最新記事

米司法

ルース・ギンズバーグ判事の死、米社会の「右旋回」に現実味

2020年9月26日(土)20時45分

米連邦最高裁判所のリベラル派判事、ルース・ベイダー・ギンズバーグ氏の死去は、米国における将来の司法と生活にとって非常に大きな意味を持っている。共和党のドナルド・トランプ大統領には、連邦最高裁において6対3の保守派優位を確立する機会が訪れたことになる。米首都ワシントンの最高裁判所で、2017年6月撮影(2020年 ロイター/Jonathan Ernst)

米連邦最高裁判所のリベラル派判事、ルース・ベイダー・ギンズバーグ氏の死去は、米国における将来の司法と生活にとって非常に大きな意味を持っている。共和党のドナルド・トランプ大統領には、連邦最高裁において6対3の保守派優位を確立する機会が訪れたことになる。

トランプ大統領がギンズバーグ氏の後任を指名することになった場合、この「右旋回」はどのような形で感じられるようになるのか、いくつかのケースを見ていこう。

妊娠中絶などの社会問題

米連邦最高裁が1973年の「ロー対ウェイド」判決において人口妊娠中絶の権利を認めて以来、保守派の活動家はこの判例を覆そうと試みてきた。だが、いつもあと一歩及ばなかった。トランプ大統領がギンズバーグ氏の後任に強硬な保守派を指名すれば、連邦最高裁が人工妊娠中絶の権利を大幅に制限する可能性がかつてないほどに高まる。

連邦最高裁の保守派はそれ以外の社会問題についても、同じように踏み込んだ動きを見せようという勇気を与えられるかもしれない。たとえば、銃の所持に関する権利の拡大や宗教に関する個人の権利の強化、選挙権の制限などである。

また、民主党が気候変動などの問題に関する主要な法案を成立させるに十分な議席を得た場合でも、連邦議会で可決された進歩的な法律を無効と判断できるようになる可能性がある。

死刑廃止などリベラルな理念を最高裁が支持する可能性は、ますます低下するだろう。ただ、最近のLGBT労働者の権利を擁護する判決が6対3で下されたことに見るように、状況によっては例外扱いとなる問題もあるかもしれない。

危うくなる「オバマケア」

短期的にギンズバーグ氏の不在が最も痛切に感じられるとすれば、2010年に可決された医療保険制度改革法、いわゆる「オバマケア」について保守派が起こした最新の訴訟に関して、11月10日に予定されている口頭弁論であろう。

連邦最高裁は2012年に5対4でオバマケアを支持する判決を下している。ギンズバーグ氏は多数派5人のうちの1人であり、同氏の後任次第では優劣がひっくり返る可能性がある。

トランプ氏が指名する後任判事がその時点までに承認されていないとしても、5対3の保守派優位の状況で口頭弁論を迎えることになる。

公式には10月5日に始まる新しい司法年度において、連邦最高裁が扱う他の訴訟についても影響が生じる可能性がある。同裁判所は11月4日、一部の連邦法において宗教的権利に例外が設けられる範囲をめぐる重要な法廷闘争について審理を行う。

この訴訟は、フィラデルフィア州が同州の里親制度へのカトリック系社会福祉団体の参加を排除したことをめぐり起こされた。排除の理由として、同性カップルが里親になることについて、この団体が禁止している点を挙げている。

政治的にセンシティブな事件としては、2016年の大統領選挙に対するロシアの介入に関するロバート・モラー元特別検察官の報告書のうち、トランプ政権が公表しなかった部分の開示を民主党優位の連邦下院が求めている件について、12月2日に連邦最高裁の審理が行われる。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

最近の急速なウォン安・円安、深刻な懸念共有=日韓対

ワールド

米戦略石油備蓄の第1弾、来週末までに供給 8600

ビジネス

日立とGEベルノバ、東南アジアで小型モジュール炉導

ワールド

米商務省、AI半導体輸出の新規則案を撤回 公表から
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのミュージカル入門
特集:教養としてのミュージカル入門
2026年3月17日号(3/10発売)

社会と時代を鮮烈に描き出すミュージカル。意外にポリティカルなエンタメの「魔力」を学ぶ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製をモデルにした米国製ドローンを投入
  • 2
    有人機の「盾」となる使い捨て無人機...空の戦いに革命をもたらす「新世代ドローン」とは?
  • 3
    イラン攻撃のさなか、トランプが行った「執務室の祈祷」を中国がミーム化...パロディ動画が拡散中
  • 4
    「映画賞の世界は、はっきり言って地獄だ」――ショー…
  • 5
    ファラオが眠る王家の谷に残されていた「インド系言…
  • 6
    ショーン・ペンは黙らない――「ウクライナへの裏切り…
  • 7
    ホルムズ封鎖で中国動く、イランと直接協議へ
  • 8
    機内で「人生最悪」の経験をした女性客...後ろの客の…
  • 9
    世界の視線は中東から日本へ...企業主導で築くインド…
  • 10
    『ある日、家族が死刑囚になって』を考えるヒントに…
  • 1
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 2
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 3
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」と言われる外国特派員の私が思うこと
  • 4
    「このままよりはマシだ」――なぜイランで米軍の攻撃…
  • 5
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 6
    職業別の収入に大変動......タクシー運転手・自動車…
  • 7
    キャサリン皇太子妃、英連邦デー式典に出席...公開さ…
  • 8
    ショーン・ペンは黙らない――「ウクライナへの裏切り…
  • 9
    世界の視線は中東から日本へ...企業主導で築くインド…
  • 10
    40年以上ぶり...イスラエル戦闘機「F-35I」が、イラ…
  • 1
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 2
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 3
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 4
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 5
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 6
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 7
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 8
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 9
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
  • 10
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中