最新記事

感染症対策

独仏伊、アストラゼネカ製コロナワクチン接種中断 血栓懸念

2021年3月16日(火)09時13分

ドイツ保健省は英アストラゼネカ製の新型コロナウイルスワクチンの接種を中止すると発表した。写真は同日。ミラノで撮影(2021年 ロイター/Flavio Lo Scalzo)

ドイツ、フランス、イタリア政府は15日、英アストラゼネカ製の新型コロナウイルスワクチンの接種を中断すると発表した。接種後に血栓ができるなどの副反応が疑われる事例が報告されていることを受けたもので、すでに遅延している欧州のワクチン接種計画に一段の影響が及ぶ恐れがある。

この他、スペインのラジオ、カデナ・セールは匿名の当局者の話として、スペインでも同ワクチンの接種が少なくとも15日間、中断されると報じた。

アストラゼネカ製ワクチンを巡ってはデンマークとノルウェーが先週、接種を中断。アイスランド、ブルガリア、アイルランド、オランダも同様に中断した。

世界保健機関(WHO)のスワミナサン首席科学者はオンライン形式で実施した記者会見で、これまでところ新型コロナワクチンと血栓性との関連性は確認されていないとし、「パニックを起こしてほしくない」と述べた。

欧州ではドイツが先週、感染拡大第3波に直面していると表明。イタリアが感染再拡大を受け抑制策を強化したほか、フランスの首都パリでは病院の対応能力が逼迫している。

こうした中、独仏伊など人口が多い欧州主要国でアストラゼネカ製ワクチンの接種が中断されることで、すでに遅延している欧州の接種状況を巡る懸念が一段と高まる可能性がある。

ドイツのシュパーン保健相は、血栓ができるリスクは低いものの、リスクを排除することはできないと指摘。政府はポール・エーリッヒ研究所(PEI)の助言に従い、接種中断を決めたと語った。

フランスのマクロン大統領は、欧州医薬品庁(EMA)によるアストラゼネカ製ワクチンの精査が16日に完了するまで同ワクチンの接種を停止すると発表。イタリアも、当局が判断を示すまでの「予防的、一時的な措置」とした。

アストラゼネカ製ワクチンを巡っては対応が別れており、英国は何も懸念はないと表明。ポーランドは恩恵はリスクを上回っているとの見解を示した。欧州外では、タイが12日に接種中断を発表したが、この日、再開を表明した。

EMAによると、欧州で約500万人がアストラゼネカ製ワクチンの接種を受けているが、3月10日時点で30件の血栓症の事例が報告されている。

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2021トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


【話題の記事】
・フィット感で人気の「ウレタンマスク」本当のヤバさ ウイルス専門家の徹底検証で新事実
・新型コロナ感染で「軽症で済む人」「重症化する人」分けるカギは?
・世界の引っ越したい国人気ランキング、日本は2位、1位は...


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

FRB議長、QT停止の可能性示唆 「数カ月以内」に

ビジネス

トランプ氏、中国との食用油取引打ち切り検討

ビジネス

NY外為市場=ドル下落、米中通商懸念が再燃

ビジネス

米ボストン連銀総裁、追加利下げ支持を再表明 雇用リ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本人と参政党
特集:日本人と参政党
2025年10月21日号(10/15発売)

怒れる日本が生んだ「日本人ファースト」と参政党現象。その源泉にルポと神谷代表インタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    フィリピンで相次ぐ大地震...日本ではあまり報道されない、被害の状況と実態
  • 2
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以外の「2つの隠れた要因」が代謝を狂わせていた
  • 3
    まるで『トップガン』...わずか10mの至近戦、東シナ海で「中国J-16」 vs 「ステルス機」
  • 4
    【クイズ】アメリカで最も「死亡者」が多く、「給与…
  • 5
    「中国に待ち伏せされた!」レアアース規制にトラン…
  • 6
    イーロン・マスク、新構想「Macrohard」でマイクロソ…
  • 7
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 8
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
  • 9
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 10
    あなたの言葉遣い、「AI語」になっていませんか?...…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな飼い主との「イケイケなダンス」姿に涙と感動の声
  • 3
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以外の「2つの隠れた要因」が代謝を狂わせていた
  • 4
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
  • 5
    中国人が便利な「調理済み食品」を嫌うトホホな理由…
  • 6
    ベゾス妻 vs C・ロナウド婚約者、バチバチ「指輪対決…
  • 7
    時代に逆行するトランプのエネルギー政策が、アメリ…
  • 8
    ウクライナの英雄、ロシアの難敵──アゾフ旅団はなぜ…
  • 9
    「中国のビットコイン女王」が英国で有罪...押収され…
  • 10
    あなたは何型に当てはまる?「5つの睡眠タイプ」で記…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 3
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 4
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に.…
  • 5
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 6
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 7
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 8
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    数千円で買った中古PCが「宝箱」だった...起動して分…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中