最新記事

日本社会

三浦春馬さんへの「遅すぎた称賛」に学ぶ「恩送り」と「ペイ・フォワード」

2020年9月3日(木)17時45分
木 隆志(コラムニスト、人間関係コンサルタント、テレビ解説者) *東洋経済オンラインからの転載

三浦さんが亡くなったことでファンが増え、ネット上には称賛の声が続出......しかし、これらの声は決して三浦さん本人に届くことはありません。喪失感を抱き、後悔している人がいることからわかるように、どう考えても遅すぎたのです。

「恩送り」と「ペイ・フォワード」

もちろん新たなファンだけでなく、長年応援し続けてきた熱心なファンもたくさんいるでしょう。しかし、反響の大きさを見る限り、「この人ちょっと好きかも」「どちらかというと好印象」くらいの人々も、三浦さんに称賛の声を上げているのは間違いありません。

亡くなったあとではなく、平常時にも称賛の声を上げていたら、三浦さんの人生が変わったかどうかはわからないものの、「いくらかの救いになったかもしれない」ことは想像できるのではないでしょうか。これは三浦さんのような有名人に限らず、自分の周りにいる人々に対して、称賛だけでなく、尊敬、憧れ、愛情。あるいは、感謝、共感、ねぎらい、いたわりなどのポジティブな言葉をかけることで、良い影響を与えられるものです。

ポイントは「本当に大事な人」だけでなく、「ちょっと好き」というレベルの人にも、前述したようなポジティブな言葉をかけること。基本的に人間は、家族や親友などの本当に大事な人ではない人からポジティブな言葉をかけられると、その意外性や距離が縮まるうれしさから心が軽くなり、視野が広がります。

そんな「ちょっと好きな人」にポジティブな声をかけることの大切さを表しているのが、「恩送り」という考え方。「恩送り」は誰かから善意を受けたら、それを相手に返す「恩返し」ではなく、ほかの誰かに渡していくものです。

「恩返し」のように直接その人に返せればいいのですが、現実的には「適切な機会や方法がなくて、恩返しできない」というケースも少なくありません。そんなときに何もしないのではなく、ほかの誰かに「恩送り」することで社会に恩=善意が広がっていくため、間接的な「恩返し」にもなります。その「恩送り」の最も簡単なものが、前述した"ポジティブな言葉を伝えること"なのです。

海外でも「ペイ・フォワード」という同じような概念があり、2000年には「ペイ・フォワード 可能の王国」というタイトルで映画化もされました。そのストーリーは、「11歳の少年が受けた善意を別の3人に渡すことで社会を変えていく」というものだったのです。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米16州、EV充電施設の助成金停止で連邦政府を提訴

ワールド

中国最新空母「福建」、台湾海峡を初めて通過=台湾国

ワールド

ウクライナ安全保証、西側部隊のロシア軍撃退あり得る

ビジネス

半導体製造装置販売、AIブームで来年9%増 業界団
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を変えた校長は「教員免許なし」県庁職員
  • 4
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 5
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 6
    「住民が消えた...」LA国際空港に隠された「幽霊都市…
  • 7
    【人手不足の真相】データが示す「女性・高齢者の労…
  • 8
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 9
    FRBパウエル議長が格差拡大に警鐘..米国で鮮明になる…
  • 10
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 4
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 5
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 6
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 7
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 8
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 9
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 10
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 5
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 6
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 9
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中