最新記事

新型コロナウイルス

新型コロナ感染、トランプはボリス・ジョンソン(重症)化するのか

Only State-of-the-Art Medicine—and Luck—Can Save Trump Now

2020年10月5日(月)18時00分
ローリー・ギャレット(米外交問題評議会グローバルヘルス担当シニアフェロー)

ウォルター・リード米軍医療センターの会議室で、マイク・ペンス副大統領らと電話会議をするトランプ(10月4日) Tia Dufour/The White House/REUTERS

<最先端の治療を受けていても、高リスクの年齢と体型のうえに本当の健康状態がわからない以上、トランプの症状はいつ重篤化してもおかしくない>

ドナルド・トランプ大統領とメラニア夫人は、新型コロナウイルスに感染した。大統領のスタッフや、最近、大統領と会った人々のなかにもPCR検査で陽性反応が出た。

大勢のホワイトハウス職員とトランプの選挙陣営スタッフも検査を受けているが、結果はまだわからない。トランプは2日の午後にウォルター・リード米軍医療センターに入院し、ホワイトハウス当局者によれば今後数日、そこで過ごす。だがトランプはまだ、アメリカを率いる指導者だ。彼がウイルスと戦っている間、この国はどうなるのだろうか。

74歳という年齢と、肥満にもかかわらず、トランプは常に自分を活力あふれる、健康な、たくましい人間に見せようとしてきた。スリムな77歳の対立候補ジョー・バイデンを、よぼよぼで反応が鈍い老人だと批判し、わずか3歳しか違わないのに、自分のほうがずいぶん年下だという印象を与えようとしてきた。

同様にトランプは何度も、新型コロナウイルスのリスクを、自分以外の誰かの問題に見せかけようとしてきた。心臓が悪い高齢者は、心配しなければならないかもしれない──でも、トランプ自身は心配ない、というわけだ。

補佐官の指示通りに書いた診断書

9月21日にオハイオ州スワントンでの選挙集会に登場したトランプは、マスクを着けていない群衆を見渡し、顔を輝かせた。「おお、なんと大勢の観客だ。これは大勢だ」。群衆は大声で答えた。そしてトランプは、こう言ってマスクと新型コロナウイルス感染症に対する懸念を否定した。「高齢者は影響を受ける。心臓に問題がある高齢者だ。ほかに持病があるなら、本当に問題なのは、そっちだ。それだけのことだ。新型コロナは、事実上誰にも影響しない。すごいことじゃないか」

連邦政府は、医療、退職、税務のほとんどの場面で「高齢者」を65歳以上と定義している。トランプも明らかに「影響を受ける」高齢者の一員だ。

トランプには、体重以外に、重症化のリスクを高めそうな基礎疾患があるだろうか。それはわからない。若々しく見せるための絶え間ない闘いの中で、薄毛を覆い隠し、大統領として最も長い時間ゴルフをプレイしたトランプは、自分の健康状態に関する本当の情報が公開されないよう細心の注意を払ってきた。

トランプの主治医として知られるマンハッタンの医師ハロルド・ボーンスタインは、胃腸科の専門医だが、ヒッピーのように見える変わった人物で、2016年8月に「トランプの健康は素晴らしく、特に精神は健康」と診断した。

だがこの医師は、2015年12月のインタビューで、自分の診断書は、トランプの補佐官が指示した内容を、外でリムジンが待っている間に急いで書いたものだと語っている。当時は大統領候補だったトランプについて、ボーンスタインは、体力とスタミナが「ずば抜けている」と書いた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米ヘリテージ財団から職員流出、反ユダヤ主義巡る論争

ワールド

トランプ氏、マドゥロ氏に退陣促す 押収石油は「売却

ワールド

ゼレンスキー氏、スムイ州住民のロシア連行を確認

ワールド

インド経済、11月も高成長維持 都市部消費などが支
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 2
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 3
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリーズが直面した「思いがけない批判」とは?
  • 4
    【外国人材戦略】入国者の3分の2に帰国してもらい、…
  • 5
    「信じられない...」何年間もネグレクトされ、「異様…
  • 6
    週に一度のブリッジで腰痛を回避できる...椎間板を蘇…
  • 7
    「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野…
  • 8
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 5
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 6
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 9
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 10
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中