最新記事

台湾海峡

ラッド元豪首相の警告「習近平は毛沢東になりたがっており、しかもアメリカを甘く見ている」──米外交誌

Xi Wants To Emulate Mao, Thinks U.S. Will Back Down on Taiwan: Kevin Rudd

2021年2月17日(水)19時11分
ジョン・フェン

台湾の上陸防止バリケード(2009年5月18日、金門) Pichi Chuang-REUTERS

<米中両国が危機管理に失敗すれば、台湾をめぐる軍事衝突が10年以内に起こる可能性があると、ラッドは言う>

中国の習近平国家主席は、台湾との再統一を果たすことで故毛沢東国家主席並みの地位を中国共産党内で獲得することをめざしており、そのために今後10年で米軍を上回るほどの軍事力を手に入れようとするだろう、とオーストラリアのケビン・ラッド元首相は述べた

現在、ニューヨークでアジア・ソサエティー政策研究所長を務めるラッドは、外交問題専門誌フォーリン・アフェアーズの3月・4月合併号に自説を発表。これからの10年を「危険な10年」と呼んだ。

台湾はアジア太平洋地域における紛争の火種のひとつであり、2020年代にアメリカと中国が台湾をめぐって衝突する可能性は高い。ラッドによれば、中国政府指導部がアメリカを「衰退の一途をたどる」超大国と見なす一方で、中国の最高指導者である習は自信を深めている。

米国防総省はその報告書で、今後数十年にわたる中国政府の軍事的野心を明らかにした、とラッドは指摘。そこには、2027年までに人民解放軍(PLA)を米軍に匹敵する「世界クラス」の近代的な戦闘部隊に増強するという中国政府の計画があることも明記されている。

台湾政府独自のセキュリティ分析によると、PLAは、海上軍事戦略「接近阻止・領域拒否(A2/AD)」を目的とした兵器の大量使用によって台湾海峡紛争から米軍を締め出そうとしている。東シナ海と南シナ海における中国政府の領有権の主張と軍事行動は、その戦略の一環だ。

台湾海峡から米軍を排除

習をはじめ中国政府当局者は、台湾の本土への「統一」を中国の中核的な目標の一つであると唱えてきた。だが、中国指導部は「台湾問題」に対する平和的解決が過去70年のどの時点よりも可能性が低いことを知っていると、1980年代に外交官として北京に駐在したラッドは述べる。

「中国は習近平の下でより独裁的になった。厳しい国家安全保障法が施行され、野党政治家が逮捕され、メディアの自由が制限された香港を見て、台湾を『一国二制度』の形で中国に再統一するという楽観論も消え失せた」と、ラッドは指摘する。

中国は、少なくともアジア地域においては、米軍に代わる存在となり、台湾海峡において圧倒的な軍事力を誇示することで、米軍に手を引かせることに成功するかもしれない。

「アメリカの支援がなければ、台湾は降伏するか、自力で戦って負けるだろうと習は考えている」とラッドは書き、台湾を制圧するという「最も重要な目標」を達成すれば、「習は毛沢東と同じレベルにのぼりつめるだろう」と付け加えた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

アングル:日銀利上げでも円安、残る「介入カード」 

ワールド

タイ・カンボジア、24日に停戦協議 ASEAN外相

ビジネス

中国万科、債権者が社債の返済猶予延長を承認 償還延

ワールド

中国、萩生田氏の訪台に抗議
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 2
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 3
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリーズが直面した「思いがけない批判」とは?
  • 4
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 5
    週に一度のブリッジで腰痛を回避できる...椎間板を蘇…
  • 6
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 7
    【外国人材戦略】入国者の3分の2に帰国してもらい、…
  • 8
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦…
  • 9
    米空軍、嘉手納基地からロシア極東と朝鮮半島に特殊…
  • 10
    「信じられない...」何年間もネグレクトされ、「異様…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 5
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 6
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 7
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 8
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 9
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 10
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中