最新記事

ガイドライン

ワクチン接種後もマスクは必要? ディスタンスはどうなる? 米CDCガイドライン発表

2021年3月12日(金)15時30分
青葉やまと
新型コロナウイルス・ワクチン接種 

ガイドラインによると、ワクチン接種を済ませることで、離れて住む家族に会いに行くことなどが可能になる...... REUTERS/Kevin Lamarque

<ワクチン接種が進むアメリカで、米疾病予防管理センター(CDC)が接種完了後の行動指針を発表。条件付きでマスク不要となるが、残った制限には矛盾の指摘も......>

これまで分断されていた人々が、繋がりを取り戻すきっかけとなりそうだ。米疾病予防管理センター(CDC)が3月8日に公表したガイドラインによると、ワクチンの接種を済ませることにより、離れて住む家族に会いに行くこと、孫を連れた両親が祖父母宅を訪問すること、そして恋人の家を訪ねることなどが可能になる。

ガイドラインの下では、自分自身(同居の家族がいる場合はその全員も)が接種を終えている場合、別の家庭を訪問することが可能になる。訪問先ではマスク着用もディスタンシングも必要なく、例えば夕食を共にするなど、コロナ以前のようなふつうの過ごし方が可能だ。仮に訪問先に住む人々が未接種であっても、同様の行動が可能だとしている。

例外として、訪問先に糖尿病患者など感染リスクの高い人が住んでいる場合は、これまでと同様の措置が求められる。マスクとディスタンシングに加え、換気と手洗いへの留意が引き続き必要だ。

本ガイドラインは、「ワクチン接種が完了した」人々を対象としている。すなわち、ファイザーまたはモデルナ製であれば2度の接種を済ませた人々、ジョンソン・エンド・ジョンソン製ワクチンであれば1度接種した人々を意味する。どちらの場合も、最後の接種から2週間以上が経過していることが条件となる。一般家庭を対象としたガイドラインであり、医療現場に適用するものではない。

今回は「第1弾」 慎重姿勢のこす

現段階で接種を完全に終えた人々の割合は、米人口の5%ほどだ。CDCは本ガイドラインを、「公衆衛生についての推奨事項の第1弾」と位置付けている。今後接種が浸透するにつれ、段階的に規制を緩めた指針を発表するものと見られる。

そのため現状では、公共の場や3世帯以上が集まる状況での行動には制限が残る。引き続きマスクの着用とソーシャル・ディスタンシングの確保など、コロナ対策を継続するようガイドラインは注意喚起している。また、中規模以上の集会への参加も推奨されていない。レストランでの外食やジムでの運動については感染リスクが比較的低いと位置付けられているものの、CDCは依然としてマスク着用と2メートルの距離の確保を推奨している。旅行についても、引き続き避けるべきとの立場を変えていない。

CDCが引き続き警戒を求めるのは、ワクチンがコロナ感染を完全に防ぐものではないからだ。ワクチンはこと重症化の予防という面で大きな意義を持つが、感染自体を100%防ぐものではない。高い有効率を誇るファイザー製およびモデルナ製のmRNAワクチンでも、有効率は94%ないし95%程度だ。医療アナリストのリーナ・ウェン博士は米CNNに対し、「ワクチンは失敗知らずの防御策ではないということに留意してください」とコメントしている。

ロサンゼルス・タイムズは米国立アレルギー・感染症研究所所長であるアンソニー・ファウチ博士の発言を引用し、ワクチン接種後も自覚症状を伴わない感染は理論上起こり得る、と注意を促している。博士によると、感染したがワクチンが効果を発揮して発症に至らなかった、というケースは十分に起こり得る。この場合、家族や友人を感染させてしまうリスクが残ることになる。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

アマゾン第1四半期、クラウド事業の売上高伸びが予想

ビジネス

NY外為市場=ドル上昇、円は日銀の見通し引き下げ受

ワールド

トランプ氏、ウォルツ大統領補佐官解任し国連大使に指

ビジネス

米マスターカード、1─3月期増収確保 トランプ関税
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ウクライナ戦争は終わらない──ロシアを動かす「100年…
  • 5
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 6
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 7
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 8
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 9
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 10
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 8
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中