最新記事

自爆テロ

復活祭前のキリスト教会で自爆テロ 自爆犯2人死亡、インドネシア

2021年3月29日(月)11時22分
大塚智彦
自爆テロの爆発の瞬間

自爆テロが発生した直後の監視カメラの映像より KOMPASTV / YouTube

<イスラム教徒が大多数を占める国で、復活祭を前にしたキリスト教会が何者かによって襲われた──>

インドネシア・スラウェシ島の最大都市マカッサル市内にあるキリスト教会で3月28日午前爆発があり、これまでに2人が死亡、約20人が負傷した。インドネシア国家警察などは爆発はテロリストによる「自爆テロ」とみて捜査を始めた。

現地からの報道によると、28日午前10時半ごろ(日本時間同11時半ころ)マカッサル市内カジャオラリド通りにあるカトリック系「カテドラル教会」の入り口付近で大きな爆発が起きた。

目撃者などの情報としてバイクに乗った2人組が教会の敷地内に入ろうとしたところ、教会の警備員に止められた直後に爆発が起きたもので、2人組による自爆テロとみられている。

自爆テロ犯2人が死亡したほか、警備員などの教会関係者やミサに参列していた信者ら約20人が負傷、市内の各病院に搬送されて手当てを受けているという。

「カテドラル教会」では28日、キリスト教の復活祭前の聖週間初日にあたる「パームサンデー」のミサがちょうど終わったところで、参列者らが教会を出ようとしていたところだったという。

国家警察本部や警察対テロ特殊部隊「デンスス88」などによると、これまでのところ自爆テロの犯行声明は出ていないというが、イスラム教系テロ組織「ジェマ・アンシャルット・ダウラ(JAD)」のメンバーによる犯行との見方を強めている。

ジョコ・ウィドド大統領らが緊急声明

自爆テロ事件を受けてジョコ・ウィドド大統領は28日、オンライン記者会見で緊急声明を発表してテロを厳しく非難するとともに「治安当局に断固とした強い措置をとるよう指示した。国民はテロに屈することなく、また平静を保つように」と呼びかけた。

さらにイスラム教組織の「インドネシア・イスラム法学者評議会(MUI)」も「今回のテロを厳しく糾弾する」という声明を明らかにしたほか、マフード政治法務治安担当調整相も「これは国民の安全、国家の統一を破壊する重大な犯罪であり断じて容認できない」とテロを批判するなど、コロナ禍の真っ最中に発生したテロ事件だけに政府は緊急対応に追われた。

過去にもキリスト教会狙ったテロ

インドネシアでは2018年5月にジャワ島東ジャワ州のスラバヤで市内にある3カ所のキリスト教会で連続自爆テロ事件が発生し15人が死亡している。この事件は中東のテロ組織「イスラム国(IS)」に共鳴するテロリストの夫妻とその子供という一家による連続自爆テロだった。

2002年10月には国際的な観光地バリ島で連続爆弾テロ事件が発生。外国人観光客を含む202人が犠牲となっている。それ以降2005年5月にスラウェシ島でキリスト教徒の市場を狙った爆弾テロで22人が死亡したほか、同年10月にはキリスト教徒の少女3人が斬首殺害され、2011年8月のイスラム教徒の断食中にスマトラ島リアウ州のキリスト教会が襲撃される事件が起きている。

さらに2018年11月にはカリマンタン島サマリンダのキリスト教会で爆弾が爆発し1人が死亡するなど、キリスト教会、キリスト教信者に対するテロ攻撃があとをたたない状況が続いている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、エプスタイン氏自家用機8回搭乗 司法省

ワールド

米最高裁、シカゴへの州兵派遣差し止め維持 政権の申

ビジネス

銅価格、1万2000ドルの大台を突破し最高値 今年

ワールド

国連安保理、ベネズエラ情勢巡り緊急会合 米「最大限
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者・野村泰紀に聞いた「ファンダメンタルなもの」への情熱
  • 2
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 3
    ジョンベネ・ラムジー殺害事件に新展開 父「これまでで最も希望が持てる」
  • 4
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 5
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 6
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
  • 7
    「何度でも見ちゃう...」ビリー・アイリッシュ、自身…
  • 8
    「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野…
  • 9
    なぜ人は「過去の失敗」ばかり覚えているのか?――老…
  • 10
    楽しい自撮り動画から一転...女性が「凶暴な大型動物…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 9
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 10
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中