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米中どちらに軍配?WHO総会で習近平スピーチ、トランプ警告書簡

2020年5月22日(金)15時55分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)

4.そこでスイスのジュネーブで開催されるのだから、1番目にスイス大統領がスピーチをするのは自然だ。次に国連事務総長。その次に習近平なら誰も文句が言えず、しかも関連各国としては「トップ」で話をしたことになりインパクトがある。

中国ならば、これくらいの戦略は練る。

テドロス側には、こういった中国流の頭が働くとは思いにくい。

トランプは、まずこの段階から中国の戦略に嵌(は)められたと見ることができる。

その証拠にアメリカのニュースサイト「アクシオス(axios)」は"Scoop: Xi accepts, while Trump rejects, invite to address WHO"(スクープ: WHOのスピーチ招待、習は承諾し、トランプは拒絶した)というスクープ報道をしている。

トランプは拒否せずに、むしろ受けて立って、堂々とWHO批判をしたり、習近平の責任を追及すればよかったと、個人的には思う。しかしトランプの性格から言って、必ず拒否するだろうと計算できたのが中国5000年の歴史がもたらす百戦錬磨の「戦略」の要だと言っていいだろう。

習近平は2年間で20億ドル拠出と発表:キーワードは「人類運命共同体」

習近平はスピーチで「中国は責任ある態度で一貫してWHOや各国と適時情報共有した。

途上国の感染対策に今後2年間で20億ドル。ワクチンの開発に成功すれば国際公共財にする」という趣旨のことを言っている。

アメリカはこれまで年間4億5千万ドルをWHOに拠出し、その額は全体の約15%に及ぶ。中国など僅か0.2%に過ぎず比較の対象ではなかった。それでも採決で有利な方向に持って行けたのはWHO参加国の中の発展途上国などに開発資金援助をしているからだ。特に一帯一路を動かし始めてからの「金による抱き込み」は露骨になっている。

だからこそ今般の習近平スピーチの最大のキーワードは「人類運命共同体」だ。これに注目しなくてはならない。

この言葉はトランプがグローバル経済に背を向け、「アメリカ・ファースト」を言い始めてから、その対立軸としての中国を際立たせるために生み出した外交スローガンである。

コロナとの闘いにおいて「ウイルスに国境はない」として、コロナ発生前から掲げてきたこの「人類運命共同体」という理念がどれだけ素晴らしいかを、習近平は全会で宣伝してきた。コロナで苦しむ発展途上国に医療支援物資を送ったり医療チームを派遣したりして「習近平の偉大さ」と「人類運命共同体の正当性」を宣伝しまくってきたのである。

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