最新記事

イラン核問題

バイデンは戦争回避のためイラン核合意に復帰せよ(元米当局者)

Biden Must Rejoin Iran Nuclear Deal To Avoid War, Former Officials Say

2021年2月8日(月)18時43分
デービッド・ブレナン

イランの著名な核科学者が暗殺されたことで燃え上がった反米デモ(11月28日、テヘラン)Majid Asgaripour/WANA (West Asia News Agency)/REUTERS

<「アメリカにとって最大の脅威はイランの核武装。その阻止に向けた最善の手段」が核合意への復帰だと、元当局者らが主張>

米安全保障・外交分野の元当局者41人が、ジョー・バイデン大統領にイラク核合意への早期復帰を求める公開書簡を連名で送った。復帰しなければ新たな戦争に道を開きかねず、アメリカにとって大きな負担が生じるという。

核合意はバイデンが副大統領を務めたオバマ政権下の2015年に結ばれたもので、バイデンはもともと復帰には前向きな姿勢だ。ただ現在は、復帰の条件でイランと折り合わず非難の応酬が続いている。

ドナルド・トランプ前米大統領が2018年に核合意から離脱して以降、イランも合意の遵守をやめてしまった。またイランは、革命防衛隊のガセム・ソレイマニ司令官や核兵器開発を主導していた核科学者モフセン・ファクリザデの暗殺、そしてアメリカが新たに科した経済制裁に対する報復として、核開発を推し進めてきた。

バイデンは、アメリカが制裁を緩和し核合意に復帰するより先にイランが核開発を縮小すべきだと主張。だがイラン政府は、アメリカが先に制裁を緩和するよう求めている。

アメリカの保守派からは核合意復帰に反対する声がさかんに上がっているが、その背後には、イランの核開発を自国の存在に関わる受け入れがたい脅威と捉えるイスラエルや湾岸諸国の存在がある。イランが弾道ミサイルの配備を強化していることや、周辺国において代理戦争を行っていることも問題視されている。

トランプ政権のアプローチを全否定

だが今回の公開書簡によれば、核合意は深刻な紛争のきっかけになりかねないイランの核武装を防ぐ唯一の手段だという。

「われわれはイランがアメリカの安全保障に突きつけている脅威についてはっきり認識している。最も大きな脅威となるのは、イランの核兵器開発だろう。イランの核武装を防ぐことこそ、アメリカの対イラン政策の最重要目標でなければならない。そして核合意は今も、目標達成に向けた最善の道である」

トランプは核合意は抜け穴だらけだ、制裁強化によりもっと厳しい核合意を作ると息巻いたが、トランプ政権の制裁も外交的手段も軍事行動もその役には立たなかった。イランの指導部はトランプの「最大限の圧力」作戦に勝利したと気勢を上げた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

午後3時のドルは144円半ばで膠着、値幅60銭 ド

ワールド

IMF、25年サウジ成長率予想3.5%に引き上げ 

ワールド

インド、中国に国境問題の「恒久的解決」呼びかけ 国

ビジネス

インド、マルチ・スズキの要求受け小型車の燃費規制緩
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本のCEO
特集:世界が尊敬する日本のCEO
2025年7月 1日号(6/24発売)

不屈のIT投資家、観光ニッポンの牽引役、アパレルの覇者......その哲学と発想と行動力で輝く日本の経営者たち

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門家が語る戦略爆撃機の「内側」と「実力」
  • 2
    サブリナ・カーペンター、扇情的な衣装で「男性に奉仕する」ポーズ...アルバム写真に「女性蔑視」批判
  • 3
    韓国が「養子輸出大国だった」という不都合すぎる事実...ただの迷子ですら勝手に海外の養子に
  • 4
    定年後に「やらなくていいこと」5選──お金・人間関係…
  • 5
    【クイズ】北大で国内初確認か...世界で最も危険な植…
  • 6
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 7
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝…
  • 8
    伊藤博文を暗殺した安重根が主人公の『ハルビン』は…
  • 9
    富裕層が「流出する国」、中国を抜いた1位は...「金…
  • 10
    単なる「スシ・ビール」を超えた...「賛否分かれる」…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の「緊迫映像」
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 6
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 7
    定年後に「やらなくていいこと」5選──お金・人間関係…
  • 8
    飛行機内で「最悪の行為」をしている女性客...「あり…
  • 9
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 10
    サブリナ・カーペンター、扇情的な衣装で「男性に奉…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊の瞬間を捉えた「恐怖の映像」に広がる波紋
  • 4
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測…
  • 5
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の…
  • 6
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 7
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 8
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 9
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 10
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中