最新記事

中韓関係

韓国「二面相」外交

2021年4月4日(日)18時43分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)
韓国の鄭義溶外相

訪韓したロシアのラブロフ外相との会談後に記者会見する韓国の鄭義溶外相 Ahn Young-joon/REUTERS

4月3日、日米韓の安保担当高官がアメリカで対面協議を行ったが、同日、韓国外相が訪中し王毅外相と会談した。3月の米韓「2+2」で中国名指し批判を断った韓国の二面相ぶりと習近平の戦略を考察する。

日米韓の安全保障担当高官がアメリカで

日本時間の4月3日、日米韓3か国の安全保障担当高官がアメリカのメリーランド州にある海軍士官学校で対面式の協議を行った。日本からは北村国家安全保障局長が、韓国からは徐薫(ソ・フン)国家安保室長が出席し、アメリカのサリバン大統領補佐官と話し合った。協議では、北朝鮮の非核化や朝鮮半島の平和と安定を維持するためには3ヵ国の連携が不可欠という認識で一致したという。

会談ではほかにも、海洋進出を強める中国に対する抑止力や、「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向けた取り組みに関しても協議したとのことだが、そもそも「自由で開かれたインド太平洋戦略」から「戦略」という文字を削除したのはなぜだったのかを思い出して欲しい。

安倍元首相が中国を国賓として訪問したいという強い願望を持ち始め、「自由で開かれたインド太平洋戦略」は決して習近平が唱える「一帯一路」に対抗するものではないと言い始めた頃から「戦略」の2文字が削除されたのではなかっただろうか?

そして昨年春、まだトランプ政権だった時に、アメリカから「尖閣諸島を中国から守るためにアメリカの沿岸警備隊と日本の海上機関が共に行動しようではないか」という趣旨のオファーがあったようだが、それを当時の安倍首相は断ったという。断った理由は言うまでもなく、自分を国賓として招聘してくれた習近平を、今度は日本への国賓として招聘する準備をしていたからだ。日本の自民党に君臨する二階幹事長は、どんなことがあっても習近平を国賓として来日させるという意思を変えていない。だから安倍元首相も二階幹事長の言うとおりに動かなければならない。だから「習近平に顔向けならないようなことはできない」として、アメリカのオファーを断ったとのこと。

この情報に関しては、私自身はある関係筋から聞いているが、3月9日付けのForbesにも同様の内容が載っているので(激震! 中国「海警法」の尖閣圧力 VS アメリカ非公式連絡)、間違いないものと思われる。

バイデン大統領にしても選挙中に「中国を刺激してはならない」として「自由で開かれたインド太平洋」という言葉さえ「安全と繁栄のインド太平洋」に置き換えたくらいだから、いくら日米韓3ヵ国が「 『自由で開かれたインド太平洋』の実現に向けた取り組みに関しても協議した」などという声明を出しても、それが対中強硬策として3ヵ国が連携したなどという、真に迫って来るインパクトはない。

韓国外相の初訪問先は中国だった

「あまり真実味がない証拠」は簡単に見つかる。

4月3日、就任したばかりの韓国の鄭義溶(チョン・ウィヨン)外交部長官(外相)は中国を訪問し、福建省アモイで王毅外相(兼国務委員)会談した。中国では鄭義溶外相の訪中を大きく取り上げ、就任した後の「最初の訪問国がアメリカでなく中国であった」ことを、至るところで強調している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

訪米中の赤沢再生相、ラトニック商務長官と電話会談

ビジネス

アングル:中国で値下げ競争激化、デフレ長期化懸念 

ワールド

米政権、農場やホテルでの不法移民摘発一時停止を指示

ワールド

焦点:イスラエルのイラン攻撃、真の目標は「体制転換
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 2
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生きる力」が生んだ「現代医学の奇跡」とは?
  • 3
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されずに「信頼できない人」を見抜く方法
  • 4
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 5
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 6
    構想40年「コッポラの暴走」と話題沸騰...映画『メガ…
  • 7
    逃げて!背後に写り込む「捕食者の目」...可愛いウサ…
  • 8
    「結婚は人生の終着点」...欧米にも広がる非婚化の波…
  • 9
    メーガン妃の「下品なダンス」炎上で「王室イメージ…
  • 10
    先進国なのに「出生率2.84」の衝撃...イスラエルだけ…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 5
    ふわふわの「白カビ」に覆われたイチゴを食べても、…
  • 6
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 7
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 8
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 9
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 10
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中