最新記事

コロナワクチン

スプートニク・ショック再来?ロシアが新型コロナワクチンの接種を10月に開始すると発表

Russian Health Minister Says Mass COVID-19 Vaccination Planned for October

2020年8月3日(月)17時40分
ブレンダン・コール

目標は一番乗り──ベクトルと共に開発に参加しているバイオキャド社のモロゾフCEO  Anton Vaganov-REUTERS

<この話が事実なら、人類初の人工衛星打ち上げでアメリカがロシアに先を越されたスプートニク・ショック以来の衝撃だが、拙速を懸念する声も>

ロシアのミハイル・ムラシュコ保健相はこのほど、国立ガマレヤ研究所における新型コロナウイルスワクチンの臨床試験が終了し、10月にも医師や教師を対象とした大規模な接種が始まると明らかにした。

ロシア国営タス通信によればムラシュコは「ガマレヤ研究所で開発された新型コロナウイルス感染に対するワクチンは、臨床研究を終え、登録手続きのための書類をまとめている段階だ」と述べたという。

「認可手続きが終われば、特定の集団への接種が始まるだろう。まず最初は医師と教師だ。接種(の対象)拡大は10月になる計画だ」と、ムラシュコは述べたという。ただし、ワクチンそのものや接種プログラムに関する踏み込んだ説明はなかった。

米議会が出資する自由欧州放送によれば、ロシアは2種類のワクチンの開発を進めていると言われている。1つがアデノウイルスを使ったワクチンで、ガマレヤ研究所がロシア国防省と共同開発を進めている。もう1つは国立ウイルス学バイオテクノロジー研究センター(ベクトル)が開発したもので、認可手続き中だという。

コロナとの戦いの最前線に立たされている医療従事者たちは10月以降、希望すればワクチン接種の機会を与えられることになる。

「スプートニク・ショック」を再現?

ムラシュコ保健相の発表に先立つこと数日前、ロイター通信はロシア初のコロナワクチンの認可が8月中旬に下りる見込みだと伝えていた。ロシアはワクチン開発レースで世界のトップに立つことを目指している。

ワクチン研究に資金を提供しているロシアの政府系ファンド、ロシア直接投資基金のキリル・ドミトリエフ総裁は、ワクチン開発をかつてのソ連による世界初の人工衛星スプートニク1号の打ち上げ成功になぞらえた。

「まさにスプートニク的瞬間だ。スプートニクが電波を発しているのを知ってアメリカ人は驚いた。このワクチンも同じだ。ロシアは最初に実用化にこぎつけるだろう」とドミトリエフはCNNに述べた。

だがあまりに急速に開発が進められていることに、世界では懸念の声も上がっている。

アメリカで感染症対策の陣頭指揮を執るアンソニー・ファウチは31日に議会でこう述べた。「中国とロシアが、誰かに接種を行う前にきちんとワクチンの試験を行なっていることを望むばかりだ」と述べた。

ちなみにドミトリエフは「(ロシア保健省は)必要なすべての厳しい手続きを踏んでおり、何ひとつ省略されていない」と主張している。

<参考記事>ワクチンができてもパンデミックが終わらない理由
<参考記事>ワクチン研究にサイバー攻撃か──米英カナダがロシアの「APT29」を非難

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

インド貿易赤字、5月は縮小 輸入が減少

ワールド

イラン、NPT脱退法案を国会で準備中 決定はまだ

ワールド

米上院議員が戦争権限決議案、トランプ氏のイラン軍事

ビジネス

NTTドコモ、 CARTAHDにTOB 親会社の電
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?...「がん」「栄養」との関係性を管理栄養士が語る
  • 2
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 3
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロットが指摘する、墜落したインド航空機の問題点
  • 4
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 5
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 6
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 7
    若者に大不評の「あの絵文字」...30代以上にはお馴染…
  • 8
    メーガン妃とキャサリン妃は「2人で泣き崩れていた」…
  • 9
    さらばグレタよ...ガザ支援船の活動家、ガザに辿り着…
  • 10
    ハルキウに「ドローン」「ミサイル」「爆弾」の一斉…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 5
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 6
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 7
    今こそ「古典的な」ディズニープリンセスに戻るべき…
  • 8
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 9
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 10
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中