最新記事

航空機

世界の航空各社が運航再開 欧州勢は米やアジアに立ち遅れ

2020年6月20日(土)15時34分

運航キャンセル

航空各社は乗客向けに機内の食事サービスを削減したり、マスク着用を義務づけたりしているが、航空機そのものが主な問題ではないのかもしれない。

ある航空会社の営業責任者がグーグル検索の結果をロイターに語ったところによると、フランスの消費者は搭乗時間がより短いスペインかイタリアよりも9時間かかるカリブ海のフランス領マルティニクに、より興味を示している。「少なくともフランス海外県なら、何かあったときにフランス政府は自分の面倒を見る何らかの義務がある。まるでパリにいるかのように病院に行けたり治療してもらえたりする」と考えているからだという。

こうした思考は、カリビアン航空やエールフランスなどの一握りの欧州出発便を除けば、欧州航空各社には都合が悪い話だ。

欧州航空業界は今年の赤字総額が215億ドルになると見込まれている。各社にとって、運航再開が利益の速やかな回復を約束するわけではないのだ。多くの運航便は座席占有率が3分の2を下回る予想されている。運航を停止しているより再開させたほうが、キャッシュバーンがより低いだろうと期待しているという状態にすぎない。

国際航空運送協会(IATA)によると、欧州航空業界の今年の投下資本利益率(ROIC)はマイナス14.3%の見込みで、アジアのマイナス12.7%、北米のマイナス10.5%よりも悪化するとみられている。

専門家によると、運航再開が喧伝されている裏で、航空会社は依然、減便を続けており、特に欧州での減便率が大きい。席が売れなかった便は運航の少なくとも2週間前、乗客が払い戻しなどをきちんと受けられるうちにキャンセルされているというのだ。

調査会社OAGによると、今週の世界の運航スケジュールでは、搭乗総席数は5月下旬に比べ2850万席減少の4000万席。このうち、西欧は1780万席から390万席への減少という。

欧州航空大手の幹部は、自分たちは誰もひどい状況にはないというメッセージを市場に伝えるために運航能力の発表を進んで行っていると説明した。「われわれの主要市場で運航能力を伸ばせるとライバル勢に思われたくないのだ。今はどの社も駆け引きをしているようなものだ。予約がひどく低調なら、そのときに便をキャンセルするまでだ」。

航空運賃引き下げの圧力も各社の苦痛を増しているかもしれない。各地のロックダウン(封鎖)の間にたまっていた需要も、さばかれてきているからだ。欧州LCC最大手であるアイルランドのライアンエアのオライリーCEOは、価格競争が起きると見通しており、アナリストの多くも同じ考えだ。

エアバス傘下のデータ会社スカイトラによると、今年7-9月の航空運賃は英国発で前年同期比7%下落する見通し。フランス発でも8%、イタリア発で10%、ドイツ発で12%、それぞれ下落する見込みという。同社の戦略責任者マシュー・トリンガム氏は「移動制限が解除されつつある国では、実際に運航運賃が下がっている。恐らく、航空会社が需要を喚起しようと試みているせいだ」と話した。


Laurence Frost

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2020トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


【関連記事】
・新型コロナ、血液型によって重症化に差が出るとの研究報告 リスクの高い血液型は?
・巨大クルーズ船の密室で横行するレイプ
・感染者・死者ともにASEAN最悪に インドネシア、新型コロナ感染拡大しても規制緩和の愚策
・街に繰り出したカワウソの受難 高級魚アロワナを食べたら...


20200623issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2020年6月23日号(6月16日発売)は「コロナ時代の個人情報」特集。各国で採用が進む「スマホで接触追跡・感染監視」システムの是非。第2波を防ぐため、プライバシーは諦めるべきなのか。コロナ危機はまだ終わっていない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

金正恩氏「核保有国の地位不可逆」、韓国を最も敵対的

ワールド

ロシア無人機生産拠点は正当な標的に、イラン出荷で=

ビジネス

AIがユーロ圏生産性4ポイント押し上げも=ECBエ

ビジネス

2月全国消費者物価(除く生鮮)は前年比+1.6%=
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:BTS再始動
特集:BTS再始動
2026年3月31日号(3/24発売)

3年9カ月の空白を経て完全体でカムバック。世界が注目する「BTS2.0」の幕開け

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    レストラン店内で配膳ロボットが「制御不能」に...店員も「なすすべなし」の暴走モード
  • 2
    イランは空爆により核・ミサイル製造能力を「喪失」した──イスラエル首相
  • 3
    三笠宮彬子さまも出席...「銀河の夢か、現実逃避か」モナコ舞踏会に見る富と慈善
  • 4
    「胸元を強調しすぎ...」 米セレブ、「目のやり場に…
  • 5
    【銘柄】「三菱商事」の株価に高まる期待...ホルムズ…
  • 6
    【クイズ】2年連続で「世界幸福度ランキング」で最下…
  • 7
    スウェーデン次期女王ヴィクトリア皇太子、陸軍訓練…
  • 8
    「カメラの目の前」で起きた爆発の瞬間...取材中の記…
  • 9
    メーガン妃、娘リリベット王女との「お手伝い姿」公…
  • 10
    イラン戦争の陰で悪化する「もう1つの戦争」とは?
  • 1
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期スペイン女王は空軍で訓練中、問われる「軍を知る君主」
  • 2
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え時の装いが話題――「ファッション外交」に注目
  • 3
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が発生し既に死者も、感染源は「ナイトクラブ」
  • 4
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する…
  • 5
    メーガン妃、娘リリベット王女との「お手伝い姿」公…
  • 6
    第6回大会を終えて曲がり角に来たWBC
  • 7
    【衛星画像】イラン情勢緊迫、米強襲揚陸艦「トリポ…
  • 8
    【銘柄】「三菱商事」の株価に高まる期待...ホルムズ…
  • 9
    韓国製ミサイル天弓-II、イラン戦争で96%迎撃の衝撃 …
  • 10
    「マツダ・日産・スバル」が大ピンチ?...オーストラ…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 5
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 6
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 7
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 8
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 9
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 10
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中