最新記事

新型コロナ危機

インド緊急事態、コロナ患者の酸素がない!

Indian Court Urges Officials to 'Beg, Borrow or Steal' Oxygen as COVID Spike Causes Shortage

2021年4月23日(金)16時23分
ニコール・ファラート
空になった酸素シリンダーを積んだトラック

空になった酸素シリンダーを積んで補給ステーションに向かう(4月22日、アーメダバード) Amit Dave- REUTERS

<1日のコロナ感染が31万人超と世界最多を更新したインドのニューデリーは、病院の酸素が底をつき、路上で火葬が行われる終末の様相を呈している>

新型コロナウイルスの感染第2波が猛威をふるっているインドでは、ニューデリーの高等裁判所が4月21日、患者の命を守るために工業用酸素を医療に転用すべきとの判断を下した。

AP通信によれば、ニューデリーの病院が行った申し立てに対して高等裁判所の判事たちは「酸素がなくて患者が死ぬなどということがあってはならない。これは国家の緊急事態だ。拝むか、借りるか、あるいは盗んででも酸素を用意すべきだ」との見解を示した。

ニューデリーの酸素不足を訴えるリポート。毎日届くはずの酸素が届かないため、病院スタッフや医師があちこちで調達してきた工業用酸素シリンダーを徒歩で運び込む。


インドでは22日、新たに31万4000人の感染者が報告され、1日あたりの世界最多を記録した。医療体制がひっ迫し、医療物資も足りない。インド保健省によれば、直近の24時間で2104人が死亡し、死者数の合計は18万4657人にのぼっている。

AP通信は、ウッタルプラデシュ州の州都ラクナウにある主な火葬場では、4月18日だけで200体近くの遺体を受け取ったと報じた。シェカー・チャクラボーティー(68)は、「至る所に遺体があって、歩道で遺体の火葬が行われていた。これまでの人生で、こんなに多くの遺体を見たことはなかった」と語った。

火葬場の外に遺族が行列

さらにAP通信によれば、以下の通りだ。

ニューデリーをはじめとする各都市では、ロックダウンや厳しい制限が導入され、多くの人が痛みや恐怖、苦しみに直面している。

各地の病床不足は深刻で、救急車が病院をたらい回しになる光景はおなじみだ。火葬場に届く遺体の数は以前の何倍にも跳ね上がり、火葬場の外には嘆き悲しむ親族が列をなしている。

バンガロールにあるシャンティ病院&研究センターのサンジェイ・グルラジ博士は、「毎日、病床の空きを探している患者たちから電話がかかってくる。需要が供給をはるかに上回っている」と述べ、こう続けた。「日々、病床の確保に奔走しているが、彼らを助けることができないのは本当につらい。この1週間で、私の患者3人が入院できずに自宅で亡くなった。医師として、最悪の気分だ」

ウッタルプラデシュ州北部に住むヨゲシュ・ディクシットは、今週に入ってから父親のために、通常の倍以上の価格(1本あたり160ドル)で酸素ボンベを2本購入した。ラクナウにある公立病院は、酸素の在庫が尽きてしまったのだ。費用を捻出するために妻の宝石類を売らなければならなかったという。

インド西部のマハラシュトラ州では、酸素漏れのために人工呼吸器につながれた患者22人が窒息死する悲惨な事故もあった(4月22日)


同州のカンプールでは、ガンジス川沿いの山道に35の臨時火葬場が設けられた。

インドの保健省は、同国で1日に生産される酸素7500トンのうち、6600トンを医療用に充てている。また首都ニューデリーでは鉄道の客車75両を病棟に転用し、新型コロナウイルスの感染者向けに1200の病床を提供しているという。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、次期FRB議長にウォーシュ氏かハセット

ビジネス

アングル:トランプ関税が生んだ新潮流、中国企業がベ

ワールド

アングル:米国などからトップ研究者誘致へ、カナダが

ビジネス

NY外為市場=ドル上昇、方向感欠く取引 来週の日銀
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の脅威」と明記
  • 2
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 3
    受け入れ難い和平案、迫られる軍備拡張──ウクライナの選択肢は「一つ」
  • 4
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 5
    【揺らぐ中国、攻めの高市】柯隆氏「台湾騒動は高市…
  • 6
    「前を閉めてくれ...」F1観戦モデルの「超密着コーデ…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    首や手足、胴を切断...ツタンカーメンのミイラ調査開…
  • 9
    世界最大の都市ランキング...1位だった「東京」が3位…
  • 10
    現役・東大院生! 中国出身の芸人「いぜん」は、なぜ…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 4
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 5
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 6
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 7
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 8
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 9
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 10
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中