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トランプ最強の指南役、義理の息子クシュナーの頭の中

The Utility Player

2020年8月1日(土)15時20分
ビル・パウエル(本誌シニアライター)

サウジの皇太子

パレスチナを孤立させ、周辺のアラブ諸国をもっとイスラエルに接近させようという戦略は、トランプ政権の中東政策の中で一貫している。前政権の進めたイランとの対話路線を否定し、以前からの同盟諸国、とりわけサウジアラビアとの関係を一段と緊密にするという方向性だ。

そしてここでもクシュナーが重要な役割を果たした。サウジ王家の事実上のトップである皇太子ムハンマド・ビン・サルマンと親しくなれたからだ。

イランとの核合意を破棄するというトランプの選挙公約に、サウジアラビアは大いに期待していた。だから当選が決まるとすぐ、早期の首脳会談を持ち掛けた。

それでクシュナーは、まだ面識のなかったサルマンと頻繁に連絡を取り合い、ひそかに調整を進めた。そして大統領就任の4カ月後、トランプは初の外遊先としてサウジアラビアに出向いた。2017年5月のことだ。このときクシュナーが首都リヤドの空港で、H・R・マクマスター国家安全保障担当大統領補佐官(当時)とハイタッチする姿を捉えた写真がある。きっと舞い上がっていたに違いない。

だが翌年10月には、ワシントン・ポスト紙のコラムニストでサウジ王家を声高に批判していたジャマル・カショギがトルコのサウジアラビア総領事館で殺害され、遺体を切断される事件が起きた。この残忍な暗殺事件は、世間の大きな注目を集めた。

暗殺を指示したのは皇太子と目されているが、トランプ政権は彼を不問に付した。その姿勢は国内外で激しく批判されたが、クシュナーらは意に介さず、イラン核合意からの離脱を進めるにはサウジアラビアを味方に付けるのが得策だと主張し続けた。

クシュナーは今も、自分の決断は正しかったと信じている。あの皇太子は国内で過激な宗教指導者を排除し、悪名高い宗教警察の力もそいでいる。「いくつかの過ちはあったが、実にいい同盟相手だ」と彼は言う。

再選の後押し

今度の大統領選は、クシュナーにとって「最後のお務め」になるかもしれない。現時点の支持率では民主党候補のジョー・バイデン前副大統領が優勢で、新型コロナウイルスの感染が収束する気配も見えない。これで勝てるのかという不安は、共和党内でも高まっている。

だがトランプ劣勢を示す数字など、クシュナーは「全てでたらめだ」と言う。「トランプは政治的に公正な大統領ではないだろうが、ちゃんと仕事はしている」。トランプがまだ2期目のビジョンを示していないことも、彼は気にしない。「戦略が問われるのは(8月以降の)最後の90日間」だと思うからだ。

しかし、共和党議員たちからすると、クシュナーの読みは現実離れしているように見える。世論調査では経済政策への支持が減り、コロナ禍はトランプの政治生命を脅かす勢いだ。しかも時間は限られている。トランプ政権のコロナ対策は失敗だという見方がますます強まる状況に、クシュナーはどう対処できるのか。

忠誠心の厚いクシュナーはこれまで、義父に頼まれたことは何でもやってきた。彼自身もトランプの再選を望み、自分の仕事がその役に立つことを願っている。

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