最新記事

米中関係

トランプ「最後の狂気」に身構える中国

China Preparing for Trump's 'Final Madness' Before Biden, State Media Says

2020年11月18日(水)16時20分
ジョン・フェン

武力で対抗することも辞さないという習近平 Carlos Garcia RawlinsーREUTERS

<いまだに大統領選での敗北を認めていないトランプは、中国の軍需企業を禁じるなどぎりぎりまで対中強硬路線を貫く勢い。超えてはならない一線を超えようとした場合、中国は準備ができている>

バイデン政権への移行まで2カ月あまりと迫る今、中国政府は、ドナルド・トランプ米大統領による「最後の狂気」に備えていると、中国国営メディアが11月16日付で伝えた。

トランプはホワイトハウスで過ごす最後の10週間を、次期大統領に就任が予定されているジョー・バイデンとその政権チームに対する政治的な罠を仕掛け、米中関係をさらに悪化させることに費やすだろうと、中国共産党の機関紙「人民日報」の姉妹紙「環球時報」は16日付の記事で主張した。

環球時報は、中国共産党の中でも最もタカ派的な見解を代表するメディアだ。トランプが11月12日に行った「反中国」の大統領令への署名を、「トランプ政権が行った最後の狂気の沙汰」と呼んで非難した。

これは、中国の軍需企業31社に対するアメリカ人の投資を禁じて中国軍の近代化を阻止しようとするもの。トランプの任期切れぎりぎりの2021年1月11日に発効する。対象には華為技術(ファーウェイ)や中国電信(チャイナテレコム)も含まれる。

国営メディアの環球時報はこれまでもマイク・ポンペオ米国務長官を繰り返し批判してきたが、同長官による「台湾は中国の一部ではあったことはない」との発言についても、退陣が迫るトランプ政権による「狂気」の一例だと糾弾している。

対中強硬姿勢がレガシー

トランプは、11月に一般投票が行われた今回の大統領選挙の結果を認めていない。中国政府に対する厳しい措置を、トランプは自らの「政治的レガシー」のひとつと捉えていると、環球時報は述べた。

環球時報はさらに、トランプは次期民主党政権の「妨害」を狙って、バイデンの前に「さまざまな障害を設けている」と指摘した。前副大統領のバイデンが現行のトランプ政権の政策を、「中国に対して弱腰だ」との印象を与えずに覆すのは難しくなる、と同紙は主張している。

トランプの任期が終わりに近づく中、アメリカが南シナ海において、特に台湾に関する問題に関して「最後のヒステリー」を起こす事態に中国政府は備えていると、国営メディアの環球時報は述べた。

台湾の蔡英文総統はこれまで、トランプ政権から前例のない手厚い支援を享受してきた。閣僚級の政権幹部による初の公式訪問や、数十億ドル規模の武器売却契約などだ。

政権交代までの今後2カ月の間に、台湾海峡の緊張が大幅にエスカレートすることは考えにくい。しかし、中国共産党のメディアであり、習近平国家主席の見解を反映していると見られる環球時報は、米台政府のさらなる「結託」に直面した場合には、中国は軍事的な行動を起こすことも辞さないと警告した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

豪首相、12日から訪中 中国はFTA見直しに言及

ビジネス

ドイツ輸出、5月は予想以上の減少 米国向けが2カ月

ビジネス

旧村上ファンド系、フジ・メディアHD株を買い増し 

ワールド

赤沢再生相、米商務長官と電話協議 「自動車合意なけ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:大森元貴「言葉の力」
特集:大森元貴「言葉の力」
2025年7月15日号(7/ 8発売)

時代を映すアーティスト・大森元貴の「言葉の力」の源泉にロングインタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に...「曾祖母エリザベス女王の生き写し」
  • 2
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 3
    「飛行機内が臭い...」 原因はまさかの「座席の下」だった...異臭の正体にネット衝撃
  • 4
    アリ駆除用の「毒餌」に、アリが意外な方法で「反抗…
  • 5
    「ヒラリーに似すぎ」なトランプ像...ディズニー・ワ…
  • 6
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコ…
  • 7
    米テキサス州洪水「大規模災害宣言」...被害の陰に「…
  • 8
    為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 …
  • 9
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸…
  • 10
    中国は台湾侵攻でロシアと連携する。習の一声でプー…
  • 1
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 2
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコに1400万人が注目
  • 3
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸せ映像に「それどころじゃない光景」が映り込んでしまう
  • 4
    【クイズ】「宗教を捨てる人」が最も多い宗教はどれ?
  • 5
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 6
    為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 …
  • 7
    「本物の強さは、股関節と脚に宿る」...伝説の「元囚…
  • 8
    「飛行機内が臭い...」 原因はまさかの「座席の下」…
  • 9
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に..…
  • 10
    アリ駆除用の「毒餌」に、アリが意外な方法で「反抗…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 4
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 5
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 6
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 7
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 8
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 9
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 10
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中