最新記事

動物

新型コロナに感染したミンクが脱走、野生化して感染を拡大させるおそれ

2020年12月2日(水)16時50分
松岡由希子

デンマークの飼育場では、ミンクがたびたび脱走し野生化している...... Steven Flannigan-iStock

<デンマーク政府は、国内で飼育されているすべてのミンクを殺処分する方針を示したが、ミンクの脱走によって、新型コロナウイルスが野生動物に広がるリスクが懸念されている...... >

デンマークでは、2020年11月、家畜のミンクからヒトに感染した新型コロナウイルスの変異株が確認された。この変異株には新型コロナウイルスの抗体をつくる能力を弱める作用があることから、デンマーク政府は、国内で飼育されているすべてのミンクを殺処分する方針を示し、デンマーク議会もこれを支持している。

殺処分の対象となるのは最大1700万匹で、11月末時点で1000万匹が殺処分された一方、残りの500万〜700万匹は販売されるとみられる。

新型コロナに感染した100〜150匹のミンクが野生化する可能性がある

飼育場では、ミンクがたびたび脱走し、野生化している。デンマーク獣医食糧衛生局のステン・モーテンセン博士は、英紙ガーディアンの取材に対し、「ミンクは外来生物であり、狩猟家が毎年、数千匹の野生のミンクを捕らえていることから、デンマークでは毎年、2000〜3000匹のミンクが飼育場から脱走していることがわかっている」と述べている。

デンマークでは、ミンクの脱走によって、新型コロナウイルスが野生動物に広がるリスクが懸念されている。モーテンセン博士によれば、飼育場から脱走したミンクの約5%が新型コロナウイルスに感染しているおそれがあるという。

つまり、新型コロナウイルスに感染した100〜150匹のミンクが野生化する可能性があるわけだ。ミンクは、通常、新型コロナウイルス感染症を発症しても生命にかかわることはなく、やがて回復する。数日間、呼吸困難になるケースもあるが、ほとんどは回復して免疫を獲得する。

ウイルスが一度、野生に侵入すると、制御することは極めて困難になる

ミンクは単独行動をする動物であるため、脱走したミンクが他の動物に新型コロナウイルスを感染させるリスクは低いが、新型コロナウイルスに感染したミンクを食べたり、その糞便に接触することで、フェレット、タヌキなどの野生動物やネコなどのペットが感染する可能性はある。

新型コロナウイルスが野生動物に広がるリスクは、他国の学者からも指摘されている。英ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)の微生物学者ジョアン・サンティーニ教授は、「ウイルスが一度、野生に侵入すると、野生動物の間で感染が広がり、やがてヒトに戻ってくるのを制御することは、極めて困難になる」と警鐘を鳴らす。ウイルスは、野生に侵入することで宿主範囲を広げ、通常であれば感染しえない他の種の動物にまで感染するおそれがある。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

イスラエル、イラン最大の石油化学施設を攻撃 国防相

ワールド

茂木氏がイラン外相と電話会談、停戦提案や首脳会談な

ビジネス

イラン戦争、インフレと金利上昇招く可能性 JPモル

ワールド

イラン外務省報道官、停戦案への回答を仲介国に伝達
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本企業に迫る サステナビリティ新基準
特集:日本企業に迫る サステナビリティ新基準
2026年4月 7日号(3/31発売)

国際基準の情報開示や多様な認証制度──本当の「持続可能性」が問われる時代へ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの疑問
  • 2
    「考えの浅い親」が子どもに言ってしまっている口ぐせ・ワースト1
  • 3
    【銘柄】イラン情勢で一躍脚光の「NEC」 防衛・宇宙の2大テーマでAI懸念を払拭できるか
  • 4
    「高市しぐさ」の問題は「媚び」だけか?...異形の「…
  • 5
    地面にくねくねと伸びる「奇妙な筋」の正体は? 飛行…
  • 6
    トランプ、イランに合意期限「米東部時間6日午前10時…
  • 7
    イラン戦争の現実...アメリカとイスラエル、見え始め…
  • 8
    攻撃開始日も知っていた?──イラン戦争を巡る巨額取引…
  • 9
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅…
  • 10
    なぜイスラエルは対イラン戦争を支持するのか...「イ…
  • 1
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 2
    イラン戦争の現実...アメリカとイスラエル、見え始めた限界
  • 3
    攻撃開始日も知っていた?──イラン戦争を巡る巨額取引、インサイダー疑惑が市場に波紋
  • 4
    「考えの浅い親」が子どもに言ってしまっている口ぐ…
  • 5
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの…
  • 6
    なぜイスラエルは対イラン戦争を支持するのか...「イ…
  • 7
    【銘柄】イラン情勢で一躍脚光の「NEC」 防衛・宇宙…
  • 8
    中国がイラン戦争最大の被害者? 習近平の誤った経…
  • 9
    年金は何歳からもらうのが得? 男女で違う「最適な受…
  • 10
    「高市しぐさ」の問題は「媚び」だけか?...異形の「…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 4
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...…
  • 5
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 6
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 7
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 8
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 9
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 10
    メーガン妃、娘リリベット王女との「お手伝い姿」公…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中