最新記事

野生動物

超希少ゴリラの子連れの群れ、初めて撮影に成功

Rarest Gorilla Subspecies Appears on Camera with Babies

2020年7月9日(木)16時40分
アンドルー・ウェーレン

ゴリラは、ヒガシゴリラ(学名ゴリラ・ベリンゲイ)と、ニシゴリラ(ゴリラ・ゴリラ)の2種に分類され、それぞれに地形で隔てられた2亜種がある。クロスリバーゴリラ(ゴリラ・ゴリラ・ディエリ)はニシゴリラの亜種で、絶滅が懸念されているマウンテンゴリラ(ヒガシゴリラの亜種)よりもさらに生息数が少ない。

今回撮影された群れは、ナイジェリアのクロスリバー国立公園、アフィ山野生生物保護区、ムベ山脈地域森林の3つの保護ゾーンに生息する推定100頭のクロスリバーゴリラの一部と見られる。野生動物が自由に行き来できるこの3つのゾーンは2005年からWCSとムベ山脈保護協会が共同で管理している。

この一帯のクロスリバーゴリラを保護するため、地元の村が雇った森林警備員16人が毎日パトロールを行い、密猟を監視している。絶滅したと思われていたクロスリバーゴリラの生息が確認された後、1987年に地元のカンヤン村はエコツーリズムの誘致を目指し、自主的に狩猟禁止を決めた。

村人たちの努力は実り、ナイジェリアでは2012年以降、クロスリバーゴリラの密猟は1件も報告されていない。WCSは地域の村々の協力に感謝して、今回の画像を地元の有力者にシェアした。

「私たちの森に多くの赤ん坊を連れたクロスリバーゴリラの群れがいることを示した素晴らしい写真を見て、とても感動した」と、カンヤン村のオトゥ・ガブリエル・オチャ村長はWCSに感想を述べた。「WCSと連携した私たちの保護努力の賜物だ。私たちが代々受け継いできた森と動物たちを未来の世代に引き渡せるよう、これからも保護を進めていく」

保護の効果を実証

アボ氏族の長オトゥ・ベルナール・エバンも写真を見て、「エコツーリズムに地域の将来を託す思いを一層強くした」と語った。「ムベ山脈のクロスリバーゴリラを守るため、地域の取り決めをさらに強化する。ブッシュミートとして売るために動物を殺すなど、森の自然を壊す行為に代わる持続可能な経済活動を振興するため、この写真を活用して多くの人に協力を呼びかけたい」

カメルーンでは2017年以降、英語圏地域の分離独立派が「アンバゾニア共和国」の樹立を宣言し、政府軍と武力衝突を繰り返しており、ナイジェリアとの国境地帯でのゴリラの保護活動にも影響が及んでいる。そうしたなかでも、WCSは地元の村々と協力し、2007年から始まったクロスリバーゴリラ行動計画を強化していく考えだ。

今回の画像でこの行動計画の有効性が実証され、地元の一層の協力が得られそうだ。

画像から、「この一帯の個体群は、健全な状態にあると推測される」と、行動計画を立案したニューヨーク市立大学のジョン・オーツ教授はWCSの報道資料で述べている。「1970年代始めにはナイジェリアのゴリラは絶滅したと広く考えられていたが、クロスリバー州政府が着手し、その後にWCSと地元の村々が加わり、拡大した保護活動のおかげで望みが断たれずにすんだ」

赤ちゃんゴリラの元気な姿は、「この地域がこれからもずっとゴリラの楽園であり続けることを願う人々に希望を与えた」と オーツは述べている。

【話題の記事】
オーストラリア森林火災、動物の犠牲は5億匹
【動画】集中豪雨により氾濫する長江
銀河系には36のエイリアン文明が存在する?
昆虫食はすでに日常 カナダの大手スーパー「コオロギ粉」全国販売開始

20200714issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2020年7月14日号(7月7日発売)は「香港の挽歌」特集。もう誰も共産党を止められないのか――。国家安全法制で香港は終わり? 中国の次の狙いと民主化を待つ運命は。PLUS 民主化デモ、ある過激派の告白。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ブラジル中銀、2年後インフレ目標未達の予測 金利は

ビジネス

米配車大手リフト、自動運転タクシー導入に向け戦略会

ワールド

中国メディア記者が負傷、ウクライナの無人機攻撃で=

ワールド

コカインの23年生産量は34%増、世界的ブームで過
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本のCEO
特集:世界が尊敬する日本のCEO
2025年7月 1日号(6/24発売)

不屈のIT投資家、観光ニッポンの牽引役、アパレルの覇者......その哲学と発想と行動力で輝く日本の経営者たち

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門家が語る戦略爆撃機の「内側」と「実力」
  • 2
    サブリナ・カーペンター、扇情的な衣装で「男性に奉仕する」ポーズ...アルバム写真に「女性蔑視」批判
  • 3
    韓国が「養子輸出大国だった」という不都合すぎる事実...ただの迷子ですら勝手に海外の養子に
  • 4
    定年後に「やらなくていいこと」5選──お金・人間関係…
  • 5
    【クイズ】北大で国内初確認か...世界で最も危険な植…
  • 6
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 7
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝…
  • 8
    伊藤博文を暗殺した安重根が主人公の『ハルビン』は…
  • 9
    富裕層が「流出する国」、中国を抜いた1位は...「金…
  • 10
    単なる「スシ・ビール」を超えた...「賛否分かれる」…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の「緊迫映像」
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 6
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 7
    定年後に「やらなくていいこと」5選──お金・人間関係…
  • 8
    飛行機内で「最悪の行為」をしている女性客...「あり…
  • 9
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 10
    サブリナ・カーペンター、扇情的な衣装で「男性に奉…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊の瞬間を捉えた「恐怖の映像」に広がる波紋
  • 4
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測…
  • 5
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の…
  • 6
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 7
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 8
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 9
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 10
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中