最新記事

ワクチン

世界でワクチン接種が進むなか、「免疫パスポート」は有効?の議論が再燃

2021年1月29日(金)17時30分
松岡由希子

新型コロナウイルスの免疫パスポートのイメージ...... Tanaonte-iStock

<史上最大規模の世界的なワクチン接種がすすめられるなか、新型コロナウイルスへの免疫を持つ人に「お墨付き」を与え、行動制限を解除する「免疫獲得証明書(免疫パスポート)」の是非が再び議論の的となっている...... >

世界初の新型コロナウイルスワクチンの集団接種が2020年12月8日に英国で開始されて以来、米国、ドイツ、フランス、シンガポールなど、世界60カ国で8640万回以上の接種が完了している(2021年1月28日時点)。

史上最大規模の世界的なワクチン接種がすすめられるなか、新型コロナウイルスへの免疫を持つ人に「お墨付き」を与え、行動制限を解除する「免疫獲得証明書(免疫パスポート)」の是非が再び議論の的となっている。

検疫措置を免除し、国境を超えた往来を後押しするのが狙い

免疫獲得証明書」は、2020年春、新型コロナウイルスの急速な感染拡大により世界各国で都市封鎖の措置が講じられた際、出口戦略のひとつとして提案された。新型コロナウイルス感染症から回復して免疫を獲得した人から優先的に社会経済活動に復帰させるというアイデアだ。

北欧アイスランドでは、2021年1月から、新型コロナウイルスワクチンを2回接種した国民に対して「ワクチン接種証明書」を発行している。渡航先で「ワクチン接種証明書」を提示することで検疫措置を免除させるなど、国境を超えた往来を後押しするのが狙いだ。

世界最速のペースで集団接種をすすめているイスラエルでも、新型コロナウイルスワクチンを2回接種した人と新型コロナウイルス感染症から回復した人に「グリーンパスポート」と呼ばれるワクチン接種証明書を発行し、イベントの参加や外食、海外への渡航などを認める案を検討している。

観光立国では、今夏のバカンスシーズンに向けて、感染拡大のリスクを抑制しながら、多くの観光客を迎えるための方策を模索している。ギリシアのキリアコス・ミツォタキス首相は、2021年1月、欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長に、欧州連合(EU)全体でワクチン接種証明書を導入するよう促す書簡を送った。

スイスの非営利団体「コモンズプロジェクト」や世界経済フォーラムらは、個人のプライバシーを保護しながら、渡航先の検疫で必要な健康データを共有できる世界共通の電子証明書「コモンパス」を共同で開発している。健康状態申告書やPCR検査証明書、ワクチンの接種履歴などのデータを記録できる仕組みだ。

World Economic Forum
今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

伊プラダ、さらなる買収検討の可能性 アルマーニに関

ワールド

トランプ氏、マムダニ次期NY市長と21日会談 ホワ

ワールド

マクロスコープ:日中関係悪化、広がるレアアース懸念

ワールド

アジアのハイテク株急伸、エヌビディア決算でAIバブ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 2
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 3
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、完成した「信じられない」大失敗ヘアにSNS爆笑
  • 4
    ロシアはすでに戦争準備段階――ポーランド軍トップが…
  • 5
    アメリカの雇用低迷と景気の関係が変化した可能性
  • 6
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 7
    「これは侮辱だ」ディズニー、生成AI使用の「衝撃宣…
  • 8
    衛星画像が捉えた中国の「侵攻部隊」
  • 9
    ホワイトカラー志望への偏りが人手不足をより深刻化…
  • 10
    【クイズ】中国からの融資を「最も多く」受けている…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 4
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 5
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 6
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 7
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 8
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 9
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 10
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中