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三浦春馬さんへの「遅すぎた称賛」に学ぶ「恩送り」と「ペイ・フォワード」

2020年9月3日(木)17時45分
木 隆志(コラムニスト、人間関係コンサルタント、テレビ解説者) *東洋経済オンラインからの転載

三浦さんが何を思い悩んでいたのか、今となってはわかりませんが、「恩送り」や「ペイ・フォワード」が浸透していけば、少なからず人々の笑顔は増え、ストレスは減っていくでしょう。

今年1月、三浦さんは自身のツイッターに、「明るみになる事が清いのか、明るみにならない事が清いのか...どの業界、職種でも、叩くだけ叩き、本人達の気力を奪っていく。皆んなが間違いを犯さない訳じゃないと思う。国力を高めるために、少しだけ戒める為に憤りだけじゃなく、立ち直る言葉を国民全員で紡ぎ出せないのか...」と書き込みました。

当時は東出昌大さんの不倫疑惑が報じられていたときであり、三浦さんの言葉に賛同する人がいる一方、「不倫を擁護した」とみなして厳しい言葉を浴びせる人も多く、意を決して書いた分、心を痛めていたであろうことは想像に難くありません。その後、3月の出演ミュージカル開催に批判が殺到したことも、三浦さんにとってはつらい経験だったのではないでしょうか。

匿名で悪意が増幅し、批判を超えた誹謗中傷に

批判そのものは悪いこととは言えませんが、悪意をもって個人を責めるのは大問題。とりわけネット上は匿名をいいことに悪意が増幅し、批判を超えた誹謗中傷につながりやすく、それが蔓延すると「恩送り」とは真逆の危うい社会になっていきます。

三浦さんが亡くなった今、誹謗中傷の言葉を浴びせていた人は何を思っているのでしょうか。直接やり取りを交わしたわけでもなく、悪意が飛び交うのが当然の現状を踏まえると、「心を痛めることはなく、今は別の人を攻撃している」のかもしれません。

悪意というウイルスはある意味、新型コロナウイルスと同等にやっかいなもので、何度侵されても抗体はできず、免疫も得られず、効果的なワクチンもありません。現在の社会では人々の悪意を完全に消し去ることは難しいだけに、「悪意というやっかいなウイルスが生まれてしまう」という前提を共有し、多くの善意をかぶせることで薄めていきたいところです。

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