最新記事

感染症対策

新型コロナ感染、重症化しなくても長く辛い後遺症 医療費膨張のリスクも

2020年8月12日(水)11時12分

「起き上がるだけでも辛い」

COVID-19の後遺症が長引くことで追加コストが生じれば、米国での医療保険料が上昇する可能性が出てくる。カイザー・ファミリー・ファウンデーションによれば、COVID-19の発生を受けて、すでに一部の医療保険では2021年度の総合医療保険の保険料を最大8%引き上げている。

テネシー州ノックスビルとアトランタで暮らす元精神分析医のアンヌ・マッキーさん(61)は、5カ月近く前に新型コロナに感染したとき、多発性硬化症と喘息を患っていた。彼女は今も呼吸に苦しさを感じている。

「調子の良い日は何回か洗濯もできる。でもここ数日、起き上がって台所で何か飲むだけでも辛い」と彼女は言う。

マッキーさんはこの間、診察・検査・処方薬に5000ドル以上も費やしてきた。医療保険からは、遠隔診療240ドル、肺スキャン455ドルも含め、1万5000ドル以上が支払われている。

米保険計理士協会で調査研究担当マネージングディレクターを務めるデイル・ホール氏は、「ある疾病で重症になったことから生じる問題の多くは、その後3年、5年、20年と続く可能性がある」と語る。

米国の保険計理士たちは、今後のコストを把握するために、新型コロナの患者と、健康特性は似ているが新型コロナに感染していない人の保険利用記録を比較し、数年にわたって追跡調査している。

英国では、入院を経験したCOVID-19患者1万人を、退院から12カ月間、可能であれば最長25年間追跡調査することをめざしている。この調査に参加する科学者らは、アフリカでのエボラ生存者に見られたような、長期的なCOVID-19症候群を定義することを想定している。

リバプール大学のケイラム・センプル教授は、「回復した患者の多くは、肺に傷跡が残り、疲労感に見舞われるのではないかと考えている。あるいは脳血管へのダメージ、心理的な苦痛も残るかもしれない」と話す。

バーミンガム病院で働くマーガレット・オハラさん(50)は、こうした調査の対象とならない多くのCOVID-19患者の1人である。症状が軽く、入院せずに済んだからだ。だが、ひどい息切れなど健康上の問題が繰り返しているため、まだ仕事には復帰できずにいる。

オハラさんは、自分のような患者は、英国の長期的なコスト計画の対象外になるのではないかと心配している。

「私たちは、かなり長期間にわたって、費用のかさむフォローアップ治療が必要になるだろう」とオハラさんは言う。


Caroline Humer Nick Brown Emilio Parodi(翻訳:エァクレーレン)

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2020トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


【関連記事】
・コロナ感染大国アメリカでマスクなしの密着パーティー、警察も手出しできず
・巨大クルーズ船の密室で横行するレイプ
・新たな「パンデミックウイルス」感染増加 中国研究者がブタから発見
・韓国、コロナショック下でなぜかレギンスが大ヒット 一方で「TPOをわきまえろ」と論争に


2020081118issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
楽天ブックスに飛びます

2020年8月11日/18日号(8月4日発売)は「人生を変えた55冊」特集。「自粛」の夏休みは読書のチャンス。SFから古典、ビジネス書まで、11人が価値観を揺さぶられた5冊を紹介する。加藤シゲアキ/劉慈欣/ROLAND/エディー・ジョーンズ/壇蜜/ウスビ・サコ/中満泉ほか

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ベルギー、空軍基地上空で新たなドローン目撃 警察が

ワールド

北朝鮮との対話再開で協力を、韓国大統領が首脳会談で

ビジネス

再送-中国製造業PMI、10月は50.6に低下 予

ワールド

イスラエル、レバノンにヒズボラ武装解除要請 失敗な
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「今年注目の旅行先」、1位は米ビッグスカイ
  • 3
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った「意外な姿」に大きな注目、なぜこんな格好を?
  • 4
    米沿岸に頻出する「海中UFO」──物理法則で説明がつか…
  • 5
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 6
    筋肉はなぜ「伸ばしながら鍛える」のか?...「関節ト…
  • 7
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 8
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 9
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 10
    「あなたが着ている制服を...」 乗客が客室乗務員に…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」…
  • 6
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 7
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 8
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 9
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 10
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中