最新記事

米中対立

バイデンが提唱する対中連携を拒否 シンガポールが中国と海上演習を実施

Singapore Holds Naval Drill With China, but U.S. Remains Top Security Partner

2021年2月26日(金)14時40分
ジョン・フォン

中国海軍とシンガポール海軍は24日、南シナ海海上で合同訓練を実施した PLA NAVY

<アメリカは安全保障上の最大のパートナーだが、同時に中国との関係も絶対に悪化させたくないシンガポール>

アメリカと中国が東南アジアで主導権争いを繰り広げるなか、シンガポールが今週24日、約5年ぶりに中国海軍との海上合同演習を実施した。

ジョー・バイデン米大統領は、中国がアジアで影響力を拡大させる現状に対抗する、いわゆる「民主主義国家の連携」を提唱している。しかしシンガポールのリー・シェンロン首相は、この考えを「冷戦型」と呼んで、参加を拒否する姿勢だ。

ビジネスを重視するシンガポールの外交政策を考慮すれば、中国「封じ込め」の国家連携に参加することは考えにくい。中国との軍事関係が今後強化される可能性はあるものの、アメリカがシンガポールにとって「安全保障上の第一のパートナー」であることは変わらないと、南洋理工大学(シンガポール)で海洋安全保障を研究するコリン・コーは語る。

24日に実施されたシンガポール海軍(RSN)と中国海軍(PLAN)の海上合同演習は、2016年9月以来、約5年ぶり。両軍の艦船が一群となって航行する画像イメージとともに両国で発表された。

中国側の発表によると、両軍の艦船はシンガポール海峡の北東の洋上に集結した。演習によって「相互の信頼を構築し、友好を深め、協力を促進した」とする艦隊士官のコメントが添えられている。

周辺諸国と演習を重ねる中国

またシンガポール国防省によると、シンガポール海軍からステルスフリゲート艦と哨戒艦、中国海軍から駆逐艦とフリゲート艦が参加して「追い越し演習」が実施された。

両軍は操縦、交信演習の後、合同の捜索・救助シミュレーションを行った。シンガポール国防省は、演習が行われた場所を「南シナ海南端の公海上」としている。

中国海軍は今月、パキスタンとも海上合同演習を実施したと今週、明らかにした。

新型コロナウイルスによるパンデミックのさなかにあった昨年、中国は近隣諸国と多くの合同軍事演習を実施している。

昨年3月にはカンボジアとの合同軍事演習「ゴールデン・ドラゴン」が実施されたが、今年は首都プノンペンが昨年10月の大規模な洪水で被害を受けたことや、新型コロナの感染が収束していないことなどから中止となった。

昨年12月には、パキスタン空軍との合同演習が砂漠地帯で、さらにロシア空軍との合同訓練が東シナ海で実施された。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

石破首相「双方の利益になるよう最大限努力」、G7で

ワールド

米中貿易枠組み合意、軍事用レアアース問題が未解決=

ワールド

独仏英、イランに核開発巡る協議を提案 中東の緊張緩

ワールド

イスラエルとイランの応酬続く、トランプ氏「紛争終結
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?...「がん」「栄養」との関係性を管理栄養士が語る
  • 2
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 3
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 4
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 5
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 6
    メーガン妃とキャサリン妃は「2人で泣き崩れていた」…
  • 7
    若者に大不評の「あの絵文字」...30代以上にはお馴染…
  • 8
    ハルキウに「ドローン」「ミサイル」「爆弾」の一斉…
  • 9
    さらばグレタよ...ガザ支援船の活動家、ガザに辿り着…
  • 10
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 5
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 6
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 7
    今こそ「古典的な」ディズニープリンセスに戻るべき…
  • 8
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 9
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 10
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中