最新記事

宇宙戦争

中国が米衛星を破壊する宇宙兵器を配備──米情報機関

China Building Destructive Space Weapons to 'Blind' U.S. Satellites

2021年4月15日(木)17時47分
キャサリン・ファン
中国の宇宙ステーション(イメージ)

中国の有人宇宙ステーションは2022年以降に完成の見通し(写真はイメージ) Elen11-iStock

<地上発射型の対衛星兵器で、低軌道上の人工衛星の破壊や光学センサーの無効化を狙う>

新たな報告により、中国がアメリカの衛星を無効化する破壊的な宇宙兵器の配備を進めていることが明らかになった。

米国家情報長官室(ODNI)は4月13日に発表した毎年恒例の脅威評価報告書の中で、「中国は既に、地球低軌道にある衛星を破壊するための地上発射型対衛星兵器(ASAT)や、おそらくは衛星の光学センサーを無効化または損傷させるための地上発射型ASATレーザーを配備している」と述べた。通信衛星や偵察衛星などの衛星がなければ米軍は機能不全に陥るため、中国の対衛星兵器はかねてから警戒されてきた。攻撃に備えて、衛星を武装させることも検討されてきた。

【動画】中国は近い将来、すべての人工衛星を撃ち落とせるようになる


同報告書は、新型コロナウイルスのパンデミックや気候変動、テロ組織や大量破壊兵器、中国やロシアのような競合国など、さまざまな脅威について評価を行ったもので、中国がアメリカの「最大の戦略的競合相手」に浮上していると指摘した。

「中国は対等な競合国となりつつあり、複数の分野――特に経済、軍事、技術の分野――でアメリカに挑み、強引に国際ルールを変えようとしている」と報告書は述べている。

なかでも中国がとりわけ熱心なのが、ASATの開発と保有だ。ODNIは、中国は軍の各部隊に対して、ASATを使ってアメリカの衛星を破壊するための備えをさせている。報告書は、「中国は、アメリカが宇宙分野での主導的地位を基に築いてきたような軍事的・経済的な利益や名誉を得るために、宇宙においてアメリカと同等の、あるいはそれ以上の能力を手にしようとしている」と指摘している。

有人宇宙ステーションも完成間近

近年、こうした宇宙兵器の脅威は高まっている。米国防総省は2019年の報告書で、「(宇宙兵器には)サイバー兵器、電子兵器や指向性エネルギー兵器など複数の選択肢があり、敵対勢力が幅広い攻撃能力を手にすることが可能だ」と指摘した。

ODNIは、中国の有人宇宙ステーションが2022年から2024年の間に完成して運営を開始すると予想。同ステーションの運営が、「情報分野における米軍の優位性を損なう」ことを目指す中国の軍事作戦にとって、きわめて重要になるだろうと指摘した。

報告書はまた、中国が「頻繁かつ効果的にサイバースパイ活動を展開している」とも指摘したが、一方で活動は最小限の規模にとどまり、サイバー攻撃が行われても「米国内の重要インフラが受ける被害は局地的、一時的なもの」だろうとも述べた。

一連の脅威はいずれも、中国が世界の大国を目指す取り組みの一環だという。「中国共産党は今後も総力を挙げて、中国の影響力を拡大し、影響力でアメリカに追いつき、アメリカと同盟国・友好国との間に亀裂を生じさせ、中国の権威主義的な制度にとって有利な国際環境を作るための取り組みを続けていくだろう」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

北朝鮮の金与正氏、日米韓の軍事訓練けん制 対抗措置

ワールド

ネパール、暫定首相にカルキ元最高裁長官 来年3月総

ワールド

ルイジアナ州に州兵1000人派遣か、国防総省が計画

ワールド

中国軍、南シナ海巡りフィリピンけん制 日米比が合同
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる」飲み物はどれ?
  • 3
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人に共通する特徴とは?
  • 4
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 5
    腹斜筋が「発火する」自重トレーニングとは?...硬く…
  • 6
    電車内で「ウクライナ難民の女性」が襲われた驚愕シ…
  • 7
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 8
    【動画あり】火星に古代生命が存在していた!? NAS…
  • 9
    悪夢の光景、よりによって...眠る赤ちゃんの体を這う…
  • 10
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 1
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 2
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 3
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサイルが命中、米政府「機密扱い」の衝撃映像が公開に
  • 4
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 5
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 6
    埼玉県川口市で取材した『おどろきの「クルド人問題…
  • 7
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 8
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 9
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 6
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 7
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 8
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 9
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
  • 10
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中