記者たちのソーシャルディスタンスの管理という問題も出てくる。

太田市の取材では、記者たちをコントロールする人も、組織委員会の人もいなかったですよね? そういうことが、あちこちで起きると想像できる。

さらには、「アンフェア(不公平)」を感じる人も出てくる。コロナ感染の問題とは別に、選手たちが本当に力を発揮できる状況なのかが問われる。

オーストラリアの選手は早めに来日できたが、事前合宿をキャンセルされているチームもたくさんある。また、柔道ではスイスチームが筑波大学で事前合宿をすることになっているが、市や大学側は「来てください。しかし、学生と接触させられません」としている。つまり来日しても練習相手がいない。

しかも今回は、練習パートナーを日本に連れてくることができない。ものすごいハンデです。それは柔道だけでなく、いろんな種目で起きていること。

でも日本人選手は通常の練習や準備をしてから、本番を迎えられる。「ホスト国のアドバンテージ」となるかもしれないが、そういうアンフェアなことがあちこちに出てくる。

アンフェアだけでなく、危険なこともある。本番直前に来日して時差の調整や、日本の夏の暑さに体が順応できないとなったら、屋外競技の陸上などでは危険な事故にもつながりかねない。

そうしたさまざまなことをシミュレーションできているかといえば、今はコロナ対策だけで大変で、手が回っていない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ウクライナのエネ施設に大規模攻撃、無人機400機以

ワールド

米国防総省、ハーバード大との軍事教育プログラム終了

ワールド

米が6月までの戦争終結要求、ロ・ウクライナに=ゼレ

ビジネス

アングル:ラグジュアリー業界、シェア獲得に向け支出
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプの帝国
特集:トランプの帝国
2026年2月10日号(2/ 3発売)

南北アメリカの完全支配を狙うトランプの戦略は中国を利し、世界の経済勢力図を完全に塗り替える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    がんの約4割は、日々の取り組みで「予防可能」...予防のために、絶対にしてはいけないこととは?
  • 2
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた実験室」に...抗生物質の「不都合」な真実とは
  • 3
    韓国映画『しあわせな選択』 ニューズウィーク日本版独占試写会 60名様ご招待
  • 4
    エヌビディア「一強時代」がついに終焉?割って入っ…
  • 5
    韓国ダークツーリズムが変わる 日本統治時代から「南…
  • 6
    【台湾侵攻は実質不可能に】中国軍粛清で習近平体制…
  • 7
    【銘柄】「ソニーグループ」の株価が上がらない...業…
  • 8
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 9
    心停止の8割は自宅で起きている──ドラマが広める危険…
  • 10
    日経平均5万4000円台でも東京ディズニー株は低迷...…
  • 1
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 2
    日本への威圧を強める中国...「レアアース依存」から脱却する道筋
  • 3
    致死率は最大75%のニパウイルスが、世界規模で感染拡大する可能性は? 感染症の専門家の見解
  • 4
    「出禁」も覚悟? ディズニーランドで緊急停止した乗…
  • 5
    がんの約4割は、日々の取り組みで「予防可能」...予…
  • 6
    米戦闘機、空母エイブラハム・リンカーンに接近した…
  • 7
    グラフが示す「米国人のトランプ離れ」の実態...最新…
  • 8
    高市首相の発言は正しかった...「対中圧力」と「揺れ…
  • 9
    エヌビディア「一強時代」がついに終焉?割って入っ…
  • 10
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 3
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 6
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 7
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 8
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
  • 9
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率…
  • 10
    180万トンの「リチウムごみ」を資源に...EV電池の「…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中