最新記事

自爆テロ

復活祭前のキリスト教会で自爆テロ 自爆犯2人死亡、インドネシア

2021年3月29日(月)11時22分
大塚智彦

2020年11月には今回自爆テロが起きたマカッサル市のある南スラウェシ州に隣接する中部スラウェシ州の山間部でキリスト教徒4人が斬殺される事件も起きている。中部スラウェシ州では州都パルなどでイスラム系テロ組織「東部インドネシアのムジャヒディン(MIT)」によるテロ事件が相次ぎ、国家警察や軍によるMIT掃討を目的とした「ティノンバラ作戦」が継続されている。

「多様性の中の統一」が国是

今回の自爆テロもキリスト教徒、キリスト教施設をターゲットにしたテロ事件であることからジョコ・ウィドド大統領やMUIも今回の自爆テロを受けて「宗教に関係なくテロという卑劣な行為は非難されるべきである」と宗教の違いによる対立激化への強い懸念を表明した。

インドネシアは人口約2億7000万人のうち約88%がイスラム教徒と世界最大のイスラム教徒人口を擁しているが、憲法ではイスラム教以外にキリスト教、ヒンズー教、仏教なども認めており、いわゆる「イスラム教国」ではなく、「多様性の中の統一」や「寛容」を国是としている。

容疑者の身元不明で捜査は難航か

警察によるとこれまでのところ自爆テロ犯の身元は特定されていないが、2人は男女とみられている。

「カテドラル教会」近くに設置された監視カメラには白い乗用車が通り過ぎた直後に爆発が発生、道路が大きな白煙で覆われる状況が映し出されており、繰り返しその映像が地元テレビのニュースでは放映された。

これまでのところ自爆テロ犯の背景は分かっていないが、スラウェシ州を主な活動拠点とする「MIT」の関与を疑う見方もあったが、国家警察は28日夜、ISに忠誠を誓う「ジェマ・アンシャルット・ダウラ(JAD)」が関与しているとの見方を強めている。

マフード調整相は28日、全国の宗教関連施設や公共施設での警戒警備の強化を警察に指示、コロナ禍の中でのテロ事件にインドネシアでは緊張が高まっている。


otsuka-profile.jpg[執筆者]
大塚智彦(フリージャーナリスト)
1957年東京生まれ。国学院大学文学部史学科卒、米ジョージワシントン大学大学院宗教学科中退。1984年毎日新聞社入社、長野支局、東京外信部防衛庁担当などを経てジャカルタ支局長。2000年産経新聞社入社、シンガポール支局長、社会部防衛省担当などを歴任。2014年からPan Asia News所属のフリーランス記者として東南アジアをフィールドに取材活動を続ける。著書に「アジアの中の自衛隊」(東洋経済新報社)、「民主国家への道、ジャカルタ報道2000日」(小学館)など

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

金現物、4500ドル初めて突破 銀・プラチナも最高

ワールド

イスラエル、軍ラジオを来年閉鎖 言論の自由脅かすと

ワールド

再送-ベネズエラが原油を洋上保管、米圧力で輸出支障

ワールド

豪NSW州で銃規制・ 反テロ法強化、乱射事件受け
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者・野村泰紀に聞いた「ファンダメンタルなもの」への情熱
  • 2
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 3
    ジョンベネ・ラムジー殺害事件に新展開 父「これまでで最も希望が持てる」
  • 4
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 5
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 6
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
  • 7
    「何度でも見ちゃう...」ビリー・アイリッシュ、自身…
  • 8
    「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野…
  • 9
    なぜ人は「過去の失敗」ばかり覚えているのか?――老…
  • 10
    楽しい自撮り動画から一転...女性が「凶暴な大型動物…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 9
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 10
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中