最新記事

感染症対策

英、ファイザーのコロナワクチンの接種開始 一番手は90歳女性

2020年12月9日(水)08時43分

英国で米ファイザーが独ビオンテックと共同開発した新型コロナウイルスワクチンの接種が始まった。写真はファイザーとビオンテックが開発したワクチン。提供写真(2020年 ロイター/ BioNTech SE)

英国で8日、米ファイザーが独ビオンテックと共同開発した新型コロナウイルスワクチンの接種が始まった。90歳の女性のマーガレット・キーナンさんが、治験以外で世界で初めて同ワクチンの接種を受けた。

キーナンさんは8日0631GMT(日本時間午後3時31分)に、英中部コベントリーの地元の病院で接種を受けた。

キーナンさんは「時期は早いが最高の誕生日プレゼントをいただいた。今年は大半の時期を1人で過ごしてきたが、ようやく新年を家族や友人と過ごすことができる」と喜びをあらわにした。

新型コロナワクチンの一般国民への接種を開始するのは、西側諸国では英国が初めて。英国はコロナによる死者が6万1000人超と欧州で最悪の状況に見舞われている。

ワクチン接種は2回に分けて受けるが、1回目の接種後、2回目の接種を受けるまで3週間、間を置く必要がある。また、予防接種によってウイルスの感染が抑えられるという保証もない。

ジョンソン首相は「ワクチンが徐々に大きな違いをもたらすことは間違いないが、『徐々に』という点を強調しておきたい。われわれはまだウイルスを根絶していない」と述べ、注意を促した。

ハンコック保健相は、ワクチン接種を開始したこの日を「Vデー」と名付け、年末までに何百万人もの人々がワクチン接種を受けられると表明。同時に、最も脆弱な人々への接種を優先し、少なくとも春までは社会的距離の確保といった予防対策を徹底してほしいと呼び掛けた。

英国はこれまでに2000万人分のファイザー製ワクチンを発注。介護施設の住民や介護者、80歳以上の高齢者、一部の医療従事者などを対象に、約80万回分のワクチンが最初の1週間で提供される予定だ。

英国の面積は比較的小さくインフラも整っているが、ファイザー製ワクチンは通常の冷蔵庫で5日間しか保存できず、ワクチンを配布する際に生ずる物流上の課題が難点となる。

一方、英製薬大手アストラゼネカとオックスフォード大学が共同開発したワクチンは、安価であることに加えて通常の冷蔵庫の温度で輸送できることから、発展途上国中心に実用化への期待が高まっている。同ワクチンは、後期臨床試験(治験)でこれまでに70%程度の予防効果が確認された。政府の首席科学顧問を務めるパトリック・バランス氏は、保存や配布が容易なワクチンが重要な役割を果たすと指摘した。

こうした中、世界保健機関(WHO)の幹部であるマーガレット・ハリス氏は、コロナ感染の新たな急増を抑えることができるのは公衆衛生措置であってワクチンではないと強調。「ワクチンは素晴らしい手段であり非常に役立つだろうが、ある種の免疫バリアを提供するという意味でのワクチン効果はまだまだだ」と述べた。

*内容を追加しました。



[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2020トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


【話題の記事】
・【調査報道】中国の「米大統領選」工作活動を暴く
・巨大クルーズ船の密室で横行する性暴力


ニューズウィーク日本版 日本人と参政党
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年10月21日号(10月15日発売)は「日本人と参政党」特集。怒れる日本が生んだ参政党現象の源泉にルポで迫る。[PLUS]神谷宗弊インタビュー

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

アサヒGHD、決算発表を延期 サイバー攻撃によるシ

ビジネス

高島屋、営業益予想を上方修正 Jフロントは免税売上

ビジネス

日経平均は大幅続落、米中対立警戒で一時1500円超

ビジネス

高島屋、営業益予想を上方修正 Jフロントは免税売上
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:中国EVと未来戦争
特集:中国EVと未来戦争
2025年10月14日号(10/ 7発売)

バッテリーやセンサーなど電気自動車の技術で今や世界をリードする中国が、戦争でもアメリカに勝つ日

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以外の「2つの隠れた要因」が代謝を狂わせていた
  • 2
    中国人が便利な「調理済み食品」を嫌うトホホな理由とは?
  • 3
    メーガン妃の動画が「無神経」すぎる...ダイアナ妃をめぐる大論争に発展
  • 4
    車道を一人「さまよう男児」、発見した運転手の「勇…
  • 5
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 6
    筋肉が目覚める「6つの動作」とは?...スピードを制…
  • 7
    連立離脱の公明党が高市自民党に感じた「かつてない…
  • 8
    あなたの言葉遣い、「AI語」になっていませんか?...…
  • 9
    1歳の息子の様子が「何かおかしい...」 母親が動画を…
  • 10
    ウィリアムとキャサリン、結婚前の「最高すぎる関係…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな飼い主との「イケイケなダンス」姿に涙と感動の声
  • 3
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以外の「2つの隠れた要因」が代謝を狂わせていた
  • 4
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
  • 5
    中国人が便利な「調理済み食品」を嫌うトホホな理由…
  • 6
    ロシア「影の船団」が動く──拿捕されたタンカーが示…
  • 7
    ベゾス妻 vs C・ロナウド婚約者、バチバチ「指輪対決…
  • 8
    時代に逆行するトランプのエネルギー政策が、アメリ…
  • 9
    ウクライナの英雄、ロシアの難敵──アゾフ旅団はなぜ…
  • 10
    トイレ練習中の2歳の娘が「被疑者」に...検察官の女…
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 3
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 4
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に.…
  • 5
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 6
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 7
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 8
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    数千円で買った中古PCが「宝箱」だった...起動して分…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中