最新記事

地球

過去6600万年の地球の気候の変遷が初めてまとめられる

2020年9月17日(木)17時40分
松岡由希子

<6600万年にわたる地球の気候の変遷が、国際研究チームによって初めてまとめられた...... >

6600万年にわたる地球の気候の変遷が、国際研究チームによって初めてまとめられ、地球の公転軌道の周期的変動といった自然の要因による気候変動よりも、温室効果ガスの排出によって将来予測される温暖化のほうがはるかに大きな影響をもたらすおそれがあることがわかった。

米カリフォルニア大学サンタクルーズ校(UCSC)、独ブレーメン大学海洋環境科学センター(MARUM)らの国際研究チームは、6600万年の地球の気候変動の記録を継続的かつ忠実にまとめ、2020年9月11日、学術雑誌「サイエンス」で一連の研究成果を発表した。

5500万年前、現在よりも9〜14度高かった

研究チームは、深海海盆から採取した堆積物コアを用い、海底堆積物中の微小プランクトン「有孔虫」の殻にある酸素同位体から過去の気温や氷床体積を分析。さらに、堆積物に記録された気候変動と地球の公転軌道の周期的変化とをマッチングさせ、天文現象を用いて日付をつけた6600万年分の気候の変遷をまとめた。

研究チームでは、天文学的な外部強制力に伴って変動する地球の気候の状態を、温室効果ガス濃度や極地の氷床体積に応じて、「ホットハウス」、「ウォームハウス」、「クールハウス」、「アイスハウス」の4つに分類している。

Past-and-Futur0917b.jpeg

Westerhold et al., CENOGRID

地球は、この300万年間、極地に氷床が存在する「アイスハウス」にあり、寒冷な気候の「氷期」と比較的温暖な「間氷期」とが周期的に繰り返されてきた。このような「氷期-間氷期サイクル」は、地球の軌道の周期的変化と一致している。

しかしながら、1850年以降、温室効果ガスの排出をはじめとする人間活動により、約3400万年前に終わった「始新世」以来、地球が「ウォームハウス」や「ホットハウス」に向かいつつある。「始新世」初期には、極地に氷床はなく、地球の平均気温は数百万年かけて上昇し、現在よりも9〜14度高かった。

2300年までに、約5000万年前と同等の「ホットハウス」に突入?

世界で地球温暖化への防止策が講じられずに温暖効果ガスが排出され続ける「RCP8.5シナリオ」での予測では、地球の気候が、2300年までに、約5000万年前の「始新世」初期の同等の「ホットハウス」に突入する可能性があるという。

Global-Temperature9017c.jpeg

Westerhold et al., CENOGRID

研究論文の責任著者でカリフォルニア大学サンタクルーズ校の古気候学者ジェームズ・ザコス特別教授は「温室効果ガス排出量を削減しない現状維持のシナリオによれば、過去5000万年で見られなかったレベルにまで、地球の気温が上昇するおそれがある」と警鐘を鳴らしている。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

タイ首相、カンボジアとの戦闘継続を表明

ワールド

ベラルーシ、平和賞受賞者や邦人ら123人釈放 米が

ワールド

アングル:ブラジルのコーヒー農家、気候変動でロブス

ワールド

アングル:ファッション業界に巣食う中国犯罪組織が抗
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の展望。本当にトンネルは抜けたのか?
  • 3
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の脅威」と明記
  • 4
    「前を閉めてくれ...」F1観戦モデルの「超密着コーデ…
  • 5
    現役・東大院生! 中国出身の芸人「いぜん」は、なぜ…
  • 6
    世界最大の都市ランキング...1位だった「東京」が3位…
  • 7
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 8
    首や手足、胴を切断...ツタンカーメンのミイラ調査開…
  • 9
    「体が資本」を企業文化に──100年企業・尾崎建設が挑…
  • 10
    トランプが日中の「喧嘩」に口を挟まないもっともな…
  • 1
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 4
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 5
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 6
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 7
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 8
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    人手不足で広がり始めた、非正規から正規雇用へのキ…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中