最新記事

色素

青色の天然着色料が発見される

2021年4月13日(火)18時20分
松岡由希子

赤キャベツに含まれる青色の天然色素が発見された...... Credit: Rebecca Robbins, Mars Wrigley Global Innovation Center

<米カリフォルニア大学デービス校、名古屋大学などの研究によって、安定的に青を発色する天然色素が発見された......>

食品着色料は、食品や医薬品、化粧品の分野で広く用いられてきた。近年は、健康への影響のおそれや製造工程での持続可能性などの観点から、化学的に合成された「合成着色料」に代わって、植物の花や葉、実など、自然界にある物質を原料とする「天然着色料」への需要が高まっており、その市場規模は2027年までに32億ドル(約3520億円)に達すると予測されている。

とりわけ、青色着色料は、黄色と混ぜて緑にするなど、調色において重要な色素だ。しかし、安定的に青を発色する天然色素はこれまで見つかっておらず、現時点では、食用タール色素「青色1号」が主に使用されている。

赤キャベツのアントシアニンに含まれる青色の天然着色料を発見

米カリフォルニア大学デービス校、米菓子メーカー大手マースリグレー、仏アヴィニョン大学、名古屋大学らの国際研究チームは、10年にわたる研究期間を経て、赤キャベツのアントシアニンに含まれる青色の天然着色料を発見し、2021年4月7日、オープンアクセス科学ジャーナル「サイエンス・アドバンシス」でその研究成果を発表した。

赤キャベツの色素は10種以上のアントシアニンからなり、現在、赤や紫の天然着色料として広く用いられている。研究チームは、これらのアントシアニンを単離し、それぞれに金属イオンを加えて発色と安定性を調べた。その結果、「P2」と名付けたアントシアニンにアルミニウムイオンを加えると、青色1号とほぼ同じ色を示し、安定であることがわかった。アルミニウムイオン1個の周りに「P2」の分子3個が集まるプロペラのような構造になると、鮮やかな青が発色するという。

「P2」は、赤キャベツに含まれるアントシアニン全体のわずか5%未満にすぎない。そこで、研究チームは、赤キャベツに含まれる他のアントシアニンを青色の化合物に変換する方法を考案。「特定の酵素にさらすことで、赤みをもたらすアントシアニンが『P2』のように青くなるのではないか」との仮説を立て、膨大なタンパク質配列を検索し、赤キャベツに含まれるアントシアニン「P6」、「P7」、「P8」を「P2」に変換する酵素を特定した。

保存安定性も優れていた

さらに研究チームは、この酵素を改変し、「P2」への変換をより効率的に促すことにも成功している。酵素によって変換した色素をアイスクリームやチョコレートのコーティングに用いたところ、青色1号と同様の色が得られ、保存安定性も優れていた。

研究論文の責任著者でカリフォルニア大学デービス校のジャスティン・シーゲル准教授と筆頭著者で同校の修士課程に在籍するパメラ・デニシュ研究員は、スタートアップ企業「ピークB」を創設し、今後、この技術の実用化をすすめていく方針だ。

自然界でなぜ青は珍しいのか?

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

英、軍基地の離着陸記録調査 エプスタイン氏事件捜査

ワールド

パキスタンがアフガン主要都市を攻撃、国防相「戦争状

ビジネス

野村アセマネ社長に大越氏、JPモルガンAM元社長 

ビジネス

中国、元高抑制へドル買い促す 外貨リスク準備金を実
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本人が知らない AI金融の最前線
特集:日本人が知らない AI金融の最前線
2026年3月 3日号(2/25発売)

フィンテックの進化と普及で、金融はもっと高速に、もっとカジュアルに

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからくりとリスク
  • 2
    村瀬心椛は「トップでなければおかしい」...スノボの謎判定に「怒りの鉄拳」、木俣椋真の1980には「ぼやき」も
  • 3
    少女買春に加え、国家機密の横流しまで...アンドルーの大スキャンダルを招いた「女王の寵愛」とは
  • 4
    戦術は進化しても戦局が動かない地獄──ロシア・ウク…
  • 5
    中国で今まで発見されたことがないような恐竜の化石…
  • 6
    住宅の4~5割が空き家になる地域も......今後30年で…
  • 7
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 8
    「まるで別人...」ジョニー・デップの激変ぶりにネッ…
  • 9
    【和平後こそリスク】ウクライナで米露が狙う停戦「…
  • 10
    「3列目なのにガガ様が見えない...」観客の視界を遮…
  • 1
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医師がすすめる意外な健康習慣
  • 2
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く高齢期の「4つの覚悟」
  • 3
    「水道水」が筋トレの成果を左右する...私たちの体には濾過・吸収する力が備わっている
  • 4
    村瀬心椛は「トップでなければおかしい」...スノボの…
  • 5
    少女買春に加え、国家機密の横流しまで...アンドルー…
  • 6
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 7
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 8
    「#ジェームズ・ボンドを忘れろ」――MI6初の女性長官…
  • 9
    カビが植物に感染するメカニズムに新発見、硬い表面…
  • 10
    海外(特に日本)移住したい中国人が増えている理由.…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 4
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 5
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 6
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 7
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 8
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 9
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 10
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中