予防対策の優等生シンガポールでも感染増 新型コロナウイルス封じ込めの困難さ
シンガポールはこれまでは、新型コロナウイルスとの闘いで世界の模範と称賛されてきた。写真は2日、人気のないマーライオン公園で撮影(2020年 ロイター/Edgar Su)
シンガポールはこれまでは、新型コロナウイルスとの闘いで世界の模範と称賛されてきた。しかしこの小さな都市国家で今、お得意の徹底した策をもってしても感染拡大に歯止めがかからない。疫学専門家は、世界が新型コロナ封じ込めに取り組む上で、シンガポールの例が先行きに不吉な影を落としていると懸念している。
今年1月の時点では中国以外で新型コロナの痛手が最も大きかったものの、厳格な住民監視や隔離措置などの導入が流れを食い止めるのに奏功。世界保健機関(WHO)から高く評価されるに至った。
シンガポールは他国・地域に比べて検疫がしやすい国だ。人口は570万人程度の島国で、端から端まで車で1時間もかからない。入国管理の場所も多くはないし、医療体制も堅固だ。
現状、新型コロナの死者は4人にとどまっている。ところが、封じ込め策には緊張の兆しが出てきている。感染者数は4月1日に1000人に達し、前日からの増加は74人とこれまでで最多になった。特にこの1週間で感染者が倍増して、総数は3月末で前月末に比べ10倍近くになった。国内感染が70%を占めるようになり、多くは感染者との接触が確認されない単独感染だ。
専門家によると、シンガポールですら防疫態勢が破られているという事実は、新型コロナ感染の拡大抑制の難しさを物語る。
米ミネソタ大学の感染症専門家、マイケル・オスターホルム氏は「シンガポールの方法は最善の策の一つと見なされてきた。他の諸外国に示されている今の現実は、このウイルスに反撃し、ねじ伏せたままにしておくのがいかに難しいかということにほかならない」と話す。
コンプライアンス部門のマネジャーのアービング・チャンさん(43)は、「何をすべきか、これからどうすべきかをよく考える必要がある」と警戒を口にする。
ケネス・マク保健相は今週、感染者増加が懸念のきっかけだとし、これから数週間の流行を見極めて、現行の感染防止策が機能しているのかを評価する考えを示した。
同様に厳格なコロナ対策で褒められてきた台湾も最近、外国からの感染持ち込みが増加したほか、確認できる感染源が不明な小さな感染域がいくつも出現している。
中国では当局者は帰国者による感染持ち込みに焦点を変え、無症状の感染者が流行第2波をもたらす可能性を警戒している。