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ネット炎上の参戦者、実はヒマでも貧困でもない「高年収の役職者」という意外な実像

2020年10月16日(金)18時40分
山口 真一(国際大学グローバル・コミュニケーション・センター准教授) *東洋経済オンラインからの転載

まず、「男性が多い」という点について見てみると、炎上参加者の7割は男性であった。社会においても、この調査においても男女比はほとんど半々であることを考えると、この偏りは大きい。

次に、年収を見てみよう。世帯年収を比較すると、炎上参加者の世帯年収は平均して670万円であったのに対し、炎上に参加していない人は平均して590万円であった。つまり、炎上参加者のほうが、世帯年収が80万円も高かったのである(図1)。

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最後に、炎上参加者の肩書の内訳を見ると、図2のようになる。これを見ると、肩書が非常にばらけていることがわかるだろう。主任・係長クラス以上が31%、一般社員が30%、個人事業主・店主が9%、無職・主婦・バイト・学生が30%だ。

piechart.gif

しかしこれを、炎上に参加していない人の肩書と比較するとその傾向が見えてくる。なんと、炎上に参加していない人の中では、主任・係長クラス以上の役職の人は18%しかいなかったのである。

自分の中の正義で他人を裁く

データ分析から「極端な人」の正体が明らかになってきた。しかし気になる点が1つある。それは、なぜこのような人たちが「極端な人」となって過剰な批判や誹謗中傷を書いてしまうのかという点だ。

私がその「動機」について研究したところによると、どのような炎上事例でも、書き込んでいる人の60~70%の人が「許せなかったから」や「失望したから」といったような、正義感から書き込んでいることがわかった。

「他人を誹謗中傷したり、極端な言説で罵倒したりすることが正義なのか!」と思う人もいるかもしれない。しかしここで注意しなければいけないのは、これは社会的正義ではなく、あくまで個人個人がもっている軸・価値観での正義感であるということである。

正義感とは、人によってバラバラである。ある物事を許せる人もいれば、まったく気にしない人もいる。ある物事を不快に感じたときに、それがたとえ第三者のまったく関係のない人であったとしても批判したり誹謗中傷したりするのが正しいと思う人もいれば、第三者に対してそのようなことをしない人もいる。

結局、「極端な人」というのは、己の中の正義に従って他者に攻撃を加えている、不寛容な人なのである。実際、先述のスマイリーキクチさんの事件でも、デマを信じて「正義感からやった」と供述している人がほとんどだったようだ。

なかには、毎朝決まった時間に必ず投稿するような人もいたようである。その人は普通のサラリーマンだったという。そのような行為をしていた理由は、凶悪犯人についてネット上で言及することで社会に貢献できると考えていたかららしい。

正義による快楽の連鎖

ここまで明らかになった炎上参加者の属性や書き込んでいる動機から、炎上の1つの姿が見えてくる。このような人々は、それなりに知識があり、情報に触れる機会も多い。分析では、ラジオ聴取時間が長いといったような特徴も出ていた。

そのように知識がある中で、政治やジェンダーなど、関心のある問題に対して確固たる信念や、ロジックを抱くようになる。○○は正しい、△△は間違っている......。

そして、そのような自分の考えと異なる発言を見たときに、批判をする。批判をするだけならばよいが、一部の「極端な人」は、そこから感情的に人格攻撃までしてしまうというわけだ。

そしてもう1つ、企業の不正行為や、一般人の悪ふざけ、芸能人の不祥事などに対しては、「悪いことをしている人(企業)を叱りつけている」ということがある。「こんな人・企業には制裁を加えなきゃいけない」「こういうことをする人は教育しなきゃいけない」。こういう気持ちで、心無い言葉を大量に書き込んでいくのである。

「正義中毒」という言葉がある。脳科学者の中野信子氏は、人間は正義感をもとに他人に制裁を科すと、快楽物質「ドーパミン」が分泌されることを指摘している。この快楽に溺れてしまうと、やがて極端に不寛容になり、他人を許さずに正義感から裁くことで快楽を得ようとし続けてしまう、正義中毒になるというわけである。

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