最新記事

生物

ヘビの「第5の移動方式」が発見される──木を登るための「投げ縄」方式

2021年1月13日(水)18時00分
松岡由希子

ヘビの移動方式は4つと思われていたが...... Cell Press-YouTube

<ヘビの移動方式は、体を左右にくねらせて進む「蛇行」、腹部を前後に動かしてまっすぐ進む「直進」など4つの方式だけではなかった......>

四肢を持たないヘビの移動方式は、体を左右にくねらせて進む「蛇行」、腹部を前後に動かしてまっすぐ進む「直進」、体を曲げて横方向に進む「横ばい」、体の伸び縮みを繰り返しながら進む「コンセルティーナ(蛇腹楽器)」という4つに分類されてきた。しかしこのほど、ヘビの「第5の移動方式」が確認された。

「投げ縄移動(ラッソ・ロコモーション)」と名付けられた

米コロラド州立大学とシンシナティ大学の研究チームは、既知の移動方式よりもはるかに大きく平滑な円柱を昇れるヘビの新たな移動方式を発見し、2021年1月11日、学術雑誌「カレントバイオロジー」で研究論文を発表した。この新しい移動方式は、投げ縄のような姿勢から「投げ縄移動(ラッソ・ロコモーション)」と名付けられている。

ヘビの投げ縄移動は、研究論文の共同著者でコロラド州立大学のジュリー・サヴェージ教授がグアムの固有種「カラスモドキ」の巣を保護するプロジェクトで偶然発見した。

giphy.gif

グアム島の固有種の鳥の巣を保護するプロジェクトで発見

豪州やパプアニューギニアを原産地とする樹上性のヘビ「ミナミオオガシラ(南大頭)」は、1940年代の後半から1950年代初頭にグアムに持ち込まれた外来種だ。その後、グアムで鳥の個体数が減少しはじめ、1980年代の研究によって、ミナミオオガシラがその原因であると確認された。現在、グアムの固有種の鳥のほとんどが姿を消し、カラスモドキを含め2種がわずかに残っている。

このプロジェクトでは、ミナミオオガシラがカラスモドキの巣箱にのぼってこないよう、他のヘビやアライグマの侵入防止に用いられてきた長さ3フィート(約91センチ)の金属のバッフルを設置したが、ミナミオオガシラの侵入防止にはそれほど効果がなかった。

4時間にわたって暗視カメラで撮影された動画を研究チームが確認したところ、体長138センチのミナミオオガシラが投げ縄のようになり、直径20センチの円柱にからまって体を小刻みに動かす様子がみられた。胴を尾で固定し、進行方向に頭を向けて円柱を昇っていたという。

他の移動方式に比べて、体力を要する動作

投げ縄の輪を用いることで1カ所のみをつかむ投げ縄移動は、体を横に曲げて少なくとも2カ所をつかむコンセルティーナ(蛇腹楽器)移動に比べ、2倍以上も大きい平滑な円柱をのぼれるが、移動速度が遅く、頻繁に休憩したことから、他の移動方式に比べて、体力を要する動作であると推測される。

サヴェージ教授は、天敵であるミナミオオガシラの新たな移動方式を発見した一連の研究成果について「カラスモドキなど、絶滅が危惧される鳥類の個体数の回復にも役立てられるだろう」と評価している。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

アングル:ドローン大量投入に活路、ロシアの攻勢に耐

ビジネス

米国株式市場=S&P・ナスダックほぼ変わらず、トラ

ワールド

トランプ氏、ニューズ・コープやWSJ記者らを提訴 

ビジネス

IMF、世界経済見通し下振れリスク優勢 貿易摩擦が
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:AIの6原則
特集:AIの6原則
2025年7月22日号(7/15発売)

加速度的に普及する人工知能に見えた「限界」。仕事・学習で最適化する6つのルールとは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    「細身パンツ」はもう古い...メンズファッションは「ゆったり系」がトレンドに
  • 3
    「想像を絶する」現場から救出された164匹のシュナウザーたち
  • 4
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が…
  • 5
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長…
  • 6
    「二次制裁」措置により「ロシアと取引継続なら大打…
  • 7
    「どの面下げて...?」ディズニーランドで遊ぶバンス…
  • 8
    ロシアの労働人口減少問題は、「お手上げ状態」と人…
  • 9
    「異常な出生率...」先進国なのになぜ? イスラエル…
  • 10
    アフリカ出身のフランス人歌手「アヤ・ナカムラ」が…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 3
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 4
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長…
  • 5
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首…
  • 6
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別…
  • 7
    アメリカで「地熱発電革命」が起きている...来年夏に…
  • 8
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 9
    ネグレクトされ再び施設へ戻された14歳のチワワ、最…
  • 10
    「二度とやるな!」イタリア旅行中の米女性の「パス…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 4
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測…
  • 5
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 6
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 9
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 10
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中