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2020米大統領選

米大統領選:中国の選挙工作を見くびるな

Why Downplaying China's Election Interference Could Backfire

2020年10月2日(金)16時45分
クレイグ・シングルトン(民主主義防衛財団 非常勤研究員)

政治を語る上で「ディープフェイク」や「ボットファーム」のような言葉が使われるようになっているなか、中国が世界各地の民主的な選挙に影響を及ぼす狙いで展開している、粗削りに見える作戦は、見過ごされがちになっている。

確かにソーシャルメディア・プラットフォームを「武器として使う」というロシアのやり方は、特に米大統領選を控えた今、注目に値する。だが中国などの独裁体制が、リベラルな民主国家の選挙結果や世論に影響を及ぼす狙いで取り入れている、もっとずっと単純なやり方の方が、より大きな効果を生む場合もある。

民主党の一部の議員は、中国による選挙介入についての懸念を一蹴したが、このような性急な対応は危険だ。中国に対して(そしてアメリカの有権者に対しても)、米政府が中国政府による干渉を「厄介だとは思っても危険だとは思っていない」というメッセージになりかねない。それが中国をさらに勢いづかせるのはほぼ確実で、そうなれば彼らはアメリカに対するさらなる介入工作を続けるだろう。現に彼らは、南シナ海でのますます積極的な活動を含め、そのほかの地政学的な目標を追求する上でも同様の戦略をとっている。

まずは脅威を認めよ

行政や立法の当局者による早まった発言は、中国による選挙介入に関する米政府の知識がきわめて少ないという厳しい現実を無視したものでもある。西側諸国では、ロシアの脅威に対処するための先進技術の開発が進む一方で、中国による悪質な活動をリアルタイムで暴き、阻止する能力や手段はないのが現状だ。

最近では、オーストラリアも中国の政治介入工作の標的になったことが記憶に新しい(中国の情報機関が中国系の男性に資金を出して選挙に立候補させようとしたことなど)。オーストラリアの例が参考になるならば、中国による複雑な政治介入工作を解明するのには、何年もの時間がかかる可能性がある。さらに悪いことにアメリカの政界は党派間の対立が激しいため、オーストラリア政府が採用したような、市民社会や学会、諜報コミュニティーや実業界からの先入観にとらわれない意見に頼る形の調査を行うのは難しい。

中国による米選挙への介入について、これまで以上に統合的な対処を行い、民主・共和両党が協力して一般市民に脅威を伝える努力をしない限り、アメリカは2022年にも2024年にもほぼ確実に、また同じような状況に直面することになるだろう。そしてほかの民主主義諸国も適切な対策を講じない限り、同じような介入に直面することになる危険がある。

アメリカはまず、党派を超えて中国による介入の脅威を認めることで、第一歩を踏み出すべきだろう。

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