最新記事

免疫

「新型コロナウイルスの免疫は8ヶ月持続する」との研究結果

2020年12月25日(金)16時30分
松岡由希子

「新型コロナウイルス感染症から回復した人は最大8ヶ月にわたって獲得免疫を保持している」 REUTERS/Ivan Alvarado

<「新型コロナウイルス感染症から回復した人は最大8ヶ月にわたって獲得免疫を保持している」ことを示す研究結果が明らかとなった......>

「獲得免疫」とは、感染した病原体を特異的に判別して記憶し、再び曝露したときに効果的にこれを排除する働きである。「新型コロナウイルスに感染した後、獲得免疫がどのくらいの期間、持続するのか」については、まだ完全に解明されていないが、このほど、「新型コロナウイルス感染症から回復した人は最大8ヶ月にわたって獲得免疫を保持している」ことを示す研究結果が明らかとなった。

新型コロナの感染から242日後も保持されていた

豪モナシュ大学らの研究チームは、2020年3月から9月までに新型コロナウイルスに感染した25名を対象として、発症4日後から242日後に採取した血液サンプル計36件を分析した。

2020年12月22日に免疫学専門学術雑誌「サイエンス・イミュノロジー」で発表された研究論文によると、新型コロナウイルス抗体価は発症から20日以降に減少し始めたものの、新型コロナウイルスによる感染を記憶する「メモリーB細胞」は、発症から150日後まで上昇し、発症から242日後も保持されていた。

新型コロナウイルスに感染すると、その「スパイクタンパク質受容体結合ドメイン」と「ヌクレオカプシドタンパク質」を、免疫系の「メモリーB細胞」が記憶する。新型コロナウイルスに再び曝露して、新型コロナウイルスが体内に侵入しようとすると、「メモリーB細胞」の免疫記憶により、防御抗体を素早く産出し、新型コロナウイルスの感染から防御するわけだ。

ワクチンの長期にわたって予防効果が期待できる

「メモリーB細胞」が長期間にわたって保持されることを示したこの研究結果は、ワクチンの有効性にも希望を与えるものといえる。研究論文の責任著者でモナシュ大学のメノ・ファン=ゼルム准教授は「新型コロナウイルスワクチンが開発されれば、長期にわたって感染への予防効果が期待できるだろう」と期待を寄せている。


COVID-19 immunity can last at least eight months after infection, researchers discover | ABC News

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

東京海上、クマ侵入による施設の損失・対策費用補償の

ワールド

新興国中銀が金購入拡大、G7による凍結資産活用の動

ワールド

米政権、「第三世界諸国」からの移民を恒久的に停止へ

ワールド

中国万科をS&Pが格下げ、元建て社債は過去最安値に
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ガザの叫びを聞け
特集:ガザの叫びを聞け
2025年12月 2日号(11/26発売)

「天井なき監獄」を生きるパレスチナ自治区ガザの若者たちが世界に向けて発信した10年の記録

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 2
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファール勢ぞろい ウクライナ空軍は戦闘機の「見本市」状態
  • 3
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果のある「食べ物」はどれ?
  • 4
    【寝耳に水】ヘンリー王子&メーガン妃が「大焦り」…
  • 5
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 6
    がん患者の歯のX線画像に映った「真っ黒な空洞」...…
  • 7
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    「攻めの一着すぎ?」 国歌パフォーマンスの「強めコ…
  • 10
    7歳の娘の「スマホの検索履歴」で見つかった「衝撃の…
  • 1
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 2
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 3
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やってはいけない「3つの行動」とは?【国際研究チーム】
  • 4
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 5
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 6
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 7
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 8
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 9
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベー…
  • 10
    老後資金は「ためる」より「使う」へ──50代からの後…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中