パンデミック最前線 命の不安抱えつつデリバリーするアマゾン配達員
米カリフォルニア州ダブリンで6日、注文品を配達するサビュラオさん(2020年 ロイター/Shannon Stapleton)
エクセルソ・サビュラオさん(35)は米カリフォルニア州で、ネット通販大手・アマゾンの生鮮品配達に従事し、両親の生活を支えている。店舗や住宅でひっきりなしに人と接触するため、新型コロナウイルスに感染するのではないかと恐れる毎日だ。
「神様を信じるしかない。この仕事をしている間は、何とか助けて下さいと。感染したら最後、家に持ち帰って両親に死を宣告するようなものだ」──。
米国民のほぼ全員が政府から自宅待機を命じられている中で、サビュラオさんのように請負労働者としてアマゾンの食品・日用品配達に携わっている人々も無数にいる。だが、彼やその他のドライバーは、パンデミック(感染症の世界的流行)の最前線で働いているにもかかわらず、アマゾンから賃金の上乗せや感染への防護措置を提供されず、安くこき使われている気持ちだという。
4月6日朝、サビュラオさんは約1時間かけてサンフランシスコのベイエリアにある都市・ダブリンに通い、アマゾン傘下の自然・有機食品小売り大手ホール・フーズから、注文のあった生鮮品を集荷した。
サビュラオさんは、ストックトンで両親と同居している。親との同居はフィリピン系米国人の家庭では珍しいことではないが、母は3年前に軽い脳卒中を患い、小売り大手ウォルマートで働いていた父は、新型コロナ絡みで一時帰休に入っている。
白いマスク姿のサビュラオさんが、アマゾンの有料会員制度「プライム」のロゴが入った茶色い紙袋でいっぱいのショッピングカート2台を引いて建物から出てきた。請負労働者が自家用車で配送するプログラム「アマゾン・フレックス」用の駐車場で、車のトランクや後部座席に素早く荷物を積み込んでいく。
シフトの中で最も心をかき乱される時間が、これで終わった。一番恐怖を感じるのは、ホール・フーズの発送準備品コーナーで、注文の品をピックアップする作業だとサビュラオさんは話す。
保健当局は、人と人との間隔を1.8メートル以上保つよう推奨している。しかし、ここではドライバー同士が近接して並んで働いている。他のドライバーたちが開けた冷蔵庫を自分も開く必要があるし、そのたびに触る所を消毒用ティッシュで拭き取る時間はないのが普通だ。
「気がおかしくなりそうだ。他の人々が既に触れたものを扱っているんだ。彼らが咳をしていた可能性だってある。分かったものではない」と、その恐怖を語る。