最新記事

航空機

世界の航空各社が運航再開 欧州勢は米やアジアに立ち遅れ

2020年6月20日(土)15時34分

新型コロナによる移動規制が緩和され、航空各社は運航再開や増便発表の時期に入りつつある。米国や中国の国内市場が復調し始めているのに対し、欧州の見通しは不透明だ。写真は3月16日、ドイツのフランクフルトで撮影(2020年 ロイター/Kai Pfaffenbach)

継ぎ接ぎしたように国ごとにばらばらな移動規制。国境を越えて行くのを尻込みする旅行者たちーー。こうした障害によって、新型コロナウイルス対策の封鎖措置が解除されていく中にあっても、欧州の航空会社は米国やアジアのライバル勢に比べ、大空に戻るのに苦労している。

世界の航空旅客が事実上凍り付き、航空会社がひたすら現金を摩耗していた約3カ月間を経て、各国の航空各社は、運航再開ないし増便発表の時期に入りつつある。しかし、米国や中国の国内市場が復調し始めているのに対し、欧州の見通しはぐらついて見える。航空アナリストのジョン・グラント氏は、航空産業調査会社OAGが最近主催したイベントで、「欧州は世界のあらゆる他の地域と比べ、出遅れている」と語った。

欧州各国は米国やアジアのライバルに比べて国内市場が小さく、収益性も低い。そうした欧州航空会社には、市民による国境を越える旅行の敬遠ムードが米国やアジアよりも大きな足かせになる。地形的にも鉄道や道路での旅行に客がより奪われやすい。

欧州航空各社は各国のさまざまな規制とも闘わなければならない。たとえば英国が今月入国者に義務づけた14日間の隔離制度だ。

これはアジアや米州の、より大きくて、よりまとまった市場とは対照的だ。ブラジルやインドでは新型コロナ感染増加率が欧州よりも高いままなのに、国内運航は回復し始めている。

ブラジルのサンパウロのグアルーリョス国際空港の業界幹部によると、欧州での旅行は短距離であっても、あっという間に「違う国に入る。言語も変わり、そこの公衆衛生のシステムがどう機能しているのか見当もつかないような場所にいることになる」。この点がブラジルや中国と違うという。

英格安航空会社(LCC)のイージージェットと、独ルフトハンザ航空傘下のブリュッセル航空は今週、欧州各国が隣国との国境を開放するなどしたのに伴って運航を再開した。仏エールフランスや英ブリティッシュ・エアウェイズ(BA)などは増便に動いた。

ブリュッセル航空のブランクス最高経営責任者(CEO)は「われわれはベルギー国民が飛行機で行きたいところへ確実に運航させることに集中する」と言明した。

しかし問題は、肝心のベルギー国民の多くがそれほど航空機で出掛けたいと思っていないことだ。旅行ニュースレターのPagtourが報じた調査によると、ベルギー国民のうち今年の休暇で何らかを計画しているのは63%で、旅行先の1番人気は今回、国内になった。次はフランスとオランダで、いずれも道路や鉄道で移動できる。


【関連記事】
・新型コロナ、血液型によって重症化に差が出るとの研究報告 リスクの高い血液型は?
・巨大クルーズ船の密室で横行するレイプ
・感染者・死者ともにASEAN最悪に インドネシア、新型コロナ感染拡大しても規制緩和の愚策
・街に繰り出したカワウソの受難 高級魚アロワナを食べたら...

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

各国の合意同じである必要ない=自動車低関税枠で赤沢

ワールド

ICCが拘束のドゥテルテ比前大統領、ダバオ市長選で

ビジネス

米財政黒字、4月は23%増の2580億ドル 関税収

ワールド

トランプ氏、15日の停戦協議参加の可能性示唆 ゼレ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:2029年 火星の旅
特集:2029年 火星の旅
2025年5月20日号(5/13発売)

トランプが「2029年の火星に到着」を宣言。アメリカが「赤い惑星」に自給自足型の都市を築く日

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    心臓専門医が「絶対に食べない」と断言する「10の食品」とは?...理想は「1825年の食事」
  • 2
    カヤック中の女性がワニに襲われ死亡...現場動画に映った「殺気」
  • 3
    ゴルフ場の近隣住民に「パーキンソン病」多発...原因は農薬と地下水か?【最新研究】
  • 4
    母「iPhone買ったの!」→娘が見た「違和感の正体」に…
  • 5
    シャーロット王女の「親指グッ」が話題に...弟ルイ王…
  • 6
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 7
    「出直し」韓国大統領選で、与党の候補者選びが大分…
  • 8
    「がっかり」「私なら別れる」...マラソン大会で恋人…
  • 9
    ハーネスがお尻に...ジップラインで思い出を残そうと…
  • 10
    あなたの下駄箱にも? 「高額転売」されている「一見…
  • 1
    心臓専門医が「絶対に食べない」と断言する「10の食品」とは?...理想は「1825年の食事」
  • 2
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つの指針」とは?
  • 3
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 4
    5月の満月が「フラワームーン」と呼ばれる理由とは?
  • 5
    部下に助言した時、返事が「分かりました」なら失敗…
  • 6
    シャーロット王女の「親指グッ」が話題に...弟ルイ王…
  • 7
    ロシア機「Su-30」が一瞬で塵に...海上ドローンで戦…
  • 8
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 9
    ついに発見! シルクロードを結んだ「天空の都市」..…
  • 10
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 1
    心臓専門医が「絶対に食べない」と断言する「10の食品」とは?...理想は「1825年の食事」
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの…
  • 5
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 6
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つ…
  • 7
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1…
  • 10
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中