最新記事

インド

インドの空港倉庫に国際支援物資置き去り 「どこに配られるか誰も把握していない」

2021年5月12日(水)19時45分
青葉やまと

世界各地からインド向けの支援物資が積み込まれたが......   Menahem Kahana/REUTERS

<国際社会からインドに支援物資が続々と到着するも、その大半は必要とする人々に届いていない......>

新型コロナが猛威を振るうインドでは、1日あたりの新規感染者数が40万人に達した。母数の人口が異なるとはいえ、単純に感染者数で比較すれば日本の60倍、アメリカの10倍ほどの規模に上る。感染が確認された人の割合はインド全体で3人に1人、状況が深刻な南西部ゴア州では2人に1人という極めて高い水準になっている。

治療に必要な物資が圧倒的に不足しており、家族らは知人のつてや非正規の取引などを通じ、酸素ボンベ、ワクチン、治療薬のレムデシビルの調達を試みている。

とくに深刻なのが酸素不足だ。人口が集中する北部の首都デリーでは十分な酸素を製造しておらず、東部の工業地帯からの輸送に依存している。ロイターは、液体酸素は空輸不可能なことから、場合によってはタンクローリーで1000キロ以上を陸送している状態だと報じている。また、そもそも国内全体の生産量が十分でなく、各州は酸素の争奪戦に動いている。

不足する酸素とワクチン、そして治療薬を求め、人々は炎天下での行列を強いられている。米CBSは、列での待機が「数時間、ときには数日間」に及ぶと伝えている。必要な酸素が手に入らないだけでなく、物資不足が新たな密を生み出している状況だ。

国際社会からニューデリー空港へ、続々と支援が届く

インド国内の窮状が報じられると、多くの国々が国際援助を申し出た。現地CBS紙によると、イギリスは大型酸素生成機3台と人工呼吸器1000台を載せた大型貨物機を飛ばし、すでにニューデリーでの荷下ろしが完了している。

Watch: India receives first shipment of Covid aid from UK, MEA tweets pictures

インディア・トゥデイ紙はアメリカが4月下旬、酸素ボンベ、酸素濃縮機、診断装置、N95マスクなど、1億ドル相当の支援物資を発送したと報じている。

このほか、医療チームと移動式酸素製造機の提供を申し出たドイツをはじめ、フランス、ベルギー、ドバイ、タイなど世界各国から援助が向けられている。日本からも、支援が決定された酸素濃縮機300台のうち、第1弾として100台が到着した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米ウクライナ首脳、日本時間29日未明に会談 和平巡

ワールド

訂正-カナダ首相、対ウクライナ25億加ドル追加支援

ワールド

ナイジェリア空爆、クリスマスの実行指示とトランプ氏

ビジネス

中国工業部門利益、1年ぶり大幅減 11月13.1%
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 2
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と考える人が知らない事実
  • 3
    【銘柄】子会社が起訴された東京エレクトロン...それでも株価が下がらない理由と、1月に強い秘密
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 6
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」と…
  • 7
    「アニメである必要があった...」映画『この世界の片…
  • 8
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 9
    2026年、トランプは最大の政治的試練に直面する
  • 10
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 6
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 7
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 8
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 9
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 10
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 6
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 10
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中