最新記事

事件

フィリピン、ベテランジャーナリストが銃撃受け即死 ドゥテルテ政権下で19人目

2020年11月13日(金)17時35分
大塚智彦(PanAsiaNews)

正体不明の男性らによる銃撃を受け死亡したジャーナリスト、バージリオ・マガネス氏 GMA News / YouTube

<麻薬犯罪に対して超法規的殺人など強硬な対策をとるドゥテルテ。その政治手法を批判するメディア関係者に身の危険が──>

フィリピンのルソン島パンガシナン州で10日、地元ラジオ局でコメンテーターを務めるジャーナリストが正体不明の男性らによる銃撃を受けて死亡する事件が起きた。

フィリピンではドゥテルテ政権に批判的な記者やジャーナリストが襲撃されたり、殺害されたりする事件や不当逮捕、訴追さらにテレビ局が免許失効に追い込まれるなどマスコミへの逆風が強まっている。

フィリピンの主要メディアが報じたところによると10日午前6時半過ぎ、ルソン島中部イロコス地方パンガシナン州ビリャシスにある自宅をバージリオ・マガネス氏(62)が出たところ、バイクに乗った正体不明の男性2人組から突然銃撃を受けた。

マガネス氏は頭部と体に複数の銃弾を受けほぼ即死状態だったという。2人組はそのままバイクで逃走し、これまで犯人の正体も動機も明らかになっていないと伝えている。

数年前にも襲われていた

マガネス氏は地元コミュニティーラジオ局「dwPR」のコメンテーターを務めるとともに週刊誌「ノーザン・ウォッチ」に約11年にわたりコラムを書き続けているベテランのジャーナリストだった。

事件の捜査にあたる地元警察やフィリピン記者組合などによるとマガネス氏は2016年11月8日にもトライシクル(バイクタクシー)に乗って仕事に向かう途中、ダグパン市で正体不明の2人組が乗ったバイクから銃撃を受けて負傷していた。

この時マガネス氏はとっさの機転で死んだふりをして助かったが、襲撃犯は現在まで逮捕されておらず、襲撃された理由もはっきりしなかったという。

ただ現場には犯人が残したメモらしきものがあり、そこには「麻薬売人の真似をするな」と書かれていた。このため麻薬絡みの襲撃ともみられたが、マガネス氏は麻薬とは無関係であり、警察は「捜査を攪乱するものに過ぎない」との見方を示していたという。

反ドゥテルテの論陣が原因か

マガネス氏が所属しているフィリピン記者組合はドゥテルテ大統領の麻薬対策、南シナ海問題、コロナウイルス感染防止策、そしてマスコミへの統制などに厳しい論調の記者が主にメンバーとして所属、活動していることから、マガネス氏の日頃の論評活動が事件に関連しているとの見方が強まっている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ロイターネクスト:為替介入はまれな状況でのみ容認=

ビジネス

ECB、適時かつ小幅な利下げ必要=イタリア中銀総裁

ビジネス

トヨタ、米インディアナ工場に14億ドル投資 EV生

ビジネス

米GDP、第1四半期は+1.6%に鈍化 2年ぶり低
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    今だからこそ観るべき? インバウンドで増えるK-POP非アイドル系の来日公演

  • 3

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗衣氏への名誉棄損に対する賠償命令

  • 4

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 5

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 6

    未婚中高年男性の死亡率は、既婚男性の2.8倍も高い

  • 7

    やっと本気を出した米英から追加支援でウクライナに…

  • 8

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 9

    自民が下野する政権交代は再現されるか

  • 10

    ワニが16歳少年を襲い殺害...遺体発見の「おぞましい…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 9

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 4

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこ…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 9

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 10

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中