最新記事

インドネシア

親IS系テロ組織メンバー15人逮捕 インドネシア、独立記念日前の一斉摘発

2020年8月16日(日)12時00分
大塚智彦(PanAsiaNews)

日本大使館も注意喚起

17日の独立記念日はインドネシアでは最も大事な祝日の一つで例年はジャカルタの大統領官邸で多くの招待客を招いて盛大な記念行事が行わる。しかし今年はコロナウイルスの感染拡大が一向に収まらないこともあり、大幅に招待客を削減して規模も縮小したうえでの実施が予定されている。

また全国の地方自治体での記念式典も同様の措置となるほか、市町村の各地区で催される独立記念の「運動会」も表向きは「3密状態」となるため禁止が呼びかけられている。

「運動会」は町内会の子供たちが主に参加していわゆる「パン喰い競争」「道路にコースを描いた徒競走」「油で滑りやすくなった棒を上る棒登り」などが住民総出で賑やかに行われるのが恒例となっている。

こうした行事も自粛あるいは禁止となり、「国旗を飾って国民は自宅で独立記念日を祝うように」との指示が出されている自治体も多い。

こうしたなか在インドネシア日本大使館は14日に在留日本人に対して独立記念日(17日)に関わるテロへの注意、警戒を呼びかける「注意喚起」のメールを一斉に配信した。

その内容は「独立記念日に際しては、新型コロナウイルス対策のため例年より規模を縮小しつつも、各地で祝賀行事等が行われ、大勢の人が集まることが見込まれます。不特定多数の人が集まる場所や行事等はテロ等の標的になりやすいことから、十分に注意してください」となっている。

テロ実行の可能性は低いとの見方も

インドネシアでは現在、コロナ感染防止対策で各都市間を結ぶ主要道路にはコロナ対策用の検問が設けられているほか、鉄道やバスといった公共交通の主要ターミナル、駅、停留所での検温、マスク着用確認、荷物検査なども厳格に実施されている。

さらに主要公官庁やオフィスビル、ショッピングモール、宗教施設にまでコロナ対策として警察官や国軍兵士が配属されて「マスク着用や手洗い携行、社会的安全距離確保」などの監視、指導に当たる地方行政機関関係者を補助している。

こうした対コロナの態勢が強化されていることに加えて、独立記念日に関わる各種行事の中止、縮小もあることからテロリストがテロを実行するには難しい環境にあるとして「この時期のテロの可能性は低いのではないか」との見方も治安問題専門家の間から出ている。

その一方でコロナに乗じたテロの可能性も指摘されるなどインドネシアではコロナ禍の中で緊張した75回目の独立記念日を迎えようとしている。


otsuka-profile.jpg[執筆者]
大塚智彦(ジャーナリスト)
PanAsiaNews所属 1957年東京生まれ。国学院大学文学部史学科卒、米ジョージワシントン大学大学院宗教学科中退。1984年毎日新聞社入社、長野支局、東京外信部防衛庁担当などを経てジャカルタ支局長。2000年産経新聞社入社、シンガポール支局長、社会部防衛省担当などを歴任。2014年からPan Asia News所属のフリーランス記者として東南アジアをフィールドに取材活動を続ける。著書に「アジアの中の自衛隊」(東洋経済新報社)、「民主国家への道、ジャカルタ報道2000日」(小学館)など


【話題の記事】
・コロナ感染大国アメリカでマスクなしの密着パーティー、警察も手出しできず
・巨大クルーズ船の密室で横行するレイプ
・新たな「パンデミックウイルス」感染増加 中国研究者がブタから発見
・韓国、ユーチューブが大炎上 芸能人の「ステマ」、「悪魔編集」がはびこる


2020081118issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
楽天ブックスに飛びます

2020年8月11日/18日号(8月4日発売)は「人生を変えた55冊」特集。「自粛」の夏休みは読書のチャンス。SFから古典、ビジネス書まで、11人が価値観を揺さぶられた5冊を紹介する。加藤シゲアキ/劉慈欣/ROLAND/エディー・ジョーンズ/壇蜜/ウスビ・サコ/中満泉ほか

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国軍が台湾周辺で実弾射撃訓練、封鎖想定 過去最大

ビジネス

中国、来年の消費財下取りに89億ドル割り当て スマ

ワールド

カンボジアとの停戦維持、合意違反でタイは兵士解放を

ワールド

韓国大統領、1月4ー7日に訪中 習主席とサプライチ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 2
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめる「腸を守る」3つの習慣とは?
  • 3
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と考える人が知らない事実
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    「すでに気に入っている」...ジョージアの大臣が来日…
  • 6
    「サイエンス少年ではなかった」 テニス漬けの学生…
  • 7
    なぜ筋肉を鍛えても速くならないのか?...スピードの…
  • 8
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」と…
  • 9
    【銘柄】子会社が起訴された東京エレクトロン...それ…
  • 10
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 3
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 6
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 7
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 8
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 9
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 10
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 6
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 10
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中