最新記事

日本

医療「非」崩壊──医療現場が示す新型コロナ4つの新事実

2021年2月25日(木)11時20分
澤田知洋(本誌記者)

【2】軽症者には風邪薬や漢方薬の処方で十分

市販の風邪薬にも使われるアセトアミノフェンを解熱剤として処方するなど、軽症者には特別な治療を施さなくても、多くの場合は快方に向かう。

【3】高齢のコロナ患者に、「在宅」での治療という選択肢ができつつある

死亡リスクが特に高いとされる高齢のコロナ患者。訪問診療を専門としてきた医師から、いざという時に備えて、入院と在宅治療のメリット・デメリットの説明を聞くと、少なくない数の高齢者が在宅での治療を望むという。

高齢者の場合、感染の原因となる飛沫が飛散する心配が比較的少なく、また症状が悪化した場合の酸素吸入や痛みを軽減するための緩和治療も在宅で可能だ。人生の最期をどこで迎えるか、という問題と密接に関わることであり、尊厳を守るために、そして望まない治療や入院を避けるために選択肢を伝える。これも現場で広がっている動きだ。

【4】政府の分科会に「医療供給体制の専門家」がいない

意外なことに、政府の新型コロナ対策分科会には感染症の専門家などはいても、どのように非常時の医療体制を構築すべきかを考え、「医療崩壊」を防ぐための制度設計を考える専門家はいない。

非常時に必要な指揮命令系統の構築は、感染制御と両立する課題であり、今からでも整備が必要という声を聞いた。

◇ ◇ ◇

石戸氏の取材に同行して印象的だった、とある医師がこぼした逸話がある。コロナ対応に長けたその医師たちがレクチャーするまで、他の医療現場ではこれらの事柄を含む、ごく基本的なコロナの知識さえ持ち合わせていなかったという。

ウィズコロナのための材料はそろっている。だがそれが全国的に十分に活用されているとは言い難いのだ。現場の努力に報いるため、政府ができることは多いように思えてならない。

ニューズウィーク日本版 世界が尊敬する日本の小説36
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年9月16日/23日号(9月9日発売)は「世界が尊敬する日本の小説36」特集。優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国国防相、「弱肉強食」による分断回避へ世界的な結

ビジネス

首都圏マンション、8月発売戸数78%増 価格2カ月

ワールド

米FRBのSRF、今月末に市場安定の役割果たせるか

ワールド

米政権、政治暴力やヘイトスピーチ規制の大統領令準備
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、日本では定番商品「天国のようなアレ」を販売へ
  • 2
    燃え上がる「ロシア最大級の製油所」...ウクライナ軍、夜間に大規模ドローン攻撃 国境から約1300キロ
  • 3
    中国は「アメリカなしでも繁栄できる」と豪語するが...最新経済統計が示す、中国の「虚勢」の実態
  • 4
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ…
  • 5
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 6
    【クイズ】世界で最も「リラックスできる都市」が発…
  • 7
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 8
    中国山東省の住民が、「軍のミサイルが謎の物体を撃…
  • 9
    中国経済をむしばむ「内巻」現象とは?
  • 10
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 3
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサイルが命中、米政府「機密扱い」の衝撃映像が公開に
  • 4
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 5
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 6
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 7
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    「なんて無駄」「空飛ぶ宮殿...」パリス・ヒルトン、…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中