世界の航空各社が運航再開 欧州勢は米やアジアに立ち遅れ
運航キャンセル
航空各社は乗客向けに機内の食事サービスを削減したり、マスク着用を義務づけたりしているが、航空機そのものが主な問題ではないのかもしれない。
ある航空会社の営業責任者がグーグル検索の結果をロイターに語ったところによると、フランスの消費者は搭乗時間がより短いスペインかイタリアよりも9時間かかるカリブ海のフランス領マルティニクに、より興味を示している。「少なくともフランス海外県なら、何かあったときにフランス政府は自分の面倒を見る何らかの義務がある。まるでパリにいるかのように病院に行けたり治療してもらえたりする」と考えているからだという。
こうした思考は、カリビアン航空やエールフランスなどの一握りの欧州出発便を除けば、欧州航空各社には都合が悪い話だ。
欧州航空業界は今年の赤字総額が215億ドルになると見込まれている。各社にとって、運航再開が利益の速やかな回復を約束するわけではないのだ。多くの運航便は座席占有率が3分の2を下回る予想されている。運航を停止しているより再開させたほうが、キャッシュバーンがより低いだろうと期待しているという状態にすぎない。
国際航空運送協会(IATA)によると、欧州航空業界の今年の投下資本利益率(ROIC)はマイナス14.3%の見込みで、アジアのマイナス12.7%、北米のマイナス10.5%よりも悪化するとみられている。
専門家によると、運航再開が喧伝されている裏で、航空会社は依然、減便を続けており、特に欧州での減便率が大きい。席が売れなかった便は運航の少なくとも2週間前、乗客が払い戻しなどをきちんと受けられるうちにキャンセルされているというのだ。
調査会社OAGによると、今週の世界の運航スケジュールでは、搭乗総席数は5月下旬に比べ2850万席減少の4000万席。このうち、西欧は1780万席から390万席への減少という。
欧州航空大手の幹部は、自分たちは誰もひどい状況にはないというメッセージを市場に伝えるために運航能力の発表を進んで行っていると説明した。「われわれの主要市場で運航能力を伸ばせるとライバル勢に思われたくないのだ。今はどの社も駆け引きをしているようなものだ。予約がひどく低調なら、そのときに便をキャンセルするまでだ」。
航空運賃引き下げの圧力も各社の苦痛を増しているかもしれない。各地のロックダウン(封鎖)の間にたまっていた需要も、さばかれてきているからだ。欧州LCC最大手であるアイルランドのライアンエアのオライリーCEOは、価格競争が起きると見通しており、アナリストの多くも同じ考えだ。
エアバス傘下のデータ会社スカイトラによると、今年7-9月の航空運賃は英国発で前年同期比7%下落する見通し。フランス発でも8%、イタリア発で10%、ドイツ発で12%、それぞれ下落する見込みという。同社の戦略責任者マシュー・トリンガム氏は「移動制限が解除されつつある国では、実際に運航運賃が下がっている。恐らく、航空会社が需要を喚起しようと試みているせいだ」と話した。
Laurence Frost

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