最新記事

貧困

生活保護かクルマか......シングルマザーが迫られる究極の選択

2020年7月22日(水)15時45分
舞田敏彦(教育社会学者)

交通の便が著しく悪い地域を除いて、生活保護世帯の自動車の所有は認められない Shutter2U/iStock.

<移動手段が限られる地方では、自動車の所有はもう「ぜいたく」ではない>

生活保護費を削減する自治体が相次いでいる。「保護を受けていない低所得世帯よりも、生活保護世帯の方が多く貰っている」。こういうデータに飛びついてのことかもしれないが、だとしたら浅はかだ。

下を向いて(に合わせて)ばかりいると、全ての人の生活水準が競い合うようにして奈落の底に落ちて行く。国民は、こうした「負のスパイラル」に気付かないといけない。

生存権を保障する最後の砦が生活保護だが、それを受給するのは容易ではない。生活困窮(要保護)と認められても、「生活保護世帯は●●の所有は認められない、処分せよ」と行政指導がなされる。一昔前は、生活保護世帯がクーラーを持つことに難色が示されたが、今はそうではない。熱中症が問題化している現在では、もはやクーラーは必需品の範疇だ。

しかし、自動車についてはいまだに微妙だ。交通の便が著しく悪い地域を除き、生活保護世帯は自動車の所有は認められない。「保護かクルマか」。二者択一を迫られるシングルマザーの問題について、赤石千衣子氏が報告している(「子育て世帯を直撃する生活保護の自動車保有問題」ヤフーニュース個人、2017年12月17日)。

公共交通網が発達している都市部はともかく、地方では自動車は必須だろう。ある財の必須度は、貧困層の間でそれがどれほど普及しているかで測れる。2014年の総務省『全国消費実態調査』に、貧困世帯の自動車保有量が出ている。年収下位20%の世帯1000世帯あたりの保有台数だ。<表1>は、都道府県別数値を高い順に並べたものだ。

data200722-chart01.jpg

都市部を除く37の県で1000世帯あたりの台数が1000を超えている。貧困世帯に限定しても、ほとんどの県で1世帯に1台以上ある計算だ。昭和30年代ならいざ知らず、21世紀の今では自動車はぜいたく品ではない。とりわけ地方では、移動に必要な「下駄」のようなものだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

中国人民銀、今年預金準備率と金利引き下げへ 適度に

ワールド

スイスのバー火災、19年以降安全点検なし 首長が謝

ワールド

中国、軍民両用品の対日輸出禁止 「高市発言」に新た

ビジネス

〔情報BOX〕米国によるベネズエラ攻撃に関する企業
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:AI兵士の新しい戦争
特集:AI兵士の新しい戦争
2026年1月13日号(1/ 6発売)

ヒューマノイド・ロボット「ファントムMK1」がアメリカの戦場と戦争をこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    眠る筋力を覚醒させる技術「ブレーシング」とは?...強さを解放する鍵は「緊張」にあった
  • 3
    日本も他人事じゃない? デジタル先進国デンマークが「手紙配達」をやめた理由
  • 4
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 5
    「見ないで!」お風呂に閉じこもる姉妹...警告を無視…
  • 6
    スペイン首相、アメリカのベネズエラ攻撃を「国際法…
  • 7
    衛星画像で見る「消し炭」の軍事施設...ベネズエラで…
  • 8
    砂漠化率77%...中国の「最新技術」はモンゴルの遊牧…
  • 9
    野菜売り場は「必ず入り口付近」のスーパーマーケッ…
  • 10
    若者の17%が就職できない?...中国の最新統計が示し…
  • 1
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめる「腸を守る」3つの習慣とは?
  • 2
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチン、その先は袋小路か
  • 3
    中国軍の挑発に口を閉ざす韓国軍の危うい実態 「沈黙」は抑止かそれとも無能?
  • 4
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 5
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 6
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 7
    眠る筋力を覚醒させる技術「ブレーシング」とは?...…
  • 8
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 9
    世界最大の都市ランキング...1位だった「東京」が3位…
  • 10
    なぜ筋肉を鍛えても速くならないのか?...スピードの…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 6
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 9
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 10
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中