最新記事

感染症

パンデミック頻発の裏に環境破壊、新型コロナ終息には1年以上=山本・長崎大教授

2020年5月5日(火)11時13分

文明社会と感染症の関わり合いの歴史を研究テーマの1つとする長崎大熱帯医学研究所の山本太郎教授は、ロイターとのインタビューで、新型コロナウイルスなど新しい感染症が頻発するようになったのは、人類による生態系の破壊が影響していると語った。写真はアマゾンの森林を切り倒して作られた金の違法な採掘現場。2014年1月、ペルーのマドレデディオスで撮影(2020年 ロイター)

文明社会と感染症の関わり合いの歴史を研究テーマの1つとする長崎大熱帯医学研究所の山本太郎教授は、ロイターとのインタビューで、新型コロナウイルスなど新しい感染症が頻発するようになったのは、人類による生態系の破壊が影響していると語った。

新型コロナが終息するには人口の7割が免疫を獲得する必要があり、最低でも1年以上かかると予測。コロナ後の世界は成長一辺倒の市場主義を転換し、持続可能な社会を築く必要があると述べた。

新型ウイルス頻発には環境破壊が影響

山本教授によると、新型コロナのような新しいウイルスは、野生動物からヒトへと感染する形で一定頻度で発生してきた。ところが近年、エボラ出血熱や新型コロナなど、その頻度が高まっているという。少し時間をさかのぼるが、エイズもその1つだとした。 

山本教授はその理由として、「人間による環境破壊で生態系が混乱を起こしている影響だ」と指摘。「開発や地球温暖化によって野生動物とヒトの暮らす空間が近づき、ウイルスがヒトに伝播しやすくなった」と述べた。

中でも今回の新型コロナがこれまでのウイルスと異なるのは、その感染スピードだという。山本教授は「端的に言えばグローバル化の影響。物流も含めたヒトの移動が爆発的に増加し、感染を大きくした」と語った。世界的に都市化が進んで人口が特定地域に密集し、飛行機の利便性が高まったことで都市間の移動が増えたと述べた。

山本教授は「これまでのパンデミック(感染症の世界的流行)は一つの場所から別の場所へ移動を繰り返しながら、地球を回り、人々が集団免疫を獲得することで終息に向かうパターンが多かった」と説明。「今回は同時多発的に世界で感染が広がっており異例だ」と語った。

感染スピード遅らせることの意味

山本教授は新型コロナの終息見通しについて、「人口の7割程度が感染あるいはワクチンの接種によって免疫を獲得する必要がある」と指摘。1918-20年に流行し、2000万から4000万人の死者を出したとされるスペイン風邪のように、第2、第3の波が来る可能性があると懸念を示した。その上で、「なるべく多くの人口が免疫を獲得していれば、第2波の影響を小さくできる」と語った。

集団免疫の獲得には、自宅待機などで人と人の接触を減らし、感染スピードを遅くするやり方が望ましいという。時間はかかるものの、「医療崩壊を防ぐことができ、ワクチン開発の時間を稼ぐことができる」と述べた。「感染スピードが遅ければ、毒性の強いウイルスの行き場がなくなり淘汰される」とも語った。

7割が免疫を得るまでには「スペイン風邪などの経験から、直感的に最低1年、長くて2ー3年必要」との見方を示した。

同じ世界には戻れず

山本教授はコロナが終息した後について、「同じ世界には戻れない」と強調した。新たなウイルスの発生頻度を減らさないと人類が対応しきれなくなるとして、地球環境に配慮した持続可能な経済活動が必要との考えを示した。

「市場主義に基づいた経済開発を進めて熱帯雨林を破壊、その結果としての地球温暖化などが、ウイルスを人に呼び込む原因になった。自然を使い尽くす開発からの転換、持続可能な開発目標(SDGs)を考えて発展をする必要がある」と語った。

(インタビュアー:竹本能文、編集:久保信博)

*インタビューは4月20日、電話で行いました。

[東京 ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2020トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


【関連記事】
・「集団免疫」作戦のスウェーデンに異変、死亡率がアメリカや中国の2倍超に
・東京都、新型コロナウイルス新規感染87人確認 都内合計4655人に(インフォグラフィック)
・韓国のコロナ対策を称える日本に欠ける視点
・トランプ「米国の新型コロナウイルス死者最大10万人、ワクチンは年内にできる」


20050512issue_cover_150.png
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2020年5月5日/12日号(4月28日発売)は「ポストコロナを生き抜く 日本への提言」特集。パックン、ロバート キャンベル、アレックス・カー、リチャード・クー、フローラン・ダバディら14人の外国人識者が示す、コロナ禍で見えてきた日本の長所と短所、進むべき道。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米ホリデーシーズンのオンライン支出、過去最高の25

ワールド

米、ベネズエラ原油取引・収入の管理必要 影響力確保

ワールド

トランプ氏、NATO支持再確認 「必要なときに米を

ワールド

トランプ氏との会談望む、同盟国から安全保証の明確な
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:AI兵士の新しい戦争
特集:AI兵士の新しい戦争
2026年1月13日号(1/ 6発売)

ヒューマノイド・ロボット「ファントムMK1」がアメリカの戦場と戦争をこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 3
    「グリーンランドにはロシアと中国の船がうじゃうじゃいる」──トランプの介入口実にデンマーク反発
  • 4
    日本も他人事じゃない? デジタル先進国デンマークが…
  • 5
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 6
    マドゥロ拘束作戦で暗躍した偵察機「RQ-170」...米空…
  • 7
    トランプがベネズエラで大幅に書き換えた「モンロー…
  • 8
    トイレの外に「覗き魔」がいる...娘の訴えに家を飛び…
  • 9
    衛星画像で見る「消し炭」の軍事施設...ベネズエラで…
  • 10
    若者の17%が就職できない?...中国の最新統計が示し…
  • 1
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチン、その先は袋小路か
  • 2
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 3
    中国軍の挑発に口を閉ざす韓国軍の危うい実態 「沈黙」は抑止かそれとも無能?
  • 4
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 5
    眠る筋力を覚醒させる技術「ブレーシング」とは?...…
  • 6
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 7
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 8
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 9
    アメリカ、中国に台湾圧力停止を求める
  • 10
    感じのいい人が「寒いですね」にチョイ足ししている…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 6
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 7
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 8
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 9
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
  • 10
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中