最新記事

世論調査

大統領選でまた大外れした世論調査はもういらない?

THE POLLS WERE USELESS

2020年11月10日(火)19時20分
ジョシュア・キーティング

シルバー(中)率いるファイブサーティーエイトは世論調査分析の代表格 ANDREW TOTH/GETTY IMAGES

<客観性をうたうデータジャーナリズムの前回大統領選に続く予想ミスで明らかになったこと>

20201117issue_cover200.jpg「選挙当日の夜は最高」。米大統領選が行われた11月3日の夜遅く、CNNの政治アナリスト、ハリー・エンテンはそうツイートした。

ニューヨーク・タイムズ(NYT)のデータジャーナリズムサービス「アップショット」のネート・コーン記者は、テレビドラマ『ツイン・ピークス』の有名なせりふをもじって「ダイアン、前代未聞の事態だ」とツイートした。リアルタイムで優勢度を示す同サイトの針がジョージア州で、共和党のドナルド・トランプ大統領から民主党のジョー・バイデン前副大統領に振れた瞬間のことだ。

少なくとも楽しんでいる者はいた。だがスポーツニュースの世界を席巻するアナリティクスと、データジャーナリズムの親密な関係がこれほど露骨に、またはこれほど不愉快な形で現れたことはなかった。彼らが喧伝するデータ分析が、これほど「使えない」と思えたことも......。

11月3日午後10時15分、民主党側の期待に反して接戦の様相を呈していることが明らかになるなか、世論調査分析サイト「ファイブサーティーエイト・ドットコム」創設者のネート・シルバーは、2016年大統領選と同様のミスを犯したとの非難を受けて、「全般的にかなりばかげた物語になってしまっている」とツイッター上で反論した。

シルバーの発言は、彼らデータ主導型政治分析派のいわばマニフェストと見なすことができる。政治評論家や従来型のジャーナリストは、情勢をめぐる未検証の「物語」にとらわれ、有権者の語りに依存している。だが感情を交えずに世論調査データを処理すれば、選挙の真の姿が見えてくるというのが信条だ、と。

しかし今年の大統領選は、世論調査分析自体が「物語」であることを露呈している。世論調査分析は物事を明らかにすると同時に、見えなくすることもあるのだ。

データジャーナリズムの精度は分析対象のデータの精度で決まる。既に明確なように、世論調査は今回もいくつかの点で大きく外れた。

例えば、ウィスコンシン州だ。大統領選の1~2週間前の時点で、バイデンの支持率はNYTの世論調査で11ポイント、ワシントン・ポストの調査ではトランプを17ポイント上回り、アップショットの最終的な世論調査平均値では10ポイント差をつけていた。だがふたを開ければ、同州は激戦州に。バイデンの僅差勝利が確実になったのは、選挙翌日の午後に入ってからだった。

どちらが勝っても「正しい」

2016年大統領選で大外れしたアップショットは今回選挙の直前、フロリダ州ではバイデンが勝利するか、引き分け状態に持ち込むとの予想も発表した。ところが、3ポイント以上の差をつけて勝利したのはトランプだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:ホームレス化の危機にAIが救いの手、米自

ワールド

アングル:印総選挙、LGBTQ活動家は失望 同性婚

ワールド

北朝鮮、黄海でミサイル発射実験=KCNA

ビジネス

根強いインフレ、金融安定への主要リスク=FRB半期
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ公式」とは?...順番に当てはめるだけで論理的な文章に

  • 3

    「韓国少子化のなぜ?」失業率2.7%、ジニ係数は0.32、経済状況が悪くないのに深刻さを増す背景

  • 4

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負け…

  • 5

    止まらぬ金価格の史上最高値の裏側に「中国のドル離…

  • 6

    便利なキャッシュレス社会で、忘れられていること

  • 7

    休日に全く食事を取らない(取れない)人が過去25年…

  • 8

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 9

    毎日どこで何してる? 首輪のカメラが記録した猫目…

  • 10

    中ロ「無限の協力関係」のウラで、中国の密かな侵略…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人機やミサイルとイスラエルの「アイアンドーム」が乱れ飛んだ中東の夜間映像

  • 4

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 7

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 8

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 9

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 10

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中