最新記事

中国

全人代開幕日決定から何が見えるか?

2020年5月2日(土)19時41分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)

何度も言うが、通信社は「客観的事実」を速報で知らせてくれるのは非常にありがたいが、「記者の個人的価値感」や「個人的視点」を挟むべきではないのではないだろうか。まちがった(あるいは正確でない)価値観や評価を加筆した瞬間に、日本人を誤導し、結果、日本に不利をもたらす。

コロナ期間、圧倒的力を発揮したのは国務院「聯防聯控機構」

全人代を主宰するのは国務院総理だ。

李克強が唯一、主人公として輝く日である。

習近平国家主席(中共中央総書記)にとっては、そもそもあまり嬉しい日ではない。李克強は「国字顔(国のような文字をした顔の形)」をしたガリ勉さんで、スピーチをするときに汗びっしょりになる体質(性質?)を持っている。国家のトップになる器ではないし、カリスマ性も持っていない。だから、習近平にとっては「相手にもならない存在」なので、ライバル心を抱いているわけではないだろう。その必要はないことは習近平自身が誰よりも知っているはずだ。

しかしコロナの発生時点から始まって、コロナとの闘争期間、陣頭指揮を執り続けたのは国務院管轄下の国家衛生健康委員会が主催する巨大な政府機構「聯防聯控機構」だ。

「聯防聯控機構」のフルネームは「国務院による新型コロナウイルス感染肺炎防疫のための聯防聯控機構」と非常に長い。この「聯」は「聯合」の意味で、「聯防聯控」は「聯合防疫聯合制御」という意味である。1月20日に設立された、国務院(中国人民政府)管轄下の32の(全ての)中央行政省庁がメンバーとなっている巨大組織である。これ以上に大きな組織はない。これ等がまさに「一丸となって」コロナ戦を戦ってきた。

陣頭指揮を執る国家衛生健康委員会のすぐ上にいるのは孫春蘭国務院副総理で、その上にいるトップは言うまでもなく李克強国務院総理だ。

1月20日と言えば習近平がコロナに関して「重要指示」を出した日だが、2月10日のコラム<新型肺炎以来、なぜ李克強が習近平より目立つのか?>で詳述した通り、この日習近平はまだ雲南にいた。17日から19日まではミャンマーに行き、その足で雲南を視察し、例年の「春節巡り」を楽しんでいたのである。

したがって「重要指示」は「習近平の名において」出してはいるものの、「出させた」のは李克強であり、国家衛生保健委員会のハイレベル専門家チームのリーダーである鍾南山だ。だから雲南の春節巡りなどを「めでたく、のんびり」としていた習近平は「重要指示」を「出させられた」のである。

それでもすぐには北京に戻ってこようとはせず、1月21日まで雲南巡りをした後に、上海にいる江沢民に「春節のご挨拶」に行っている。

それくらい習近平はコロナ危機に対する自覚がなかった証拠だ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:米中会談に気をもむ台湾、MAGA通じて支

ワールド

米国、駐韓大使代理を任命 トランプ氏訪問控え

ワールド

キルギス、国家ステーブルコイン導入 バイナンスと提

ワールド

米、国境の顔認識拡大 外国人の追跡強化
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
2025年10月28日号(10/21発売)

高齢者医療専門家の和田秀樹医師が説く――脳の健康を保ち、認知症を予防する日々の行動と心がけ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 2
    熊本、東京、千葉...で相次ぐ懸念 「土地の買収=水の支配」の日本で起こっていること
  • 3
    中国レアアース輸出規制強化...代替調達先に浮上した国は?
  • 4
    「信じられない...」レストランで泣いている女性の元…
  • 5
    庭掃除の直後の「信じられない光景」に、家主は大シ…
  • 6
    「平均47秒」ヒトの集中力は過去20年で半減以下にな…
  • 7
    メーガン妃の「お尻」に手を伸ばすヘンリー王子、注…
  • 8
    1700年続く発酵の知恵...秋バテに効く「あの飲み物」…
  • 9
    シンガポール、南シナ海の防衛強化へ自国建造の多任…
  • 10
    【テイラー・スウィフト】薄着なのに...黒タンクトッ…
  • 1
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 2
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 3
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 4
    中国レアアース輸出規制強化...代替調達先に浮上した…
  • 5
    超大物俳優、地下鉄移動も「完璧な溶け込み具合」...…
  • 6
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 7
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 8
    熊本、東京、千葉...で相次ぐ懸念 「土地の買収=水…
  • 9
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 10
    【2025年最新版】世界航空戦力TOP3...アメリカ・ロシ…
  • 1
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 2
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 9
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中