最新記事

イスラム過激派

フィリピン、自爆テロ関与のアブ・サヤフ幹部ら殺害・逮捕 逃走メンバーが新たなテロの可能性も

2020年9月30日(水)08時48分
大塚智彦(PanAsiaNews)

別の幹部を逮捕、爆破装置など押収

また前日の27日には陸軍特殊部隊と警察諜報部隊の合同チームがサンボアンガ市レコド地区にある「アブ・サヤフ」のハシム・サリパダ(別名ハジリ・バナ)容疑者の潜伏先を急襲して同容疑者を逮捕することに成功した。

サリパダ容疑者はこれまでに2018年7月のバシラン島での自爆テロ事件(兵士11人死亡)や2019年1月のホロ市内キリスト教会自爆テロ事件(23人死亡)などへの関与が疑われている重要容疑者の1人だった。

逮捕したサリパダ容疑者の潜伏先からは爆弾テロに使用するために所持していたとみられる液体化学薬品、電線コード、起爆装置の部品、解体された手りゅう弾、バックパックなどが押収されたといい、新たな爆弾テロを計画中だったのは間違いないとしている。

2002年に「アブ・サヤフ」に参加したとされるサリパダ容疑者は、組織内でバシラン島、スールー諸島方面の組織の経理や人事を主に担当。海外から密航してくる外国人テロリストの担当もしていたとみられている。

治安当局関係者は「サリパダ容疑者の逮捕はアブ・サヤフの組織としての弱体化につながる大きな成果といえる」と掃討作戦が効果をあげつつあることを評価した。

自爆テロ実行候補者らがなお逃走中

8月24日のホロ市連続自爆テロで使用された爆弾製造に関わったとされるムンディ・サワジャン容疑者はインドネシア人爆弾専門家夫妻とともに逃走中とみられているが、これまでのところその消息に関る情報は得られていない。

逃走中のこのインドネシア人女性は2019年1月にホロ市内のキリスト教会で発生した自爆テロ実行犯であるインドネシア人夫妻の娘で、「親の復讐」と「イスラム聖戦敢行」のために自らも「自爆テロ実行」を志願しているとみられており、治安当局にとっては新たな自爆テロへの警戒と共にこの3人の逮捕を最優先に現在作戦を継続している。

ドゥテルテ大統領によるこうしたテロ組織「アブ・サヤフ」への厳しい対応と徹底した掃討・壊滅作戦実施は国民による高い支持率の一因ともなっており、看板政策である「麻薬関連犯罪への超法規的措置を含めた徹底した取り組み」と共に「強い指導者」としてのイメージをアピールすることに成功しているといえる。


otsuka-profile.jpg[執筆者]
大塚智彦(ジャーナリスト)
PanAsiaNews所属 1957年東京生まれ。国学院大学文学部史学科卒、米ジョージワシントン大学大学院宗教学科中退。1984年毎日新聞社入社、長野支局、東京外信部防衛庁担当などを経てジャカルタ支局長。2000年産経新聞社入社、シンガポール支局長、社会部防衛省担当などを歴任。2014年からPan Asia News所属のフリーランス記者として東南アジアをフィールドに取材活動を続ける。著書に「アジアの中の自衛隊」(東洋経済新報社)、「民主国家への道、ジャカルタ報道2000日」(小学館)など

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

モディ印首相、中国との「関係改善に尽力」 習主席と

ワールド

インドネシア大統領、訪中取りやめ 首都デモが各地に

ビジネス

中国製造業PMI、8月は5カ月連続縮小 内需さえず

ワールド

ロシア軍参謀総長、前線で攻勢主張 春以降に3500
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:健康長寿の筋トレ入門
特集:健康長寿の筋トレ入門
2025年9月 2日号(8/26発売)

「何歳から始めても遅すぎることはない」――長寿時代の今こそ筋力の大切さを見直す時

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    首を制する者が、筋トレを制す...見た目もパフォーマンスも変える「頸部トレーニング」の真実とは?
  • 2
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体」をつくる4つの食事ポイント
  • 3
    上から下まで何も隠さず、全身「横から丸見え」...シャロン・ストーンの過激衣装にネット衝撃
  • 4
    「体を動かすと頭が冴える」は気のせいじゃなかった⋯…
  • 5
    1日「5分」の習慣が「10年」先のあなたを守る――「動…
  • 6
    就寝中に体の上を這い回る「危険生物」に気付いた女…
  • 7
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 8
    シャーロット王女とルイ王子の「きょうだい愛」の瞬…
  • 9
    映画『K-POPガールズ! デーモン・ハンターズ』が世…
  • 10
    世界でも珍しい「日本の水泳授業」、消滅の危機にあ…
  • 1
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ女性が目にした光景が「酷すぎる」とSNS震撼、大論争に
  • 2
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット民が「塩素かぶれ」じゃないと見抜いたワケ
  • 3
    東北で大腸がんが多いのはなぜか――秋田県で死亡率が下がった「意外な理由」
  • 4
    1日「5分」の習慣が「10年」先のあなたを守る――「動…
  • 5
    皮膚の内側に虫がいるの? 投稿された「奇妙な斑点」…
  • 6
    飛行機内で隣の客が「最悪」のマナー違反、「体を密…
  • 7
    25年以内に「がん」を上回る死因に...「スーパーバグ…
  • 8
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体…
  • 9
    豊かさに溺れ、非生産的で野心のない国へ...「世界が…
  • 10
    脳をハイジャックする「10の超加工食品」とは?...罪…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果…
  • 7
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 8
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 9
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 10
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中