最新記事

イラン核問題

バイデンは戦争回避のためイラン核合意に復帰せよ(元米当局者)

Biden Must Rejoin Iran Nuclear Deal To Avoid War, Former Officials Say

2021年2月8日(月)18時43分
デービッド・ブレナン

公開書簡では、トランプの戦略は「アメリカの安全保障に深刻な悪影響を与えることが証明された」とし、そのアプローチは「外交の否定であり、内容のないけんか腰の言葉への依存」だったと分析。「米軍や地域の同盟国に対する攻撃を増加させ、中東における紛争の可能性を増大させた」と断じた。

トランプはイランに対する軍事行動の拡大を繰り返しちらつかせた。ソレイマニの暗殺の後には、イラン国内の文化財に対する広範な爆撃作戦の可能性にまで触れた(戦争犯罪に該当する行為だ)。

軍事の専門家からは以前から、イランとの間で紛争が起きる可能性が指摘されていた。そんな事態になれば大きな財政負担になるとともに、アメリカ人や一般市民が相当数、犠牲になるのも避けられない。

「イランと戦争になれば本当にひどいことになるだろう。アメリカが勝利することに疑う余地はなくとも、イランとの武力紛争は受け入れがたい負担をアメリカにもたらし、最終的にアメリカの安全保障が後退する」

「われわれは早急に路線変更しなければならない。まずは核合意への復帰からだ。政策決定に携わる人々には、イランとアメリカの双方が核合意の遵守に戻るよう、素早い行動を求めたい」

保守派が力を増すイラン国内の政治状況

バイデン政権はこれまでも、核合意は弾道ミサイルや周辺国における代理戦争といった問題もカバーする「さらに長期的で強力な」交渉の土台になるとして、復帰反対派の懸念を鎮めるよう努めてきた。

一方イラン政府は繰り返し、もともとの核合意に含まれていない事項について交渉するつもりはないとの姿勢を示している。穏健派のハサン・ロウハニ大統領は、核合意に戻るには国内の反対を乗り越えなければならない。

ロウハニの任期はこの夏に終わる。次期大統領の座に就くのは保守派(たぶん革命防衛隊出身者)になる可能性が高い。また、ロウハニ政権の前には、昨年の選挙で圧勝した保守派が多数を占める国会が立ちはだかる。保守派はロウハニや主要閣僚らの落ち度があればその責任を問おうと手ぐすねを引いている。

ソレイマニ暗殺からちょうど1年を迎えた今年1月には、ザリフ外相が、アメリカに交渉を申し出たとして保守派の怒りを買い、国会で激しい非難を浴びている。


ニューズウィーク日本版 Newsweek Exclusive 昭和100年
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年8月12日/19日号(8月5日発売)は「Newsweek Exclusive 昭和100年」特集。現代日本に息づく戦争と復興と繁栄の時代を、ニューズウィークはこう伝えた

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ゼレンスキー氏「ロシアに戦争終結の用意ない」、制裁

ワールド

金地金、関税の対象にならず=トランプ氏

ワールド

ロ・ウクライナ、和平へ「領土交換」必要 プーチン氏

ワールド

トランプ氏「どうなるか見てみよう」、中国との関税停
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:Newsweek Exclusive 昭和100年
特集:Newsweek Exclusive 昭和100年
2025年8月12日/2025年8月19日号(8/ 5発売)

現代日本に息づく戦争と復興と繁栄の時代を、ニューズウィークはこう伝えた

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    産油国イラクで、農家が太陽光発電パネルを続々導入する切実な理由
  • 2
    「触ったらどうなるか...」列車をストップさせ、乗客を30分間も足止めした「予想外の犯人」にネット騒然
  • 3
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた「復讐の技術」とは
  • 4
    イラッとすることを言われたとき、「本当に頭のいい…
  • 5
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 6
    なぜ「あなたの筋トレ」は伸び悩んでいるのか?...筋…
  • 7
    「靴を脱いでください」と言われ続けて100億足...ア…
  • 8
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医…
  • 9
    【クイズ】次のうち、「軍用機の保有数」で世界トッ…
  • 10
    「古い火力発電所をデータセンターに転換」構想がWin…
  • 1
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 2
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大ベビー」の姿にSNS震撼「ほぼ幼児では?」
  • 3
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を呼びかけ ライオンのエサに
  • 4
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 5
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた…
  • 6
    【クイズ】次のうち、「軍用機の保有数」で世界トッ…
  • 7
    職場のメンタル不調の9割を占める「適応障害」とは何…
  • 8
    イラッとすることを言われたとき、「本当に頭のいい…
  • 9
    こんなにも違った...「本物のスター・ウォーズ」をデ…
  • 10
    これぞ「天才の発想」...スーツケース片手に長い階段…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 7
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が…
  • 8
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 9
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた…
  • 10
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中